例え電動化されてもこの形だけは残してもらいたい──直6ディーゼル搭載の新型G350dに試乗|Mercedes-Benz
CAR / IMPRESSION
2020年1月28日

例え電動化されてもこの形だけは残してもらいたい──直6ディーゼル搭載の新型G350dに試乗|Mercedes-Benz

Mercedes-Benz G350d|メルセデス・ベンツG350d

直6ディーゼル搭載の新型G350dに試乗

2018年にフルモデルチェンジを受け、従来の四角いボディデザインを踏襲しつつも、まったく新しいクルマに生まれ変わったメルセデス・ベンツ「Gクラス」。なかでも注目を集める、直列6気筒クリーンディーゼルエンジン搭載のG350dに試乗した。

Text & Photographs by HARA Akira

従来型より400rpm低い回転数から最大トルクを発生

1979年のデビュー直後、軍用車両としてNATO軍に正式採用されたという経歴から分かるように、堅牢なボディと四輪駆動による強力な走破性が魅力の“ゲレンデヴァーゲン”ことメルセデス・ベンツGクラス。四角いボディデザインはそのままに、パワートレインを最新のものに変更しながら40年近く生産が続けられてきた。
2018年には従来型の特徴を引き継ぎつつフルモデルチェンジしたが、型式は「W463」と変更はないのが面白いところだ。そのなかで最も注目を集めているのが、2019年4月に日本デビューを果たした最新の直列6気筒クリーンディーゼルエンジン搭載モデルの「G350d」だ。
型式「OM656」の3.0リッター直列6気筒クリーンディーゼルエンジンは、基本設計をガソリン直6の「M256」と共有化するモジュラーコンセプトで設計され、最高出力286ps(210kW)、最大トルク600Nmを発生。
1,200〜3,200rpmという従来型より400rpm低い回転数から最大トルクを供給できるようになったわけは、2ステージターボチャージャーを使用し、小さいタービンにはさらに可変ターボジオメトリーを採用したからだ。
また、ピエゾインジェクターを使用したコモンレールダイレクトインジェクションシステムは最大圧力2,500barまで高められ、「マルチウェイ排出ガス再循環(EGR)」、排気側可変バルブリフトシステム「CAMTRONIC」、Adblueの添加、sDPF(選択触媒還元法コーティング付粒子状物質除去フィルター)などを採用することで粒子状物質の捕集と窒素酸化物の低減処理を行い、排出ガスを高いレベルで浄化している。

最新のメルセデスに生まれかえったインテリア

トルコンハウジングのアルミ化、ギアハウジングのマグネシウム化などを行なった9G-TORONICトランスミッションは、2.5トンの重いボディにもしっかりと対応。ちなみに0-100km/h加速7.4秒。十分に速い。
プッシュボタン付きのドアノブを握り、厚みが薄く軽いドアを開けると、「チャッ」という筆者が所有するW124型メルセデスEクラスなどと同種の開閉音が聞こえ、「コレこれ」と一人悦に入ってしまう。
高い位置にあるドライバーズシートによじ登るように乗り込むと、そこには最新メルセデス各モデルと同様の2枚のディスプレーを横に並べて1枚のように見える大型スクリーンが鎮座していて、Sクラスのようなステアリングや上質なレザーシートとともに最高級モデルであることを主張している。
ドアを閉めてエンジンに火を入れると、ドアロックの「ガッチャン」という大きな音が車内に響きわたる。ディーゼル音は、新型になって遮音が徹底されたおかげでほとんど気にならなくなった代わりに、そうした別の車内音がより大きく聞こえるようになったのかもしれない。
先代モデルではセンターコンソールにあったシフトレバーだが、新型では他モデルと同じコラム式変速レバー(9段AT)になっている。
Dレンジに入れて走り出すと、先代で感じられたラダーフレームによるトラックのような乗り心地はほとんど影を潜め、落ち着いた挙動と優れた直進性をもつ上質なクルマに変身したことにすぐに気がつく。

全長4,660mm、全幅1,985mm、全高1975mmと意外に小さいボディ

フロントサスペンションを従来のリジットからダブルウィッシュボーンへ、ステアリングをボール&ナット式からラック&ピニオン(乗用車によく使われる)へ変更した点。またエンジンマウントを可変式として低振動化と静粛化を狙ったことが効果を発揮しているようだ。加速感はよりスムーズで、これなら長距離走行でも快適にドライブできるだろう。
こうした洗練は、実は従来形Gの魅力であったある種の懐かしさを奪っているようで、ちょっと寂しい感覚も湧き上がってきた。しかしそれではフルモデルチェンジした意味がない。きちんとした走りを実現することは、自動車メーカーとして当然の対応である。
背高の角ばったボディや、丸目風にLEDでデザインしたヘッドライト、ボンネット左右前端の出っ張ったウインカーライト、大きく張り出した四輪タイヤのフェンダー、左ヒンジの横開き式リアゲートに取り付けられたスペアタイヤなど、現代の安全基準をクリアしながらノスタルジックなデザインをキープしたあたりは、ファンにはたまらないポイントだ。
大きく見えるGクラスのボディだが、実は全長4,660mm、全幅1,985mm、全高1975mmと意外に小さい。価格は1,192万円。今後電動化という話が出きても、やっぱりこの形だけは残してもらいたい。それほど唯一無二の存在なのである。
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