5ドアとなったミニに試乗|MINI
MINI 5 door|ミニ 5ドア
5ドアのミニに試乗
第3世代となったMINIに、第2のボディバリエーションとして登場したのは、ホイールベースを伸長してリアドアをそなえた5ドアモデル。日本でもつい先日予約が開始されたばかりのこの「MINI 5ドア」に、九島辰也氏がミニの故郷ともいえるオックスフォードで試乗した。余裕ある後席空間を得た5ドアモデル、その“MINIらしさ”はどうなのか。
Text by KUSHIMA Tatsuya
違和感なく受け入れられる
今年のジュネーブショーで、ミニはちょっと変わったコンセプトカーを出していたのをご存知だろうか。その名は「クラブマン コンセプト」。誰もが次期クラブマンと思ったソレだ。
だが現実にはちがった。目の前に現れたのは「MINI 5ドア」。ハッチバックをストレッチしリアドアとじゅうぶんな居住スペースを確保したパッセンジャーカーである。
そのディメンションはホイールベースをハッチバックより72mm広げたもの。全長は3,982mm(クーパーSとクーパーSD5ドアは4,005mm)、全幅は1,727mm、全高は1,425mmとなる。頭上も15mm広げた。
そんな“新種”に、ミニの本拠地オックスフォード郊外で乗った。世界中からメディアを集めた国際試乗会である。果たしてストレッチされたボディはどうなのか、気になるところである。
まず展示された5ドアを目視して、アレっと思った。意外に違和感なくスッと受け入れられたからだ。確かにすでにクラブマンがあるのだから当然と言えば当然。ストレッチされたボディになじみはある。だが、しばらく眺めていると角度によってはそうでもない気がしてきた。リアのメッキ加工されたドアノブが目立って少々違和感を得る。見慣れるとそうでもないのだろうが、このキラキラが気になるのも確かだ──。
そんなリアのドアノブを握って中へ入る。広い。72mmそのままリアシートの足下を広げたとあって、窮屈なところはない。フロントシートのバックレスト裏側がえぐれているのも好都合。膝がシートに当たることはなかった。
MINI 5 door|ミニ 5ドア
5ドアのミニに試乗 (2)
ゴーカートフィーリングも健在
リアシートは3人用だが、オトナ3人横並びというのは正直厳しい。座ろうとすれば座れるが、肩が当たるのは避けられない。その点からするとこいつはオトナ2人がいい塩梅だろう。
ついでに乗り心地を先に述べておくと、すこぶるいい。もう少し硬くて振動もそれなりにあると思ったがそうではなかった。最近のドイツ車はかなり硬めの傾向が強いので、それなりに覚悟していたがどうやら肩すかしされたようだ。英国郊外にあるバンプを通過するときもガタン!といった突き上げはない。
この部分にかんして開発陣に話をうかがったところ、リアサスペンションは苦労したという。ハッチバックとはことなるダンパーとバネレートで仕上げたというが、単純に硬くしたり柔らかくしたりするのではなかったそうだ。全体のバランスで最終的にセッティングを決めた、という。
なるほど……と思いながら、ついでに“ゴーカートフィーリング”についてもおなじことを聞いた。ゴーカートフィーリングとは、ミニが備える機敏で気持ちのいいまるでゴーカートのようなハンドリングのことである。
すると、それも感覚的なところが強いと語った。確かに一定の基準となる数値はあるが、それを達成すれば出来上がりではないのだそうだ。うむ、深い。
その“ゴーカートフィーリング”だが、もちろん5ドアでも見事に再現されていた。ステアリングに対するタイヤの応答性はクイックで、スッと向きを変えリアもしっかりそれに追従する。そのときのタイムラグはほぼなく、ハッチバックと変わらない。しばらくステアリングを左右に動かしながらワインディングを楽しんでいると、5ドアであることを忘れていたほどだ。
MINI 5 door|ミニ 5ドア
5ドアのミニに試乗 (3)
日本とも縁深いミニの5ドア
試乗車は「クーパーS」。17インチのP-zeroを履いていた。その意味じゃリアの粘りもそうだし、スタビリティの高さはここでもうかがえる。それに見た目もかっこいい。ただ16インチに履き替えたらさらに乗り心地はよくなると察せられる。「ワン」あたりを日本で乗るのが楽しみだ。
次にエンジン。192psの2リッター直4ターボは速い。トルクもあって全スピード域において余裕を感じる。BMW製ダブルVANOS効果も相当高い。よってステアリング上にパドルシフトが備わっていても、ほとんど使う場面はない。エンジンブレーキ用にちょっと大げさにシフトダウンするくらいだ。
グレードは全部で6つ。ガソリン3つとディーゼル3つというラインナップはハッチバックとおなじ。ただ、残念なことにディーゼルモデルは今回も導入されない見込みだ。クロスオーバーのそれがひとつのきっかけになる可能性はあるものの今回はなし。あたらしい世代のディーゼルユニットだけに期待したいところではある。
といったミニ5ドア。日本では5ドア需要が高いのできっと注目を集めるだろう。「ゴルフ」や「ポロ」がそうであるように。
話は変わるが、クラシックミニの時代にも5ドアはあったという説を現地で耳にした。60年代当時日本に向けられ製造されたそうだ。それを船で送ったが、途中時化(しけ)に遭いすべて壊れてしまったという。いまや資料はなにも残っていないが、当時のスタッフが写真を2枚だけ持っていた、というのだ。
まぁ、なんとも奇妙は話ではあるがそんな逸話が残るのもミニらしいといえばミニらしい。この5ドアもあらたな都市伝説をつくることを期待しよう!
MINI Cooper S 5 Door|ミニ クーパー S 5ドア
ボディサイズ|全長 4,000 × 全幅 1,725 × 全高 1,445 mm
ホイールベース|2,565 mm
重量|1,320 kg
エンジン|1,998cc 直列4気筒 DOHC MINIツインパワーターボ
最高出力| 141 kW(192 ps)/ 5,000 rpm
最大トルク|280 Nm /4,600 rpm
最大トルク(オーバーブースト時)|300 Nm / 4,600 rpm
トランスミッション|6段ステップトロニック付AT
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソン ストラット式
サスペンション 後|マルチリンク式
タイヤ 前/後|195/55R16
0-100km/h加速|6.8 秒
最高速度|230 km/h
トランク容量|278 リットル
燃費(JC08)|16.4 km/ℓ
価格|350万円