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IMPRESSION
2021年8月20日
円熟の域にある究極のハンドリングマシン──ルノー メガーヌR.S. に試乗|Renault
内燃機関のFFとしてその道を究め尽くした感さえある
ところが、実際にワインディングを走ってみると、前期型の279ps仕様とは明らかに動的質感が変わっていた。どういうことか。
トルクやパワーの力強さも、前期型より明らかに一枚上手だが、実際の速度以上にそう感じさせるのは、新たに加わったアクティブバルブ式のスポーツエキゾーストの効果が大きい。パワフルな分、前期型よりも多少なりとも高い速度域に入っているはずだが、シャシー・スポールにはそれを難なく受け止める奥行きの深さに加え、上下方向に荒れない乗り心地のよさもある。そこへ野太くてキレのいいエキゾーストが響くことで、操っている実感がブーストされるのだ。
ハンドリングについては、適度なストロークによるしなり感がありながら、剛性感たっぷりに反応する前車軸の動きが印象的だ。左右に切り返す場面で、中立付近で曖昧になる感触がなく、しっとりと路面を捉え続ける。
4コントロールこと4輪操舵についても、制御プログラムがさらに洗練されたか、逆位相に入るような低速コーナーでの後車軸の動きがより自然になったように感じられる。前期型ではフロントが切れ込んでいくと後車軸が明らかに外へ回り込む挙動を、腰まわりにスーッと感じたものだが、体感的には後車軸が前車軸に追従するようになった。
中高速コーナーで後輪が同位相に切れる際も、4輪が平行移動するのではなく、ややうねりのようなアンギュレーションを伴って内側に切れ始める感覚が強まった。それでもトレッドの外側寄りで踏んばるというより、真ん中近くで路面をしかと掴んでいる感触が優るし、限界の高さたるやようとして知れないのだが。
4輪操舵は今や多くのハイエンドなスポーツモデルが採用するが、FFではメガーヌR.S.くらいのもの。駆動と操舵という前輪に負担が集中しやすいFFの弱点を、ほとんど完璧なまでに消し去っているどころか、小気味よいパワートレインと強靭で正確無比のシャシーと組み合わせながら、恐ろしくよく曲がる。しかもミズスマシ的なクイックさを強調するのではなく、鮮烈でいて素晴らしく対話しやすいハンドリング・マシンに仕上がっている。
内燃機関のFFとしてその道を究め尽くした感さえあるが、フランケンシュタインじみた怪物ではなく、意志をもって操ろうとするドライバーにあくまで優しい。マイナーチェンジを受けたメガーヌR.S.は、まさしく円熟の域にある。
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