Mercedes-Benz|メルセデス・ベンツ E 350| ブルーテック アバンギャルド LONG TERM TEST 第一回
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メルセデス・ベンツ E 350 ブルーテック アバンギャルド 第1回
話題の「ブルーテック」搭載車、リポート開始! (1)
ディーゼル車に対する、あなたのイメージはどんなだろう? 黒鉛を吐きだし、有害な窒素酸化物(NOx)をまき散らす邪悪な公害車と答えるならば、それはきっと昔のことだ。メルセデス・ベンツが開発した浄化システム「ブルーテック」は、画期的な触媒システムにより黒鉛を99パーセント除去し、排気ガス中に尿素水溶液を噴射することでアンモニアを生成させ、SCR触媒コンバーターでNOxの80パーセント以上を無害な窒素と水に還元する。ディーゼル車のマイナス面を見事に浄化した画期的なシステムだ。編集部が長期リポート車4台目に選んだのは、そんなブルーテックを搭載したE 350 ブルーテック アバンギャルドである。
文=オウプナーズ写真=五十嵐 隆裕
欧州と日本、ディーゼル車に対するイメージのちがい
ヨーロッパではフランスをはじめ乗用車の新車登録台数の過半数を占める国があるほど、熱効率が高く経済的なディーゼル車は一般的である。近年では、排出ガス中にふくまれる粒子状物質 (PM)の量 が飛躍的に抑えられた超低PM排出ディーゼル車や、高性能な窒素酸化物(NOx)後処理装置などにより排気ガス中の有害物質が大幅に低減されたスーパークリーンディーゼル車などの技術革新により、さらに環境への負荷の少ないエコカーであるとして安定した人気を保っている。
だが、日本はどうだろう? 黒鉛やNOxを吐き出すディーゼルエンジンの法規制が必要以上に目立ち、ディーゼルと聞けば人体に悪影響をおよぼし環境破壊につながるというイメージが強すぎて、過剰に嫌悪感をもつひとも少なくないだろう。
地球温暖化の問題が深刻ないま、ディーゼルエンジンを利用しない手はない。排出ガスの有害物質をうまく除去することができれば、空気を汚すことなく、ガソリンエンジンよりもCO2排出量がすくなく燃費のよい、優秀なエコカーであるのだから。
メルセデス・ベンツは2006年8月、クリーンディーゼルを搭載したE 320 CDIをはじめて導入した。ディーゼルへの風当たりの強い日本へ、である。その先代のクリーンディーゼル搭載車は約4,000台が販売されたという。これはEクラスの販売台数の2~3割にあたる。欧州に比べれば、その割合はけっして高くはないが、メルセデスが提示したあたらしいクルマの選択肢に対する期待値、そしてメルセデスによる英断の重要度は高かったはずだ。メーカー数社に日本へディーゼル車を導入しようという動きがあるのも、メルセデスがクリーンディーゼルを認知させたという功績があったからともいえる。
当時話題となった、コモンレールシステム。高圧にした燃料をタイミングよくインジェクターから各気筒に適切な量を噴射する構造である。燃料噴射圧力が高いため、燃料の粒が小さくなり中心部の燃え残りがなくなって粒子状物質の発生を抑えるというシステムだが、その先代から、さらに進化したメルセデスのクリーンディーゼル“ブルーテック”の真価やいかに。
有害物質を無害にする「ブルーテック」の人気のほどは?
メルセデスの「ブルーテック」は、黒鉛をほぼ完全に除去し、NOxの80パーセントを無害な窒素と水に還元するシステム。ディーゼル車のマイナス面を克服した画期的なシステムを搭載したメルセデス・ベンツ E350 ブルーテック アバンギャルドを、今回、編集部では長期レポート車として迎え入れた。ハイブリッドカー、ピュアEVに並ぶエコカーの最先端テクノロジーのひとつとしてクリーンディーゼルに注目し、すでにレポート中のハイブリッドカー プリウスとともに日々の各場面で燃費、乗りごたえなどを総合的に評価していきたいと思う。
では、その「ブルーテック」に対するユーザーの反応とはどのようなものなのだろう? 納車時にご対応くださったヤナセ東京支店の四家(しけ)哲春さんはこう話す。
「多くのお客様から注目していただいております。今回はセダンをお選びいただきましたが、Eクラスではセダンよりワゴンを購入するひとが圧倒的に多いんです。そして、その8割がディーゼルです。ワゴンがあたらしく発売されたタイミングとブルーテックの話題性の相乗効果でしょうか。さらに、減税対象車であることが、ブルーテック搭載車購入への後押しをしているのかもしれませんね」
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メルセデス・ベンツ E 350 ブルーテック アバンギャルド 第1回
話題の「ブルーテック」搭載車、リポート開始! (2)
日本人の“ディーゼル”への抵抗感は払しょくされたか?
