INTERVIEW|ニッポン放送『村井和之の僕らが旅に出る理由』スピンアウト企画|村井和之×林真理子 特別対談
INTERVIEW|村井和之氏がラジオ番組のパーソナリティに初挑戦!
チップの流儀から身だしなみまで、達人と3人のゲストが繰り広げた旅談義
ニッポン放送『村井和之の僕らが旅に出る理由』の模様を独占掲載
2014年11月24日(月・祝)にオンエアされたニッポン放送の1時間番組『SMART TRAVELLER 村井和之の僕らが旅に出る理由』。この特別番組でラジオパーソナリティに初挑戦したのは、OPENERSでもお馴染みのトラベルコンシェルジュ、コスモクラーツトラベル代表の村井和之さんだ。番組では村井さんと親交の深い3人のゲスト、作家 林真理子さん、俳優 えなりかずきさん、『MEN’S EX(メンズ・イーエックス)』編集長の大野陽さんが登場。活字では表現しきれない軽快なトークが繰り広げられた。
Photographs by ASAKURA KeisukeText by TSUCHIDA Takashi
チップを制するものは旅を制する?
トップバッターのゲスト、林真理子さんとのコーナーでは、旅先でのチップが話題に。ふたりは、林真理子さんが雑誌『anan(アンアン)』の連載エッセイを書籍化するにあたり、オマーンにてロケ撮影を敢行した間柄だといいます。
村井和之(以下、村井) ことあるごとに、真理子お姉さまが「ねぇ、カズコ(編集部注・村井さんの愛称)。チップをいくら渡したらいいのかしら」「こんなに頑張ってくれていることになにか感謝を表したいじゃない」って。
旅っていろんな人たちの力を借りて盛り上げていくもの。その感謝を忘れないという姿勢が素晴らしいと思って。
林真理子(以下、林) わたし、出版社の方がたと海外ロケに行くときに皆さんにお伝えするのは、「領収書の出ないお金はわたしが払います」って。
前、すべて任せていたら、アレンジしてくれてた人が一切チップを払ってなくて、しまいにはだれも荷物を持ってくれなくなっちゃったの。毎回、機材を積む必要があったのに、ポーターがひとりも出てこなくなっちゃった。
村井 あら。でもぼくは想像できる。
林 できるでしょ。ちゃんと渡してくれていると思ってたの。それで、わたしがガンガン渡すようにしたら、まったく態度が違っていった。
村井 現地の人にお金を渡して、お願いしますって頭を下げた方が、旅はスムーズ。彼らもお金を得るために働いているので、対価を払うことは必要です。
旅の思い出はプライスレス。そのために、見えない努力を重ねてくれた人に感謝の気持ちを示すことが重要と、ふたりは力説します。
ニューヨークに行ったら、パーティに繰り出すべし
つづくゲストは、俳優のえなりかずきさん。実は海外旅行経験がまだ少ないえなりさんに、村井さんがお勧めする旅とは?
村井 40代、50代は人生で一番ラグジュアリーなシーズン。その準備のためにも30代をどう過ごすのかが大切です。30歳を迎えたえなりくんも、これから旅をいっぱいして、いい経験とひらめきを蓄積してほしいなと思います。そこでお勧めするのが、ニューヨークひとり旅。
えなりかずき(以下、えなり) 出たーー! ものすごく憧れます。『セックス・アンド・ザ・シティ』というドラマでは、いつもどこかでパーティが開かれていて。
村井 パーティって等身大に人柄を知るチャンス。ニューヨークって、いろんなステイタスのパーティが日常的に開かれているから、そのどこに身を置くのかで見えてくる世界も違ってくる。
えなり ひとり旅からスタートして、パーティに出られるようになるまで、どれほどの道のりでしょうか?
村井 まずはとにかく行ってみて、自分自身が直感でどれだけ閃(ひらめ)くかだと思う。それがモチベーションにもつながります。英語がもっとできるようになろう、いい振る舞いができる大人になろう。まずはそこからです。
その先に、俳優のえなり君がパフォーマンスに対するビジョンがあるなら、ぼくがお金を出すよとか。
えなり ニューヨークっぽい!
