マクラーレン 570S クーペ、スポーツシリーズの第1弾登場|McLaren
McLaren 570S Coupe|マクラーレン 570S クーペ
マクラーレン 570S クーペ、スポーツシリーズの第1弾登場
2011年に「MP4-12C」で市販スーパーカーマーケットに参入し、スーパーカー史にあらたなページを書きくわえた英国のマクラーレン・オートモーティブ。今年3月に開催されたジュネーブ モーターショーで発表した「675LT」に続き、ニューヨーク オートショーでニューモデル「570S クーペ」をワールドプレミアしニューモデルラッシュに沸いている。この新型車はマクラーレン第3のラインナップとなる「スポーツシリーズ」のトップバッターで、エントリークラスを担当するのだという。
Text by SAKURAI Kenichi
3つのシリーズが完成
3月に開催されたジュネーブ モーターショーで、ニューモデル「マクラーレン 675LT」をワールドプレミアしたばかりのマクラーレン・オートモーティブが、4月1日より開幕したニューヨーク ショーで、エントリークラスを担当する「スポーツシリーズ」の第1弾となる「570S クーペ」を発表した。
現在マクラーレンは、ラインナップの拡充とセグメントの明確化を図っている。トップに位置するのは「アルティメットシリーズ」と呼ぶセグメントで、2013年のジュネーブ ショーで市販型を公開したハイブリッドスーパーカー「P1」や、そのサーキット専用モデルで1,000psを誇る「P1 GTR」がラインナップする。
昨年のジュネーブ ショーで公開された「650S」や、今年のおなじくジュネーブ ショーでワールドプレミアを果たしたその650Sの進化版ともいえる「675LT」は「スーパーシリーズ」と呼ぶ第2のセグメント。シリーズの中間に位置し、記念すべきマクラーレン・オートモーティブの市販1号車(「マクラーレン F1」は旧称であるマクラーレン カーズのモデル)となった「MP4-12C」もこのシリーズにあたる。
そして今回ニューヨーク オートショーで初公開された「570S」は、これまでにないラインナップ、すなわちマクラーレンのラインナップでエントリーセグメントを担当する「スポーツシリーズ」の第1弾として登場。マクラーレンのDNAを受け継ぐポテンシャルとパフォーマンスを持つロードモデルでありながら、魅力的なプライスタグを下げるのだという。マクラーレンはこのスポーツシリーズの誕生によって、今後3シリーズ戦略を展開することになるわけだ。
ポルシェ「911」やアストンマーティンのV8ラインナップはもちろんのこと、その軽量なボディを武器に、フェラーリのミッドシップモデルやランボルギーニ「ウラカン」をもライバルとして射程内に収める570Sは、もちろんエントリーシリーズとして初めて本格的なミッドシップスポーツカーを楽しもうという新規ユーザーの獲得が最大のテーマであるはずだが、そのパフォーマンスを知れば既存のスーパースポーツも安穏としていられるはずはない。
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マクラーレン 570S クーペ、スポーツシリーズの第1弾登場 (2)
0-100km/h加速は3.2秒、最高速度は328km/h
570Sは、F1マシンのノウハウを詰め込んだMP4-12C由来のカーボンファイバー製となるモノコックIIシャシーを採用し、車重はわずか1,313kg(乾燥重量)と、非常に軽量に作られている。このシャシーに、車名にもある最高出力570ps、最大トルク600Nm(61.2kgm)を発生する3.8リッターV型8気筒ツインターボのM838TEエンジンを搭載。エンジンはもちろん車体中央に縦置きする、ミッドシップマウントを採用する。
600psオーバーが当たり前になりつつあるスーパーカー界にあって、570psのエントリーモデルだからといって引け目を感じる必要はない。1トンあたりのパワーは434psと、あのランボルギーニ ウラカンの428ps/tを上まわるスペックを叩き出しているのだ。0-100km/h加速は3.2秒。こちらは奇しくもウラカンとおなじデータである。軽いボディが優位に働いていることの証明でもあろう。ちなみに0-200km/h加速は9.5秒、最高速度は328km/hで、ウラカンを3km/h上まわっている。
