松浦俊夫|from TOKYO MOON 11月25日 オンエア
クラブ・ジャズ界の美声ボーカリスト、ホセ・ジェイムズ来日インタビュー(1)
日曜の夜、上質な音楽とともにゆったりと流れる自分だけの時間は、おとなたちの至福のとき。そんな時間をさらに豊かにするのが、DJ松浦俊夫によるラジオプログラム『TOKYO MOON』──。彼が世界中から選りすぐったすばらしい音楽や知的好奇心を刺激するおとなのためのトピックスを、毎週日曜日Inter FM 76.1MHzにて24時からオンエア。ここでは、毎週放送されたばかりのプログラムを振り返ります。今週は、クラブ・ジャズ界から美声ボーカリストとして知られる、ホセ・ジェイムズを迎えて話をうかがいます。
Text by MATSUURA Toshio
オンエアにはなかった日本語訳を公開!
今回で2回目となる"TOKYO MOON"への出演を果たしたNYを拠点に活動するジャズ・ボーカリスト、ホセ・ジェイムズ。そのスモーキーで艶のある歌声が、ロンドンのDJジャイルス・ピーターソンに認められて2008年にデビューし、その後の活躍は皆さんご存知のとおり。来年1月に通算4作目となるニュー・アルバム『No Beginning No End』が、ジャズの名門ブルーノートから発表される彼にアルバムの内容や制作秘話などについて話を伺いました。OPENERSだけの日本語訳付のインタビューを楽しんで下さい。
前回のインタビューはこちら。
Jose James
『No Beginning No End』
REVIEW|TRACK LIST
01. Jose James / It's All Over Your Body (Blue Note / EMI Music Japan)
02. Jose James / Make It Right (Blue Note / EMI Music Japan)
03. Jose James / Vanguard (Blue Note / EMI Music Japan)
04. Jose James / Sword + Gun (Blue Note / EMI Music Japan)
05. Jose James / Come To My Door (Acoustic) (Blue Note / EMI Music Japan)
06. Marvin Gaye / Come Live With Me Angel (Motown)
Jose James|ホセ・ジェイムズ
ニューヨーク在住のジャズ・シンガー。ミネアポリス生まれで、14歳のときにラジオから流れてきたデューク・エリントンの「A列車で行こう」を聴き、ジャズにのめり込む。最も影響を受けたミュージシャンはジョン・コルトレーン。ニューヨークの音楽大学でジャズを専攻しながら、各国のさまざまなジャズ・コンテストに参加。ロンドンのジャズ・コンテストに訪れた際にジャイルス・ピーターソンとの運命の出会いを果たす。ホセの声と音楽性に魅了されたジャイルスは、彼に惚れ込み「15年にひとりの逸材」と断言し、この若き才能との契約を即決。2008年、ブラウンズウッド・レコーディングスの新たな才能としてデビューする。ダンス・ミュージックやHIP-HOPを聞いてきたバックボーンから、DJ/プロデューサー達とも精力的にコラボレーションをし、ダンス・ミュージック界から熱い注目を集め、フィーチャリング・ボーカリストとしてオファーが殺到。ボーカル・ジャズの歴史を塗り替えたとまで言われる美声は世界中で大絶賛され、国内外のジャズ/クラブ・チャートを総なめにした。2009年、クラブ・ジャズ界のベスト・ボーカリストとして、イギリス、ドイツ、日本と各国のプロデューサー達とコラボレーションを果たす。2010年、名門ジャズ・レーベルimpulse!と契約。満を持してトップ・ジャズ・ミュージシャンの仲間入りを果たした。「JAZZ界の新たな灯火」と呼ばれる程の期待を担っている。そして2012年、名門ジャズレーベルBLUE NOTEへ移籍が決定。満を持して通算4枚目のアルバムを発売する。
松浦俊夫|from TOKYO MOON 11月25日 オンエア
クラブ・ジャズ界の美声ボーカリスト、ホセ・ジェイムズ来日インタビュー(2)
ほんとの意味での“セカンド・アルバム”と呼べるものができた
──今夜は、来日中のホセ・ジェイムズがスタジオに遊びに来てくれました。番組には2度目の出演になりますが、日本に来るのはこれで何回目になりますか?
