INTERVIEW|モエ・エ・シャンドン醸造最高責任者 ブノワ・ゴエズ インタビュー
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2015年2月16日

INTERVIEW|モエ・エ・シャンドン醸造最高責任者 ブノワ・ゴエズ インタビュー

INTERVIEW|モエ・エ・シャンドン醸造最高責任者 ブノワ・ゴエズ インタビュー
まったく異なる造りで、モエらしさは失われないのだろうか?

グラン ヴィンテージは特別である(1)

世界でもっともその名を知られるシャンパーニュ、モエ・エ・シャンドン。1743年にクロード・モエが創業して以来、つねにシャンパーニュにおけるトップメゾンでありつづけてきた偉大なブランドだ。約1150ヘクタールとシャンパーニュ地方でもっとも広く、2位のメゾンのじつに4倍の広さのぶどう畑を所有し、世界中に出荷されるシャンパーニュは毎年200万ケースを超えるという。そんなシャンパーニュの盟主とも言われるメゾンから、特別な1本、「グラン ヴィンテージ」があたらしいエチケットをまとって登場した。そこで、シェフ ド カーブ(醸造最高責任者)であるブノワ・ゴエズ氏にインタビューするとともに、東京・神宮前『Restaurant-I』でおこなわれた、世界的シェフとして知られる松嶋啓介氏とのコラボレーションイベントをリポートする。

Text by MATSUO Dai(OPENERS)

Photo by JAMANDFIX(INTERVIEW)

革新的、自由、ラグジュアリー

モエ・エ・シャンドンのシェフ ド カーブであるブノワ・ゴエズ氏は2005年、35歳の若さで現在の任に就いた。1999年に入社し、2000年からヴィンテージの専任となった彼が就任するまでにも、モエ・エ・シャンドンからはとくに作柄の良い年のみ、その年にできたワインだけでブレンドがおこなわれた「ミレジムシャンパーニュ」がリリースされていた。しかし、それはノンヴィンテージにして、モエ・エ・シャンドンのイメージの核であるブリュット・アンペリアルのスタイルから大きくかけ離れたものではなかった。


モエ・エ・シャンドンにおけるミレジムシャンパーニュのそんなイメージを刷新したのがゴエズ氏である。もちろん、伝統と格式は重んじるが、特別な年に収穫されたブドウの魅力を最大限に表現した。「革新的、自由、ラグジュアリー」というコンセプトのもとに、2007年にグラン ヴィンテージをリリースしたのである。


あたらしくなったグラン ヴィンテージ

そんなグラン ヴィンテージが、あたらしいエチケットをまとってリリースされることになった。その理由は、まず原料の収穫年であるヴィンテージに焦点を当てるということ。使用する字体は、オーセンティシティを意識したからとカーヴに書いてある文字を使った。


ゴエズ氏いわく「ヴィンテージのパーソナリティが重要」というグラン ヴィンテージ。そのセパージュは、ベースワインのパフォーマンスを見極めたうえで決定される。そのため、収穫年によって大幅に異なる。2002年がシャルドネ51%、ピノノワール26%、ピノムニエ23%だったのに対し、2003年ヴィンテージはピノムニエ43%、ピノノワール29%、シャルドネ28%と、ブラン・ド・ノワール的なニュアンスが強く感じられるであろう比率となっている。


ゴエズ氏は「グラン ヴィンテージは、アンペリアルとはまったくちがうものです。そして、グランヴィンテージを求めるひとは、モエのブランドに信頼感をおきながらも、アンペリアルとはちがうものを探し、驚かされたいというひとだと考えます。ディファレントでユニーク。論理的、知性的という軸で考えるのではなく、もっと主観的で感情的なシャンパーニュがグラン ヴィンテージなんです」。


まったく異なるつくりでありながら、モエらしさは失われないのだろうか?


