劇的な進化を遂げた“陸の巡洋艦”──新型トヨタ ランドクルーザーに試乗|TOYOTA
CAR / IMPRESSION
2021年10月6日

劇的な進化を遂げた“陸の巡洋艦”──新型トヨタ ランドクルーザーに試乗|TOYOTA

TOYOTA LandCruiser GR SPORT|トヨタ ランドクルーザーGRスポーツ

TOYOTA LandCruiser ZX|トヨタ ランドクルーザーZX

劇的な進化を遂げた“陸の巡洋艦”

「どこへでも行き、生きて帰ってこられる相棒」。これほどまでにハードな言葉をアピールポイントにしているのがトヨタの本格クロスカントリー「ランドクルーザー」(以下ランクル)だ。ステーションワゴン系と呼ばれる200系から14年ぶりにフルモデルチェンジを果たして300系へと進化した新型に試乗し、その進化の度合いを確かめてみた。

Text & Photographs by HARA Akira

ルーツは軍用車

ランドクルーザーのルーツといえば今から70年前の1951年、当時の警察予備隊(陸上自衛隊の前身)への納入を狙って開発したトヨタ・ジープ「BJ」型だ。強力な3.4リッター直6ガソリンエンジンを搭載した四輪駆動車で、その能力はというと富士山の6合目まで登ることができる(米軍ジープは5合目まで)高性能なものだったが、結果は米軍車両と部品の互換性をもつ三菱製ジープに敗れることに。
ランドクルーザーの祖先となるBJ型
その悔しさをばねにしつつ54年には車名を「ランドクルーザー(陸の巡洋艦)」に変更し、その歴史が始まったのだ。誕生から70年を経た現在のランクルは、BJシリーズの直系となるヘビーデューティの「70系」(海外市場のみの展開)、日常の用途に適したライトデューティの「プラド系」、新型300系が属するフラッグシップの「ステーションワゴン系」の3つとなっている。
ヘビーデューティ系の70系
今回の新型300系は、伝統のはしご型ラダーフレームとそれにマウントしたボディ、リジット式の後輪サスペンション、ハイブリッドなどの電気的な補助を使用しない純エンジン(ディーゼルとガソリン)のパワートレーンを採用するなど、悪路での壊れにくさと、壊れたときに簡単に修理ができたり部品が調達できたりという整備性の良さを最大限に重視したもので構成されている。
14年ぶりにフルモデルチェンジを受けた新型ランドクルーザー。写真はGR スポーツ
ただし、シャーシはTNGAの考え方を取り入れた軽量・高剛性のGA-Fプラットフォームを採用したり、ボディのルーフ、ボンネット、全ドアをアルミ化したり、エンジン取付け位置を70mm後退させるとともに28mm低めたりしたことで、従来型より200kgも軽い低重心かつ前後バランスのとれた車体となっている。ボディサイズは全長4,985×全幅1,980×全高1,925mmのフルサイズだ。

ゆったり感に思わず声が出る走り──ディーゼルのZX

まずお断りしておきたいのは、試乗したのは都内の一般道と、中央高速、圏央道などの高速道路だけ。いわゆるオンロードのみで、オフロード試乗は行っていない。
最初に乗ったのは、ディーゼルエンジンを搭載したZXグレード。新開発の3.3リッターV6ツインターボディーゼルエンジンは、90°のVバンク内にターボユニットを装着したトヨタ初のホットVレイアウトを採用したもので、最高出力309ps/4,000rpm、最大トルク700Nm/1,600〜2,600rpmを発生し、10段のロックアップ付きATで4輪を駆動するシステムだ。
人気車種ゆえ、盗難防止のために初採用した指紋認証式のスタートボタンを押して(試乗車は広報車のため解除してあった)走り出すと、そのゆったり感に思わず声が出るほど。ドライブモードが「コンフォート」や「ノーマル」だと段差を越えただけで大柄な車体が「ふわり、ふわり」と揺れる感じが残る。これは高速に乗っても同じで、「スポーツ」でもまだまだ、「スポーツ+」でやっと収まる、という具合だ。
アクセルを踏み込むとディーゼルらしい音とともに豪快な加速を見せるが、一定速度になると途端に静かで快適な車内となるのは、最新のクルマらしいところ。油圧式に電動アクチュエーターを組み合わせたパワーステアリングにしたことで、悪路走破時のキックバックを低減させるだけでなく、レーントレーシングアシストなどの操舵支援機能を作動させることが可能になっている。実際に直進性は悪くない。エクステリアは、中央が凹んだボンネットや、巨大なフロントグリルが特徴だ。

ZXより引き締まった感覚のGRスポーツ

次に試乗したのは、ガソリンエンジンを搭載した「GRスポーツ」。3.5リッターのV6ツインターボガソリンエンジンは、最高出力415ps/5,200rpm、最大トルク650Nm/2,000〜3,600rpmを発生する強力なもので、トランスミッションは同じくロックアップ付きの10段ATを採用している。
エクステリアは、ホワイトレターのTOYOTAロゴがフロントグリルに装着され、ホイールアーチやサイドミラーをブラックとしたスポーティなもの。タイヤはオフロード走行に有利なようにZXより2インチダウンした18インチとなり、そのホイールはラリー車をイメージしたマットブラックに塗装されている。インテリアも、「GR」のロゴ入りフロントシートや専用ステアリングなどで差別化されている。
オンロードでの走りは、ZXより引き締まった感覚だ。GRスポーツ専用装備となるE-KDSS(Electric-Kinetic Dynamic Suspension System)がスタビライザー効果を調整しているせいか、ドライブモードを「スポーツ」に入れてやれば、例の“ゆさゆさ”がほぼ収まってしまう。ガソリンエンジンの静かで軽快な回転感覚と、アクセルと車体の動きがうまくリンクしていて、これならロングドライブも楽々こなすことができそうだ。
またGRスポーツにはリアだけでなくフロンのデフもロックできる機構がついていて、オフロードでの走りにも磨きがかかっている。ディーゼルモデルは5人乗り仕様しか選択できないのに対して、ガソリンモデル(GXを除く)は3列7人乗り仕様となっている点は、購入時の判断基準の一つになるところだろう。
まあ、ZXでも感じられたオンロードでの車体に揺れは、ラダーフレーム車ならではの特性のようなものであり、トラック的な乗り味が残っていた先代に比べてみるとその度合いは劇的に改善されている。また、逆にいえばオフロードでの優れた走行性能の裏返しであるということだ。アプローチアングル、ランプブレークオーバーアングル、デパーチャーアングルなどの優れた対地障害角は先代と全く変わっておらず、まだ未体験の数々のオフロード機能を駆使して荒野に乗り込んでみれば、さすがはランクル、という話になるのだろう。
中東、アフリカ、豪州など、世界の道なき道で長きにわたって活躍するランクルは、新型になっても使われ方は変わらないはず。人気はすでに沸騰中で、日本では今オーダーを入れても手に入るのは数年かかると言われているほどだ。価格も510万円からとライバルに比べて十分にリーズナブル。カタログをじっくりと眺めてオーダーを入れ、納車をのんびりと待つというのも「それもまた楽し」である。
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