今年で25周年を迎える、フランスで始まった味覚教育

美食の国、フランスから来た味覚教育「味覚の一週間」。この活動がスタートした当時、フランスでも子どもたちを取り巻く食生活の乱れが大きな問題となっていたが、「次世代を担う子どもたちにフランスの食文化をきちんと伝えよう」と、「味覚の授業」という子どもたちへの基本的な教育を小学校でおこなうことになり、この活動を中心に、「味覚の一日」は年々その活動をフランス全土へと広げていった。

日本でも2011年にフランスの取り組みを継承して「味覚の一週間」の開催がスタート。フランス料理のシェフたちとともに、日本料理人たちの協力も得て、小学校の「味覚の授業」に加え、さまざまな味覚体験ができる「味覚のアトリエ」や、レストランや料理店での「味覚の食卓（La　table du goût）」が開催されている。

マイユの粒マスタードを使った和食を提案

銀座にある「スタジオ プラス ジー ギンザ」では、「旬」をテーマに、著名なシェフや有識者による「味覚のアトリエ」を開催。「味覚の一週間」期間中の10月24日には、和食界きっての気鋭料理人として注目を集める「なすび亭」のオーナシェフ、吉岡英尋氏による「マスタードと和食のマリアージュ」のワークショップが実施された。

セミナーの参加者は、料理研究家や料理教室を主宰するプロで、「味覚の一週間」をオーガナイズする事務局長の瀬古篤子さんは、「味覚の授業は、子どもの味覚への警鐘として始まりました。現代の子どもは濃い味のものを多く食べるようになったので、味蕾（みらい）が鈍感になって、苦いと酸っぱいの違いがわからないという報告もあります。味がわからないと強い味のものばかりを食べ、しょっぱく、脂っこいものを食べつづけると肥満の恐れもあります。今回は、吉岡英尋氏をお招きして、フランスのマイユのマスタードを和食にどう使うかをプロの皆さんに気づいていただこうというセミナーです。日本食に欠くことのできない“うまみ”を熟知する吉岡シェフに、マスタードと和食のマリアージュを考案いただきました」と挨拶した。

粒マスタードの特徴を生かした2品

今回、吉岡英尋氏が考案したメニューは、「魚介と焼き野菜のからし酢味噌掛け」と「鶏もも肉 黄金焼 からし風味」の2品。

デモンストレーションをおこなった吉岡英尋氏は、「ご家庭にも普及している調味料、マイユの粒マスタードを主役に、今回は隠し味ではなく、たっぷり使えるレシピを考案しました。粒マスタードは、和からしと比べると、鼻に抜ける香りが穏やかで、酸味があり、粒の食感も楽しめます。今回はその特徴を生かせる料理となっています」と語る。

味覚の一週間がテーマとする子どもの味覚については、「食がどんどん便利になる反面、どうしても強い味に慣れてきて、味覚が鈍感になるのはしょうがない一面もありますが、子どもの味覚については、家庭ではもちろん社会全体で取り組む必要があります。和食は日本人のDNAにあって、私たちは普段から昔ながらの食文化を楽しんでいるので、シンプルな食材のもっているうまみを感じる料理を提供することで、味覚を考えるきっかけになればと思います。今回はプロ向けのセミナーだったのでアイデアの提供でしたが、みなさんがこれを持ち帰ってアレンジして広がりをもたせていただければ」と吉岡氏。

味覚の一週間では、今後も「五感の育成」と「環境に配慮した食の自立」 の一助となるよう食育活動に取り組んでいく。

味覚の一週間
http://www.legout.jp/

なすび亭
http://www.nasubitei.com/