村井 アメリカには才能にベット(投資)しつづける、成熟したお金持ちが大勢いるんだよね。そういうところが俗にいう“アメリカンドリーム”なのかもしれない……。
旅を楽しむためのファッション談義
さてさて3人目のゲストは、こだわりのライフスタイルを提案するメンズ誌『MEN’S EX(メンズ・イーエックス)』編集長 大野陽さん。村井さんは、『MEN’S EX』にも旅の特集で参画しています。
大野 先日も村井さんが出してくれたキーワードにピンと来たんだよね。“旅は充電と放電”という。
村井 名所旧跡をスタンプラリーのように見るようなツアーがいまだに多いんですけど、旅って自分に刺激を与える行為なのだから、もっと大切にしてほしいと思うんです。
それは事前に学習することであったり、場合によってはお金を貯めてその場に相応しいアイテムを揃えていくこともある。ときには旅立つ前にスタイリストさんを立てて、お洋服を揃えたりするようなことだって必要です。
それは富裕層に限られたことではないんですね。ハネムーンの子たちだって、ちゃんとした身なりで写真に残れば、何度だって見返したくなる。
それこそが、人生の財産です。
大野 ファッションは、ほんとうに大事です。その場所に応じて身なりを整えるというのは、日本人がまだまだ足りないところですね。
磨き上げられた靴、ビシッとアイロンがかかったシャツ。それだけで、まず扱いって変わってくるんですよ。
村井 そうですよね、お金を払っていいホテルに泊まっていればステイタスも買えるというわけではない。お金では買えない評価軸ってあるので。
その入口として、身なりはとても大切ですよね。
アフリカなんかでは、お洋服のことばかりではなく、一生に一度と思って皆さん行かれるのですから、とことん気分を盛り上げて欲しい。
その意味でも、旅行鞄選びなども重要ですね。
番組は、本当にあっという間の1時間。林真理子さんとは「この次にスペインのバスク地方に行こう!」と盛り上がり、えなりかずきさんにはニューヨークひとり旅を勧め、そして『MEN’S EX』編集長の大野さんとは、ファッショナブルな日本人トラベラーが増加することを願った村井和之さん。
番組最後に、村井さんは「人生を大いに盛り上げるツールとして、旅を活用してもらえたら嬉しい」と括りました。
INTERVIEW|村井和之氏がラジオ番組のパーソナリティに初挑戦!
ニッポン放送『村井和之の僕らが旅に出る理由』スピンアウト企画
村井和之×林真理子 特別対談
さぁここからは、ニッポン放送『村井和之の僕らが旅に出る理由』からのスピンアウト企画。スタジオで収録を終えたばかりの村井和之さんと林真理子さんに、旅や、旅のアイテムに関する話をうかがいました。
――林真理子さんは、旅行鞄には気を遣いますか?
林 もちろん素敵なホテルに泊まるのであれば、ありきたりなスーツケースはツラいですね。だって値踏みされるわけですから。高級ホテルで安い旅行鞄だとちょっと……。
――その場に相応しいモノでないと。
林 そうですよね。友達が「パリのホテルだってジーンズでも似合うでしょ?」 って強行するから、せめてチェックインとチェックアウトのときだけは、きちんとした格好をしましょうって言うんです。
――セレブリティのドレスダウンをそのまま真似てはいけない?
林 そうです。私たちは彼女たちとは違う。ですから、きちんとした服装が大切ですね。
――ご友人と旅する機会も多いと思いますが、お互いに旅を楽しめる秘訣ってどんなことでしょう?
