ポール・ボキューズで味わう、日本各地のブランド牛や銘柄牛の始祖 山陰和牛の魅力|EAT
LOUNGE / EAT
2024年1月19日

ポール・ボキューズで味わう、日本各地のブランド牛や銘柄牛の始祖 山陰和牛の魅力|EAT

EAT|ポール・ボキューズ

和牛のふるさと山陰。和牛文化は山陰から始まった

美しいサシ(霜降り)や豊かな風味にとろけるような柔らかさが特徴の和牛。和牛は日本国内だけでなく、いまや「Wagyu」として海外からの人気も高いが、和牛のブランド牛や銘柄牛のルーツを辿ると、鳥取県の種雄牛「気高(けたか)」号や島根県の種雄牛「第7糸桜(いとざくら)」号などの山陰の和牛に行きあたるのをご存じだろうか。「気高」号とは、和牛のオリンピックとも呼ばれ、5年に1度開催される和牛日本一を競う審査会「全国和牛能力共進会」の1966年第1回において1位の栄冠に輝いた雄牛。「気高」号が残した9000頭の子孫が全国に広がって和牛文化の礎ができたため、始祖と言われている。

text by IJICHI Yasutake

「気高」号 ※鳥取県ご提供

歴史・血統・肥育・環境に裏打ちされて、想いを込めて育てられた山陰和牛

多くの方は和牛と言われて山陰は第一想起しないだろう。ではなぜ山陰和牛が始祖となったか、その歴史を紐解いてみる。
そもそも日本は西暦675年、時の天皇 天武天皇の肉食禁止令の発布によって牛・馬・犬・猿・鶏の肉を食べることが禁止されて以降、約1200年間牛肉は表向き食されていない。一方、山陰は古くから砂鉄や木炭に恵まれて「たたら製鉄」が盛んだったことから、運搬用に牛と馬を多く必要とされ、蹄が2つある牛の方が働きが良いという理由で牛は重宝された。明治以降たたら製鉄は衰退したが今度は西洋文化の影響で肉食文化が広がったことで、役務用ではなく食肉用として牛の需要が高まった。この流れの中で、山陰は全国に先駆け和牛の登録事業に着手。血統登録や改良目標に基づく育種改良などを開始することになった。
品質が高い=美味しい和牛の生産は、良い種を交配すれば良いというわけではない。妊娠・出産する雌牛の能力と、良質な水や自然に囲まれた清潔な環境でストレスなく穏やかに育てる肥育技術が不可欠。戦後まもなく、生産から繁殖、育成、肥育、そして出荷までの一貫生産体制を整備し、地元の生産者たちと県が一体と改良を進めた結果、世界が注目する和牛のルーツである鳥取県「気高」号や島根県「糸桜」号が誕生し、その遺伝子が全国に脈々と受け継がれることになって今に至る。
鳥取和牛 ※鳥取県ご提供
しまね和牛 ※島根県ご提供
第12回全国和牛能力共進会の様子 ※島根県ご提供
近年では肥育技術の向上や育種改良などが進み、2017年の第11回全国和牛能力共進会では鳥取和牛が、2022年の第12回ではしまね和牛がそれぞれ「肉質日本一」を獲得。
「気高」号の血を引き継ぐ和牛はオレイン酸含有量が高く、科学的にも品質の高さは証明されている。オレイン酸はオリーブオイルの主成分、風味が良く、融点が16℃と低いため豊富なほど口溶けも良い。鳥取県では脂肪中にオレイン酸を55%以上含むものを「鳥取和牛オレイン55」とブランド化している。しまね和牛も2022 年の全国和牛能力共進会で「脂肪の賞 特別賞」を受賞。両県共に和牛の特徴である良質な脂の改良に余念がない。山陰の大自然を共有しながら切磋琢磨してきた両県は、山陰和牛の歴史や物語と味わいを広めるべく手を組み、普及活動に努めている。
そのひとつが、東京代官山のメゾン ポール・ボキューズとブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座で、今年1月に開催されるウィークリーフェア。その先駆けとして、「和牛のふるさと山陰を味わう美食の饗宴」と銘打った試食会が先日メゾン ポール・ボキューズで開かれ、当日は島根県からは丸山県知事が、鳥取県からは堀田東京本部長が出席し、両県の和牛の魅力を紹介した。
メゾン ポール・ボキューズの入砂俊重シェフ、ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座の星野晃彦シェフが現地に足を運び、実際に生産現場を見て、生産者と話をして、納得した選りすぐりの山陰和牛を使ったスペシャルメニューが24年1月23日(火)~31日(水)の期間限定で提供される。
メゾン ポール・ボキューズでは、「鳥取和牛フィレ肉のロースト ソースペリグー」が提供される。試食会では星野シェフが鳥取和牛を丸々一本焼きあげてカットしてくれた。ローストは火の入り加減にシェフの腕を存分に感じることができる。口どけがたまらないとろけるような舌ざわりと芯部の力強さをしっかり感じることができ、フランス料理にふさわしいトリュフをふんだんに使ったソース、添えられたなめこ・たもぎ茸・椎茸・きくらげ・ひら茸といった山陰の原木キノコとの香りやフレッシュな食感との相性も抜群。
ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座 星野シェフの考案は、MENU SPÉCIAL(税込¥7,700/ ¥10,450)の前菜差し替えとして提供される「しまね和牛サーロインのポッシェ ソースベアルネーズ」(差替え追加料金+¥1,320)。試食会では、鳥取和牛としまね和牛の二種盛りが提供された。ポッシェとはわかりやすく言い換えると、しゃぶしゃぶ。2mmの絶妙な薄さでカットされたサーロインを65°Cの和牛だしでしゃぶしゃぶし、味付は塩のみと言う。ノンストレスの肥育にこだわるように、調理もノンストレスにこだわり、しまね和牛本来の旨みと柔らかさを損なわずにギュッと閉じ込め、その魅力を存分に引き出している。
試食会では、2つのスペシャルメニューだけでなく、この日一夜限りの山陰尽くしのスペシャルコースをいただき、鳥取和牛・しまね和牛の魅力とそれぞれの特徴を堪能することができた。鳥取和牛はサシと赤身が輝いていてパワフルでバランスが良く、しまね和牛はサシがしっかり効いていてジュースのように口どけが良い。鳥取和牛はポール・ボキューズが好きだったという「チリコンカルネ」のアミューズ、しまね和牛はメゾン ポール・ボキューズのスペシャリテ「黒トリュフのスープ エリザ宮にて」で、旨み・甘み・コク・舌ざわりを余すことなく、山陰の大自然の恵みの中で育った野菜やフルーツ、お酒と共に味わった。
鳥取和牛としまね和牛の魅力と生産者の想いが両シェフにしっかりと引継がれ、トリュフ、バターやクリームをふんだんに使ったフランス料理の真髄として楽しめるのは、この機会しかないだろう。山陰和牛ウィークリーフェア、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
山陰和牛ウィークリーフェア
期間|2024年1月23日(火)~1月31日(水)

メゾン ポール・ボキューズ
場所|東京都渋谷区猿楽町17-16 代官山フォーラムB1F
TEL|03-5458-6324(月曜休)
詳細|https://www.hiramatsurestaurant.jp/paulbocuse-maison/news/#3612 


ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座
場所|東京都中央区銀座2-2-14 マロニエゲート銀座1 10F
TEL|03-5159-0321(無休)
詳細|https://www.hiramatsurestaurant.jp/paulbocuse-ginza/news/#3611 
問い合わせ先

ひらまつ
https://www.hiramatsu.co.jp/

                      
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