トルコ・カッパドキアを舞台にした重厚な人間ドラマ『雪の轍(わだち)』|MOVIE
MOVIE|トルコ・カッパドキアを舞台にした重厚な人間ドラマ
カンヌでパルムドールに輝いたヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督『雪の轍(わだち)』
2014年のカンヌ国際映画祭で、最高賞となるパルムドールに輝いたヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の『雪の轍(わだち)』。世界遺産のトルコ・カッパドキアを舞台に繰り広げられる重厚な人間ドラマだ。6月27日(土)より、角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで公開される。
Text by YANAKA Tomomi
人間の秘められた部分をあぶりだす
トルコ映画界の巨匠として知られるヌリ・ビルゲ・ジェイラン。カンヌではすでに『昔々、アナトリアで』がグランプリに、『スリー・モンキーズ』が監督賞を受賞するなど、華々しいキャリアをもつ彼が昨年、満を持してパルムドールを受賞した作品が『雪の轍(わだち)』だ。なお、ジェイラン作品が日本の劇場で公開されるのは、本作がはじめてとなる。
文豪チェーホフの著作に着想を得て、カッパドキアの地名の由来になった馬、シェイクスピアの一節、あたり一面を白く染める雪などのモチーフを散りばめながらつづる本作。西洋的な世界とイスラム的な世界、男と女、老いと若さ、エゴイズムとプライド、そして愛と憎しみなど、普遍的な要素を対峙させていく。
主人公のホテルオーナーに、トルコを代表する国民的俳優であり、イギリスなどでも活躍するハルク・ビルギネル。その若き妻を新鋭のメリサ・ソゼン、そして主人公の妹をこちらもトルコのスター女優、デメット・アクバァが演じる。
舞台は冬を迎えたトルコ・カッパドキア
カッパドキアにたたずむホテル。親から膨大な遺産を受け継ぎ、ホテルオーナーとしてなに不自由なく暮らす元舞台俳優のアイドゥン。しかし、若く美しい妻のニハルとの関係はうまくいかず、いっしょに住む妹ネジラともぎくしゃくしていた。
さらに家を貸していた一家からは、おもわぬ恨みを買ってしまう。やがて季節は冬に。窓の外の風景が枯れていくなか、鬱屈した気持ちを抑えきれない彼らの、終わりのない会話がはじまっていく。
互いの気持ちが交わらぬまま、ある日、アイドゥンは「別れたい」というニハルを残し、ひとりでイスタンブールへ旅立つ決意をする。しかし、その場を立ち去るのを阻むように降る大雪に出鼻をくじかれた彼は、愛する妻のもとに戻るのだった。
人を許すこと、愛すること、わかりあうことは、こんなにも苦しく困難なものなのだろうか……。壮大なカッパドキアの風景とは裏腹に、閉塞感に満ちた部屋でむきだしの感情をさらけだし、ぶつけあう登場人物たち。人間の心の秘められた部分をえぐりだしながら、濃密さを増していく会話劇に私たちは圧倒される。
『雪の轍(わだち)』
6月27日(土)より、角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかロードショー
監督|ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演|ハルク・ビルギナー、メリサ・ソゼン、デメット・アクバァ、アイベルク・ペクジャン、セルハット
配給|ビターズ・エンド
2014年/トルコ・フランス・ドイツ/196分/原題『Kis Uykusu』
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