「これぞモエスタイルだと思っているのは品種の構成だけではありません。輝きに満ちた果実味、官能的で魅力的な味わい、エレガントな熟成感はモエ・エ・シャンドンのどのシャンパーニュにも共通したスタイルです」。


グラン ヴィンテージの各ヴィンテージごとの特徴を語っていただいたところ、「2000年はグレープのフレーバーを強く感じる。スモーキーでヨード、ミネラル、果実味があり、グリーンネスもある。たとえば、グリーンパイナップルなど。また、エネルギーにあふれ、ダイナミックな印象のあるヴィンテージです。2003年はそれとは正反対。スイートなスパイス、たとえば、バニラやリコリスのイメージ。丸みがあり、コクがあってフルボディです。2002年はふたつのヴィンテージの特徴をあわせもっています。果実味と熟成した味わいを兼ね備えている。コンプレキシティがあるといえるでしょう。コクがあり、一貫した性格をもっています。酸味がしっかりあり、余韻が長いです」という答えが返ってきた。


モエ・エ・シャンドン「グラン ヴィンテージ 2002」
価格|8715円

モエ・エ・シャンドン「グラン ヴィンテージ ロゼ 2002」
価格|9975円

INTERVIEW|モエ・エ・シャンドン醸造最高責任者 ブノワ・ゴエズ インタビュー
まったく異なる造りで、モエらしさは失われないのだろうか?

グラン ヴィンテージは特別である(2)

シャンパーニュをふくむ、ワインづくりにおいて近年大きく問題となっているのが気候変動だ。フランスでのブドウ栽培において北限近くに位置するシャンパーニュ地方。ここが温暖化の影響を受けるのはシャンパーニュづくりにとって大打撃となるのではないだろうか? しかし、彼はこう主張する。


「気候変動の影響もあってか1988年以降はほとんどのヴィンテージにおいてブドウはよく熟れており、酸度が低い。栽培地ももちろん高温になっています。けれど、いままでのところ、ブドウの品質はむしろ良くなっています。熟れていればいいワインができるんです。これほどまでにいいものができた時代はなかったのではないかとさえ思います。 1947、1951、1959、1976、1990年ヴィンテージはとくにすばらしいといわれますが、すべて酸の低いヴィンテージです。2003年も非常にいい例です。酸はワインの骨格をつくるうえで重要なファクターではあるけど、唯一ではないんです」。


最後に、少し意地悪な質問として、最近人気のRM(レコルタン・マニュピラン)と呼ばれる小規模生産者についての意見も伺った。


そこで彼から出た言葉は、「ことシャンパーニュづくりにおいては、規模は大きければ大きいほどいい」ということだった。モエ・エ・シャンドンは、二番手のメゾンの4倍の規模、1150ヘクタールという広大な畑をもっている。しかも、そのうち特級畑が半分を占める。とくに、シャンパーニュ地方のなかでも「貴族的」と称されるアイ村に多くをもっている。ほかのブドウ栽培地域にくらべ気候が不安定なシャンパーニュ地方では、多くのブドウのなかから最高のものを選ぶ必要がある。多くのブドウのなかから厳選できるという立場にあるモエ・エ・シャンドンは、シャンパーニュ地方において特別な存在なのである。



グルメ+テイスティング=グルミング

贅たくに長期間熟成したグラン ヴィンテージには、どんな食材をどのように調理すれば最高のマリアージュが得られるのか? そのようなコンセプトのもとモエ・エ・シャンドンが考案したのがグルミング(GOURMING)だ。


グルメ+テイスティングという意味をもつグルミングは、食材と調味料をゲストが選び、それらを組み合わせて調理し、マリアージュを探るという体験型テイスティングだ。


会場は、ニース『KEISUKE MATSUSHIMA』で6年連続ミシュラン1ツ星を獲得し、世界的に活躍する松嶋啓介氏がグランシェフをつとめる東京・神宮前『Restaurant-I』。「グラン ヴィンテージ 2002」と「グラン ヴィンテージロゼ 2002」とマリアージュする料理というテーマで開催された。


ホタテやチキンといった基本素材にオリーブオイルやハーブ、くるみなどを組み合わせたり、また、ブノワ・ゴエズ氏と松嶋シェフが掛け合いをおこない、即興で松嶋シェフが提案した料理をゴエズ氏が愉しむというシーンも見られた。


素材の特徴を知り、自分好みの調味料を合わせ、シャンパーニュとマリアージュするというグルミング。ゲストが参加して、自らがシャンパーニュとの相性をはかるという楽しみかた。シャンパーニュを手土産にしたグルミングスタイルのホームパーティなどが、今後注目されるかもしれない。


Restaurant-I

東京都渋谷区神宮前1-4-20 パークコート神宮前1F

Tel. 03-5772-2091

営業時間|ランチ11:30~15:00(ラストオーダー13:30)

ディナー18:00~22:00(ラストオーダー21:00)

www.restaurant-i.jp


MHD モエ へネシー ディアジオ

Tel. 03-5217-9906

http://www.moet.jp

           
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