それでもやはり欧州よりも、“ディーゼル=悪”という印象が強い日本。抵抗感を感じるひとも多いのではないかと予想されるが?
「やはり、年配の方のディーゼルに対する否定的な考えを消すのは難しいですね。先入観のない若い方のほうが、積極的に興味をもっていただいているようです。とくに、欧州での生活を経験されている方にはすんなりと受け入れられます。それでも、静粛性が確実に向上したので、以前のディーゼル車を知っている方には『変わったね』『いまのディーゼル車はすごいね』と言っていただけます。ただ、認知の面よりも、いまもっとも苦労しているところは価格なんです。触媒やコモンレールはまだまだ単価が高く、エンジン単体では高価にならざるを得ないんです。もっと数が売れるようになれば、価格も抑えられるんですが……。やはり、燃費がよいとか、コスト面ではなく、社会的責任として“環境保護の意識が高い”と標榜するためのひとつの手段として、環境性能搭載車を選ぶかたも多いのではないでしょうか」
メルセデスというブランドを購入するのは、社会的に相応の地位に立つひとである場合が多いと予想される。となると、四家さんが言うように、環境保護意識の標榜という考えにもうなずける。
いま、ブルーテックを買うとお得らしい
さて、その問題となっている価格。実際にはどのくらいかかるものだろうか? まず、E350 ブルーテック アバンギャルドの車体価格は798万円。そして、エコカー減税にて100パーセント免税で40万2000円の補助が受けられる。
2010年9月末まで“新車購入補助金制度”を実施しているので、経年車の廃車を伴わず、平成17年基準排出ガス75パーセント低減、平成22年度燃費基準+15パーセント以上達成の新車であれば、10万円が補助される。廃車を伴う場合では25万円が補助されることになる。
つまり、廃車を伴わない新車購入の場合は50万2000円、13年超の廃車を伴う場合は65万2000円の優遇が実施されることになるのだ。金額で見てみると、いざ購入するさいにはなんとも心強い補助だと言えよう。
環境性能へのさまざまなアプローチ、今後はどうなる?
そんなE350 ブルーテック アバンギャルド、本日納車され、これからレポート車として活躍することになるのだが、では、メルセデス・ベンツの環境性能搭載車はこれからどうなっていくのだろうか。
「Eクラス、Mクラスと、これからも続ぞくとブルーテックが登場します。高速道路走行なら、さらに顕著にスイスイ走るクリーンディーゼル車。試乗された方は必ず驚かれますし、良さをはっきり実感していただけます。環境性能はいろいろありますが、まだインフラが整わないものや、コストがかかり過ぎるなどの問題もありますし、ハイブリッド、ディーゼル、電気、水素、どれかひとつのシステムに集約されることはないと思います。メルセデスとしても、日本のモータリゼーションとしても、全方向的に展開していくことになるでしょうね」
さまざまな環境技術が開発されている現代。デザインや価格、燃費など、そのプラス面とマイナス面を比較し、ベストなものを選べる時代がやってきた。編集部では、おなじく長期レポートをおこなっている環境性能搭載車であるプリウスと、燃費や乗り心地の比較テストを予定している。
E 350 ブルーテックアバンギャルドの初期コスト詳細
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E350 BlueTEC AVANGARDE| E 350 ブルーテックアバンギャルド ボディ|全長4,870×全幅1,855×全高1,455mm ホイールベース|2,875mm エンジン|2,986cc DOHC V型6気筒 最高出力|155kW[211ps]/3,400rpm 最大トルク|540Nm[55.1kgm]/1,600~2,400rpm トランスミッション|電子制御7速AT 価格|798万円 |
※登録諸費用は販売店により異なる場合があります