8回目ぐらいかな。はっきり覚えていないんです(笑)。
──日本ではすでにおなじみの彼ですが、まずは、もうすぐ発売になるニュー・アルバム『ノー・ビギニング・ノー・エンド』についてうかがいたいとおもいます。一足先に聴かせていただきましたがすばらしかったです。おめでとうございます。
松浦さんからそう言っていただけると、ほんとにうれしいです。
── 2008年にデビュー・アルバム『ザ・ドリーマー』をリリース。『ノー・ビギニング・ノー・エンド』は、ホセさんにとって4枚目のアルバムになります。前作の『フォー・オール・ウィ・ノウ』はインパルス(※)からのリリースでしたが、本作はブルーノートからのリリースですね。どういった経緯で今回移籍することになったのでしょう?
じつは、インパルスを出てからしばらく、どこにも所属せずに、自分の音楽への情熱だけを信じて曲を作りつづけていた時期があったんです。そんなとき、パリでインディ・ザーラと出会いました。それから、ピノ・パラディーノやロバート・グラスパー、クリス・デイヴといったジャズ・ミュージシャンたちとのセッションがはじまりました。それが今回のアルバムの基礎となったわけですが、たまたまブルーノートに所属しているアーティストがふたり(インディ・ザーラとロバート・グラスパー)いたこともあって、自然とレーベル側がぼくの作品を耳にすることになったんですね。
ブルーノートというのは、ジャズの名門でありながら、同時にフレッシュさも持ち合わせている類いまれなレーベルです。今回のアルバムも、ぼくの作りたいように自由に作らせてくれました。このアルバムにかんしては、一から自分で作ったと言っても過言ではないほど、ぼく自身のすべてがそこに詰まっています。デビュー・アルバムにつづく、ほんとの意味での“セカンド・アルバム”と呼べるものができたとおもっています。
※インパルス=ホセ・ジェイムズがもっとも音楽的影響を受けたサックス奏者のジョン・コルトレーンが1960年代に在籍していたジャズ・レーベル。『フォー・オール・ウィ・ノウ』は、2004年にコルトレーンの妻アリス・コルトレーンの遺作を発売して以来、インパルスにとって、じつに6年ぶりの新作となった。
──昨年あたりから、ブルーノートがより一層パワフルになったようにおもうんです。ロバート・グラスパーしかり、ホセさんの『フォー・オール・ウィ・ノウ』しかり、あたらしいブルーノートを予感させるような作品が出揃っていますよね。今回のアルバムは、特に歌にかんして、いままで以上にリラックスしていて、いい意味で力が抜けているように感じました。
力が抜けていてよかったと言われたのははじめてで、すごくうれしいです。それは恐らくリオン・ウェアのおかげでしょうね。ロサンゼルスにある彼の自宅にお邪魔して、彼がどんなふうに音楽を制作してきたのかを見る機会があったんです。そのときに、マーヴィン・ゲイの話や、モータウンで仕事をしていたときの話も聞かせてくれたんですが、彼との会話から、音楽とはひとりで作るものではなく、たくさんのすばらしいアーティストがかかわってこそ作れるものなんだ、ということを学びました。
そんな経緯からピノ・パラディーノと一緒に曲を作ることになって、「メイク・イット・ライト」や「ノー・ビギニング・ノー・エンド」といった曲が出来上がりました。ほかのアーティストと一緒に曲を作るというのは、今回はじめて取り組んでみてうまくいったことのひとつです。すごく貴重な経験になりましたし、おかげでより集中して歌に取り組むことができました。
1曲1曲を精魂込めて作り上げていったので、その分、制作には時間がかかりました。『ザ・ドリーマー』を制作したときは、ひとつの曲にフォーカスすることなく、複数の曲を同時進行で作らなければいけなかったんですが、今回はそうした縛りがなかったので、制作中のリラックスしたムードが作品に反映されているのだとおもいます。
──『ノー・ビギニング・ノー・エンド』は、パッと聴いて楽曲の良し悪しを判断するというよりは、すばらしい映画がそうであるように、何度も繰り返し聴くうちに毎回あたらしい発見があって、少しずつジワジワと体に染み込んでいくような作品だとおもいます。ぼく自身も、これから聴いていくにつれて、どんなあたらしい発見があるのか楽しみにしているんです。
もちろん、これまでの流れを汲んだ、ホセ・ジェイムズらしい音もありますが、リズムにニューオーリンズっぽさを感じたり、フォークの要素が入っていたり……ところどころにあたらしいアプローチも見受けられます。進化しつづけるなかで、音が変わっていくのは当然のことだとおもいますが、こうしたあたらしいアプローチというのは、どのようにして生まれてくるのでしょう?
