より良い未来のためのデザインを共に求めて──LEXUS DESIGN AWARD 2023|LEXUS
DESIGN / FEATURES
2023年7月6日

より良い未来のためのデザインを共に求めて──LEXUS DESIGN AWARD 2023|LEXUS

「Fog-X」 パヴェルス・ヘッドストロム
──水不足問題を抱える乾燥した地域へのソリューション

「Fog-X」は、水不足の問題を抱える乾燥した環境において、空気中の霧を集めて水に変え、飲み水を提供するシェルターへと拡張するジャケット。霧を採取するのに最適な場所へと導いてくれる専用のスマートフォン用アプリケーションを併用することで、このジャケットの機能が最大限に発揮される。
手掛けたのは、デンマークを拠点に活動するスウェーデンの建築家、パヴェルス・ヘッドストロム氏。ヘッドストロム氏によると、当初Fog-Xは重量感のあるバックパックだった。
ところが、メンターシップを通して不要な機構を削除したり、素材を厳選したりするなどブラッシュアップに取り組むことで、ジャケットという日常使いのアイテムで実現することに。より身近でユーザーフレンドリーなソリューションへと大きく進化したのだ。スマホアプリを用いるアイデアも、メンターとの共創から生まれたという。
「3カ月のメンターシップを経て、Fog-Xは(テントになる)重い特大のバックパックから軽くて丈夫なジャケットに生まれ変わり、(専用アプリを組み合わせることで)最も乾燥した砂漠でも真水を手に入れることができるようになりました」

「Print Clay Humidifier」 ジャーミン・リュウ
──資源循環型社会の実現を目指して

「Print Clay Humidifier」は、不要になったセラミックをリサイクルして作った、電力を必要としないサステナブルな加湿器である。リサイクルセラミックの利用を拡大し、資源循環型社会の実現につなげることを目的としているという。
加湿器自体は、植物が水分を吸収し、内部の管で隅々まで運び、蒸発させるという機能を模したもの。3Dプリンターを用い表面積の広いユニークな形状を作り出すことで吸水性を高めている。
作者のジャーミン・リュウ氏は中国出身の工業デザイナーで、異文化とサステナブルデザインをテーマに活動している。
メンターからのアドバイスにより、吸水効率を高めるためにセラミックのリサイクルパウダーの配合を変えるなど素材の効率性、可能性や、セラミックの廃棄物問題についてより深く検証し、説得力あるストーリーにしたというリュウ氏。
「メンターシップでは、製品は機能だけでなく、どんな家にもシンプルかつエレガントに溶け込むものでなければならないことも学びました」

「Touch the Valley」 Temporary Office
──視覚障がい者が楽しみながら地形を学べる3Dパズル

「Touch the Valley」は、視覚障がいを持つ人が、触れた感覚を通して楽しみながら地形などを学べる3Dパズル。隣り合うピースの形状を組み合わせていく過程で、パズルに触れた感覚からその地域のスケールの大きさや雄大な自然環境をイメージすることができる。
Temporary Officeは、カリフォルニア大学バークレー校を卒業したヴィンセント・ライ氏(シンガポール)とダグラス・リー氏(カナダ)によるデザインチーム。建築からプロダクトデザインまで、さまざまなプロジェクトを手掛けている。
彼らはメンターからのアドバイスをもとに、視力回復トレーニングの専門家や視覚障がい者のコミュニティで何度もユーザーテストを繰り返し、パズルの遊びやすさを向上させたという。
たとえば、磁石を埋め込むことでピース同士が引き合う、あるいは反発する力を生み出すなどいくつかの機能を追加することで、ユーザーがこの遊びのプロセスに楽しく没頭できるようにデザインした。
「将来的には、瞑想や3Dナビゲーションのツール、あるいは自然の美しさを認識するためのパズルとして活用されることを目指しています」

「Zero Bag」パク・キョンホ & ホ・イェジン
──衣類や食材の化学物質を除去するとともに不要なパッケージゴミを削減

「Zero Bag」は、水溶性プラスチックと洗剤成分を一体化させた、環境に優しいパッケージ。商品と一緒に水で洗うと溶けてなくなるため、不要なパッケージゴミを削減できるうえ、商品に付着した化学物質も洗い流せる。
パク・キョンホ、ホ・イェジンの両氏は、韓国の漢陽大学で産業デザインを専攻する学生。社会問題や環境問題に強い関心を持ち、デザインを通じてユーザー視点で多様な解決策を見出すことを目指しているという。
メンターシップのおかげで、Zero Bagが「どのような用途に向いているのか」、「どのように多くの人にアピールするのか」について、改めて深く考える機会を得ることができたと2人は語る。
当初Zero Bagは、ファッション業界に向けた衣類用として想定していたが、このコンセプトが適用できる業界をリサーチした結果、最終作品では野菜やフルーツ、ミールキットといったフード分野にも応用できる梱包用パッケージへと進化したのだ。
審査員のサイモン・ハンフリーズ氏は、上記の4作品を前に以下のように語った。
「私たちデザイナーは、より良い未来のために、革新的なアイデアや 美しいデザインを通して、社会課題に対する解決策を生み出すという使命を負っています。この観点において、受賞作品は“デザインの力”を改めて気付かせてくれました」

受賞者の今後の可能性

これまでのLEXUS DESIGN AWARDの受賞者の中には、すでにより良い未来へ向け具体的なアクションを起こしている者も少なくない。
NOTPLAの共同ファウンダー兼CEOであるロドリゴ・ガルシア・ゴンザレス氏(左)とピエール・パスリエ氏(右)
たとえば、プラスチックボトルの代替として海藻成分から作られたカプセル型のパッケージ「Ooho!」を考案し、2014年に同アワードを受賞したロンドンのスタートアップ「NOTPLA」。彼らは受賞後、科学者やエンジニアなどのスペシャリストを迎え、大量生産に向けて本格的なスタートを切る。
2019年4月に開催されたロンドンマラソンでは、エナジードリンク用ボトルとして採用され、3万人以上のランナーに配布。これにより、プラスチックボトルを前年大会の76万本から21万5000本まで削減させるという主催者の目標達成に大きく貢献した。
エナジードリンクを詰めた「Ooho」がロンドンマラソンで3万人以上のランナーに配布された
LEXUS DESIGN AWARD2023を受賞した4組の受賞者が、革新的なアイデアや美しいデザインを武器に、いかにより良い未来に貢献していくのか──今後の活躍を楽しみにしたい。
問い合わせ先

LEXUS DESIGN AWARD

https://lexus.jp/magazine/artdesign/lexus-design-award/

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