ボディデザインはどこからどうみてもマクラーレンのラインナップとわかるもので、フロントスポイラーやフルLEDのヘッドライトやその周囲のレイヤードデザイン、ドアの後ろに設けられたエアインテークなどに他のラインナップとの共通性が見られる。マクラーレンはこれを「シュリンクラップド」デザインと呼んでおり、同時に、マクラーレンであることを示すアイコンともなっている上方に開くドアも採用された。ボディはコンパクトで、サイズは全長4,530×全幅2,095×全高1,202mmと発表されている。
こうした特徴的なデザインをもたらすボディパネルはアルミ製で、外板の総重量は150kgでしかない。カーボンファイバー製となるモノコックIIシャシーは、キャビンの乗り降りや日常の使いやすさに焦点を当てて設計されており、よりフレンドリーなエントリーモデルにふさわしい仕上がりだという。シャシー単体の重量は、わずか80kg未満とアナウンスされている。
最高出力570ps、最大トルク600Nm(61.2kgm)を発生する3.8リッターV型8気筒ツインターボのM838TEエンジンは、パーツの30パーセントを新設計し、大幅な進化を迎えた。328km/hという最高速度は前述のとおりだが、一方でEU複合サイクルで25.5マイル/ガロン(9.0km/ℓ)の燃費と、258g/kmの二酸化炭素排出量を実現。低燃費、ローエミッション性能にも磨きをかけた。スーパーカーにしてこの低燃費性能を持つ570Sは、米国市場においてガスガズラータックスが免除されるといえば、どれだけ優れた燃費性能であるかわかってもらえるだろう。
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マクラーレン 570S クーペ、スポーツシリーズの第1弾登場 (3)
日常の使いやすさを重視
この3.8リッターV8ツインターボエンジンには、7段のSSG=シームレス シフト ギアボックスと呼ばれるDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせている。タイヤはフロント225/35R19、リア285/35R20サイズのピレリPゼロ コルサのワンメイクで、オプションで鍛造アルミホイールと組み合わせることが可能だ。カーボンセラミックブレーキは全車標準装備となっている。
サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式で、アンチロールバーとアダプティブダンパーを組み合わせる。アダプティブダンパーは、他のラインナップでお馴染みの「ノーマル」、「スポーツ」、そして「トラック」の3段階に制御可能。「スポーツ」と「トラック」の設定は、よりサーキット向けにプログラミングされ、反対に「ノーマル」モードでは、洗練された乗り心地を提供するという。
一方インテリアは、視認性や使いやすさ、機能性においてこれまでのラインナップよりもさらに進化させている。日常的な使いやすさやシンプルでクリーンなデザインが確認できるキャビンは、ドライバーを中心に設計されている。ダッシュボードやステアリングホイールももちろん本革でトリミングされ、標準装備される長距離の快適さとサポート性の高いスポーツシートも本革張り。よりスパルタンなレーシングシートはオプション設定された。2座のシート背後にちょっとした荷物スペースを持つほか、フロントのラゲッジスペースは150リットル拡張されている。
またダッシュボード中央に位置するフローティングセンターコンソールに7インチのIRISのタッチスクリーン式TFTデジタルクラスタを搭載し、これを用いて最先端のインフォテインメントシステムを操作することができる。
ここではエアコンの調整機能や、スマホやタブレットPCとブルートゥース接続で音楽を楽しめるほか、シリウスサテライトラジオ(衛星ラジオ)も搭載。標準仕様はマクラーレン オーディオ4スピーカーシステムだが、マクラーレン オーディオプラス8スピーカーのほか、総出力1280Wを誇るバウアーズ&ウィルキンスの12スピーカープレミアムオーディオシステムにアップグレードが可能。日常を楽しむ要素も抜かりなく装備されている。
今回「スポーツシリーズ」の誕生によって「スーパーシリーズ」や「アルティメットシリーズ」といった各ラインナップのキャラクターがより明確になったマクラーレン。3シリーズ展開は今後どんな進化とラインナップをもたらし、果たしていかなる驚異を歴史で先行するスーパーカーブランドに抱かせるのか。ジュネーブ ショーでコンセプトカーを発表し主役に躍り出たアストンマーティンやベントレーとともに、2015年、英国勢はスーパーカーやプレミアムスポーツの台風の目になりそうな予感でいっぱいだ。