今回試してみたいことがいくつかあったのですが、そのひとつがあたらしい人と制作して、その人の世界観をアルバムに取り込むことでした。たとえば、クリス・デイヴのように予想もできないようなリズムを刻む人、キャロル・キングやスティーヴィー・ワンダーのようにきちんと作曲ができる人、エミリー・キングやフィンクのように構成が抜群にうまい人……そんな人たちと一緒に曲を作って、彼らの世界観をアルバムのなかに取り込みたかったのです。すべての曲をそんなふうに作ろうという気はありませんでしたが、人びとの心に響く音楽を心を込めて作りたいとおもいました。同時に、とびきりユニークでおもしろい音を奏でるアルバムを。
松浦俊夫|from TOKYO MOON 11月25日 オンエア
クラブ・ジャズ界の美声ボーカリスト、ホセ・ジェイムズ来日インタビュー(3)
2月に控えた来日公演に向けて
──たしかにいろんな要素が入っていましたが、絶妙なバランスでブレンドされていたので、全体をとおしてすごくスムーズな印象を受けました。なんといっても、その組み合わせ方、バランス感覚がすばらしかった。アーティスト“ホセ・ジェイムズ”のあらたな一面を垣間見た気がします。みなさんの手元に届くのがいよいよ来年の1月16日。そして2月のバレンタインデーには、来日公演も決定しています。その来日公演に向けて、いまの気持ちを聞かせてください。
今回はバンドのメンバーが非常にすばらしいので、ぜひ期待していただきたいです。ドラムはリチャード・スペイヴェン。ベースは、アルバムのなかの1曲「ドゥー・ユー・フィール」のプロデューサーで、バック・ボーカルも担当してくれているソロモン・ドーシー。彼はピノ・パラディーノに演奏スタイルが似ているので、“リトル・ピノ”というあだ名で呼んでいます。ピアノはクリス・バウワース。「セロニアス・モンク・コンペティション」で優勝したピアニストで、現在はマーカス・ミラーとツアーをしています。トランペットはタクヤ・クロダ、トロンボーンはコーリー・キング、そしてスペシャルゲストにはエミリー・キングを迎えます。ちょうどいま、アメリカではプロモーションをおこなっている最中で、いくつかテレビ番組に出演する予定です。ロサンゼルスとニューヨークではリリース・パーティもおこなう予定なので、いまから楽しみです。
ホセ・ジェイムズ 『ノー・ビギニング・ノー・エンド』
with special guest エミリー・キング
<大阪>
日程|2月12日(火)
会場|ビルボードライブ大阪
料金|サービスエリア=6500円、カジュアルエリア=5000円
<東京 >
日程|2月14日(木)~15日(金)
会場|ビルボードライブ東京
料金|サービスエリア=6500円、カジュアルエリア=4500
出演者|ホセ・ジェームズ(Vocals)/エミリー・キング(Vocals)/タクヤ・クロダ(Trumpet)/コーリー・キング(Trombone)/クリス・バウワース(Keyboards)/ソロモン・ドーシー(Bass)/リチャード・スペイヴェン(Drums)
──アルバムのリリースと2月の来日公演、とても楽しみにしています。
ありがとうございます。
──前回スタジオに来てくれたとき、影響を受けた曲として、デューク・エリントンの『A列車で行こう』を挙げてくれました。では、今回のアルバムを作るうえで一番影響を受けたという、リオン・ウェアの作品のなかから1曲選ぶとしたらいかがでしょう?
マーヴィン・ゲイのアルバム『アイ・ウォント・ユー』のなかの「エンジェル」ですね。このアルバムは、モータウンでひとりのプロデューサーが最初から最後まで制作した、はじめてのアルバムなんです。 曲も歌詞もすばらしく、大好きな1枚です。
bERGAMO(ベルガモ)5th Anniversary Party
2007年12月、恵比寿にオープンしたニューヨーク・スタイルのイタリアン・レストランbERGAMO(ベルガモ)。オープンから店内の音楽を私、松浦が手がけているこのお店が、この度開店5周年を記念して1夜限りのパーティーを開催します。シェフの手がけるトスカーナ料理とドリンクを楽しみながら、DJとライブで音楽を楽しんでもらおうというものです。来店したことのある方、ない方にかかわらず楽しい夜を一緒に過ごしましょう。お待ちしています。
日程|12月6日(木)
時間|18:00~22:00
料金|3000円(フリー・ドリンク&フード付き)
出演者|DJ Toshio Matsuura & Jazz Live
問い合わせ
bERGAMO
渋谷区恵比寿南1-24-2
Tel. 03-5725-2555
松浦俊夫『TOKYO MOON』
毎週日曜日24:00~24:30 ON AIR
Inter FM 76.1MHz
『TOKYO MOON』へのメッセージはこちらまで
moon@interfm.jp
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www.interfm.co.jp