林 役割分担です。CA(キャビン・アテンダント)の幼なじみと旅行に行ったことがあるんですが、彼女は英語が完璧。その彼女からハッキリ言われたのは、「わたしが通訳してあげるんだから、食事代は払って」って。
それで、ホテル代と食事代はわたしが持ち、彼女が通訳と旅程のコーディネイトをしてくれました。
――なるほど、どちらか一方に“オンブに抱っこ”ではなくて。
林 そうそう。だって割り勘なのに通訳の面倒まで見させられたら、いくら仲のいい友達でもムカつくでしょ(笑)。それと、よっぽど親しくない限りは、部屋は別々にするかな。
――旅が自分を磨いてくれるのはなぜでしょうか?
林 旅行中は、試練が次々と起こるんですよね。ショッピングの最中にしつこくセールスされたり、すごく長時間待たされたり。そういうことのひとつひとつに、自分の力で立ち向かって行かなければならない。その意味で旅をすると強くなれるのかもしれません。
しかも自分のことをだれもが知らない状況で、素の自分がどう評価されるのか。いい席に案内されるのかどうかも、ひと目で判断されてしまうわけです。そう思うと、頑張っちゃいますよね。
――普段とはまったく違う緊張した時間があるわけですね?
林 特にニューヨークに行ったりするとね。わたしも昔はひとりで頑張って行きました。でも、いまはだれかに頼っちゃって。下手な英語を駆使してでもひとりで行動しようという気持ちが薄れてきたのは、ちょっとイケないことだなと思います。
――収録を終えられて。改めて、旅に出る理由とはなんだと思いますか?
村井 旅とは、ポジティブなイマジネーションを育む最適な場なんですね。
人生って、人との出会いからしかなにも生まれないんですよ。どんなに勉強しても、どんなに高度な技術を身に付けても、それをだれかのために生かさなければ、全部無駄になってしまう。そうした人との出会いを育むためにも、旅は最良な場所です。
ぼくからの旅の情報発信のなかでは、旅の視点を重視します。2014年12月3日にアップしたロボスレイル(南アフリカの豪華寝台列車)の記事では、電車の旅を作り上げた創業者ロハン・フォスの生き方に触れる視点を盛り込みました。
ロボスレイルについては、その豪華さばかり話題となりますが、本当は、そんなことはどうでもいい。ブっちゃけるなら、どんなに頑張ったって所詮は列車のなかであり、地上よりも快適であるわけではないんです。
そうではなく、夢を乗せて列車を走らせるロハン・フォスの思いとは、どんなものだったのか。その境地に触れることができて、はじめてその旅が自分の人生に影響を与えるんです。
――感動体験が重要なんですね。
村井 限られた環境のなかで、できる限りのサービスをしてくれる。そのことを知るのが大切なのであって、列車のなかで出された料理が「美味い」「不味い」というのは瑣末(さまつ)なことなんですよ。その視点だけで語るなら、地上で出されるものの方が、やはりおいしいです。巷のレストランを馬鹿にするなと言いたい。
――写真に取りやすい、文字に落としやすい情報がひとり歩きしますから。
村井 そうそう。そういう意味で、チップの払い方とかも雑誌の記事になりにくい。でも、このラジオ番組を通じて、言うことができました。そういうスポットが当たりづらかった視点を、これからも発信していきたいです。
旅って、他人からの評価です。ですから人間力がないと、いい旅ができない。もう経済的な評価だけでは、中国に負けているんです。そこで、これからの日本人は、人間の成熟度で評価を得なければ、アジアのなかでも生き残れません。
――オリンピック招致では、「おもてなし」という日本語にも注目が集まりました。
村井 あれはお作法。逆に、もし日本がチップ文化になっても、それだけでチップは稼げません。丁寧な言葉遣いよりも、血の通ったサービスの方がよほど重要なんです。
トラブルが起きたときに、そこに寄り添えるかが大事。機嫌が悪いこともあれば、予期せぬことだって起こります。そのトラブルの渦中に逃げずに飛び込んで解決していく。そうすると感謝してくれるんです。そのキャッチボールがサービスというもの。
トラブルが起きたときにただ責め立てるよりも、自ら解決する糸口を探せる人間の方が、わたしはレベルが高いと思います。