MOVIE|リー・ユー監督による感動作『ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅』
MOVIE|地震で息子を亡くした女性が、若者との交流をとおして立ち直ってゆく様子を描く
リー・ユー監督による感動作『ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅』
『ロスト・イン・北京』(2007年)で世界センセーショナルを巻き起こしたリー・ユー監督の最新作、中国のトップ女優ファン・ビンビンを主演に迎えた人間ドラマ『ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅』が日本に到着。9月28日(土)よりユーロスペース、K's sinemaほか全国順次ロードショーされる。
Text by YANAKA Tomomi
主演のファン・ビンビンは、東京国際映画祭で最優秀女優賞を受賞
四川大地震で息子を亡くした京劇女優が、若者3人との交流をとおして立ち直ってゆく様子を描いた『ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅』。2010年の第23回東京国際映画祭で、最優秀芸術貢献賞と主演のファン・ビンビンが最優秀女優賞を受賞した話題作がいよいよ公開される。
女性監督のリー・ユーは、本作同様にファン・ビンビンを主演に迎え、ブラックな笑いと現代の中国社会を鋭く切り取った『ロスト・イン・北京』などで一躍脚光を浴び、いまや中国を代表する映画監督に。本作では、現代中国のひずみを描きながらも一転、感動作を生み出した。
中国のスター女優ファン・ビンビンのほかに、映画のプロデュースなどを務める大物女優シルヴィア・チャン、台湾のトップ俳優チェン・ボーリンら出演者が、繊細な演技を見せている。
仏像の修復をはじめるユエチンと3人の若者
2009年、中国の古都・四川省成都。引退し、老境を迎えた京劇女優チャン・ユエチンは、前年に起きた大地震でひとり息子を亡くし、孤独を感じていた。
そんなユエチンが自宅に「貸し間あり」の札を出すと、ナンフォン、ディン・ボー、“太っちょ”という3人の若者が、共同で入居してきた。中国の経済成長の波は山奥の古都にまで押し寄せており、彼らは歌手や法律すれすれの仕事をしながら、たくましく生きているように見えたものの、実はそれぞれに父親との確執を抱えたナイーブな心をもっていたのだ。
最初は、世代のちがいから反発が起きたものの、若者たちのたわいもないいたずらや、ふと見せる優しさに、いつしかユエチンの心には小さな愛情が芽生えていた。
しかし、そんなある日、ユエチンが手首を切り自殺を企てることで、3人はユエチンの絶望の深さを知ることとなる。そこで3人は以前、貨物列車に忍び込んだときに偶然辿り着いた、神秘的な観音山にある寺にユエチンを連れてゆき、地震で壊れた仏像の修復を手伝いはじめる。
現代の中国を鋭く切り取ることで知られるリー・ユー監督が、絶望を抱える女性と、急激な経済成長に翻弄される若者との交流をつうじて描いたものとは。人間がもつ普遍的な悲しみと絶望、そして希望を感じたい。