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2021年5月26日
週末のサーキット通いの楽しさを知っている人に──フェラーリF8 トリブートに試乗|Ferrari
Ferrari F8 Tributo|フェラーリF8 トリブート
フェラーリF8 トリブートに試乗
連綿と続くフェラーリV8ミドシップの最新モデルとして2019年のジュネーブモーターショーでデビューしたF8トリブート。モーターアシストのない最後のV8ミドシップ フェラーリと目されている同車にあらためて試乗した。
Text by OGAWA Fumio|Photographs by KAWANO Atsuki
“やっぱりいい”と感心する走り
フェラーリほど”ドリームカー”というたとえばピッタリなクルマはない、と思う。いまはライフスタイルブランドとして、さまざまなユーザーニーズに応えるべく、モデルレンジの拡充に余念のないフェラーリ。それでも、やっぱりミドシップのハイスピードモデルこそ、クルマ好きのドリームだろう。それが「F8トリブート」だ。
フェラーリF8トリブートは、欧州では2019年3月、ジュネーブモーターショー開催のタイミングで発表された。プレス向け試乗会は、同年の秋に、フェラーリ本拠地である中部イタリアのマラネロで。このとき私も訪れた。試乗は、フィオラノなるフェラーリのテストコースと、ボローニャへといたる一般道(山岳路と高速)だった。
そのときは、軽快でパワフル、そしてどんな場所でも取り扱いやすいオールマイティぶりが印象に残った。そして、東京とその近郊で久しぶりに乗ったところ、やっぱりいい、と感心。フェラーリの感想は、こんなに簡単で、すみません。いつだって、“いい”というシンプルな表現こそ、ぴったりなのだ。
全長4,611mmのボディに、530kW(720ps)の3,902ccV型8気筒エンジンをミドシップした後輪駆動。488GTB(2015年)をベースにしながら、ボディを軽量化し(マイナス40kg)、エンジンをパワーアップし(プラス50ps)、そして操縦性を上げるためのデバイスを追加した。
デバイスには、「フェラーリ・ダイナミックエンハンサー・プラス(FDE+)」も含まれる。ドライビングモードで「レース」を選んでいるとき、ブレーキ圧を最適化するシステムだ。コーナリング速度を高める「サイドスリップコントロール」も、性能向上に合わせて最適化された。
さらに、488GTBと比較して、ステアリングホイールの操舵角が同じでもコーナーからの脱出速度は6パーセント速くなっている。ステアリングシステムを見直し、軽いオーバーステア傾向を作りだす。で、同じドライバ−が、2台を乗り較べた場合、488GTBよりF8トリブートの方が、限界近くまで性能を引き出せると謳われる。
エンジンの過回転を防ぐため、通常のクルマにはみなリミッターが装備されている。F8トリブートも例外でない。ただし、「ウォールエフェクト」なるアイデアが採用されたのが特徴だ。
レブリミットは8,000rpm。そこにいたるまで、多くのクルマは段階的に回転に制約を課す一方、F8トリブートでは8,000rpmですぱっとレブリミッターを効かせる。ぎりぎりまで性能を引き出すには、その方がいい、というのがフェラーリの考えだ。
フロントから吸い込んだ空気をボンネット上から吐き出す流れを作り、高速で前輪が浮き上がるのを防ぐ「Sダクト」をはじめ、各所に効果的な空力処理をして高速での安定性を高めたスタイリングは、機能的でありつつ、かつ、他に類のない個性となっている。ミドシップのフェラーリならではだ。
フロントマスクの造型をいじった理由として、フェラーリではたとえばヘッドランプの形状を変更したので、空気の出し入れがよくなり、空力特性が向上したと謳う。全体にわたる空力性能の見直しによって、空力特性は488GTBより10パーセント向上したそうだ。