7代目の新型コルベットに試乗|Chevrolet
Chevrolet Corvette|シボレー コルベット
60年目の生まれかわり
7代目の新型コルベットに試乗
コルベットが生まれかわった。誕生60周年の節目に登場した7代目コルベットは、本国では“コルベット スティングレイ”と名称を変更するほど、意欲的なフルモデルチェンジだ。その変化はもちろん名前だけではない。見まごうことなき“コルベット”を主張するエクステリアデザインも先代とは大きくことなり、それ以上にその中身は最新のテクノロジーへと一新された。日本では夏から予約が開始され、12月に正式に発表。デリバリー開始は4月からとアナウンスされたが、西川淳氏が一足先にC7こと新型コルベットに試乗。その進化を本国で体感した。
Text by NISHIKAWA Jun
伝統を引き継ぎながら、あたらしい世代へ
7世代目へと進化した、アメリカ人の“魂のスポーツカー”コルベット。生誕60周年の“還暦”をむかえた今年、まさに、生まれかわった。大変身をはたし、あらたな歴史を刻みはじめたのだ。
変化への強い意思は、最新のレーシング エアロダイナミクス技術をもちいて、ウルトラモダンに仕上げたスタイリングにあらわれている。C4(4代目)からC6(先代にあたる6代目)までつづいた、ワイド&ローなイメージを一新。“より低く&より長く”をテーマに、C3を彷彿とさせるダイナミックなフェンダーラインを特徴としたスポーツカースタイルとした。過去3世代の個性であったラウンド型ハッチゲートも、パフォーマンスの向上、ひいてはレーシングシーンでの活躍を期待して、積極的に捨て去った。
とはいえ、だれが見てもあたらしいカタチでありながら、きっちりコルベットにみえてくる。そう、これは“スティングレイ”なのだ(日本では諸事情で名乗れないが)。
インテリアも、見栄え質感の向上が著しい。ドライバーズシートは完全コクピットスタイルとし、フルラップレザーのダッシュボードフェイシアで囲んでいる。レザーはもちろん、アルミニウムやカーボンファイバーといった高級マテリアルを惜しみなく投入することで、ぐっと高級な仕立てになった。まさにワールドクラスの高級スポーツカーのインテリアで、そのあでやかさでは、イタリアンスーパーカーにだって引けをとらない。
Chevrolet Corvette|シボレー コルベット
60年目の生まれかわり
7代目の新型コルベットに試乗 (2)
最新の装備を満載
ドライビングモード セレクターのダイヤルがセンターコンソールにあった。ついにコルベットにも、先進の電子デバイスが導入されたのだ。それだけ、ダイナミックパフォーマンスが高いレベルに達したということだろう。
モード選択は5種類だ。ウェザー、エコ、ツアー、スポーツ、そしてトラック。デフォルトはツアー。モードに合わせて、ステアリングアシスト、スロットル開度、燃料マネージメント、エグゾーストモード、マグネティックライド(オプション装着車)、トラクションコントロールにスタビリティコントロール、そして、メーターディスプレイの組み合わせがかわる。
エンジンは“LT1”6.2リッター可変バルブ直噴V8エンジンを積む。最高出力は460psとなり、最大トルクにいたっては“LS7”7リッターV8の実用域トルクとおなじ数値、640Nmを得た。注目は、気筒休止システムを採用して燃費性能の向上を狙ったこと。気筒休止時、すなわちV4状態では、126ps/300Nm。およそ100マイル/時(161km/h)までが可動域だ。
組み合わされるトランスミッションは、6段ATと7段MT。後者には、独自のシンクロレブコントロール機能がそなわっている。
最新のパワートレインを積み込むボディフレームも今回、オールアルミニウムフレームに一新されている。従来用にくらべ45キロ軽く、57パーセント硬い。ちなみに、エンジンフードとデタッチャブルトップはCFRP製で、こちらも軽量化に役立っている。
Z51パッケージの存在も忘れてはいけない。エンジンをドライサンプ化、ノーマルの機械式LSDにかえてeデフ、35ミリのショックはマグネティックライド装備可能な45ミリモノチューブショックに、さらには大口径ブレーキローター、インチアップタイヤ&鍛造ホイール、という、贅沢なセットオプション内容になっている。
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7代目の新型コルベットに試乗 (3)
世界最高レベルのFRスポーツカー
ノーマルの6AT、Z51の6AT、そしてZ51の7MTを試乗したが、もっとも好印象だったのは、Z51のAT仕様だった。
まず、ノーマルとZ51とでは、過激さがまるでちがっていた。Z51に乗ったあとにノーマルATに乗ると、まるで高級サルーンのように感じてしまう。乗り心地は上質で、パフォーマンスの印象も穏やか、上質なグランツーリズモといった風情だ。
いっぽうの、Z51はといえば、これがもう相当にスパルタンなシロモノだった。「ちがうクルマに乗ったのか?」と思ったほど。なかでも、トラックモードを選択すると、エンジンのざらつきが増し、サスはビシッと固まって、ボディはひとまわりりも小さくなったようにおもえてしまう。フラット&ハードな走りっぷりは正真正銘に世界最新最高レベル。オプションシステムが放つ強烈なエグゾーストノートは、まさにアメリカンマッスルだ。
もちろん、ライドモードセレクターでツアーやエコを選んでおけば、それなりにコンフォートなライドフィールをみせてはくれる。
逆に、Z51さえ知らなければ、ノーマル仕様だって、以前にくらべると、その走りはかなりのリアルスポーツカーで、満足度は高い。Z51が凄すぎただけ、である。
Z51の6MT仕様でも、迫力の様子はおなじである。パドルシフトがそのまま残っていて、引くとシンクロレブ機能が働く。マニュアルギアの操作感は、相当に気持ちがいい。まだまだ進化していると知って、うれしい限り。マニュアルで強力なV8エンジンを操るたのしみは、たしかに捨てがたいとおもう。
ただ、ここまでハイパワーになってしまうと、忙しくMTを操作すること自体、気をつかってしまうし、そのうち操作が億劫になってしまう。
個人的には機械とつながる感じは捨てがたい。しかし、冷静に振り返ってみて、ハンドリングに集中しながら、その高いエンジン&シャシーパフォーマンスを存分にたのしめたという点で、AT仕様に軍配を上げたい。
新型コルベットは世界最高レベルのFRスポーツに仕上がっている。歴代コルベットとの最大のちがいは、クルマが小さくまとまって感じられること。たとえば、最新のジャガー「Fタイプ」やポルシェ「911カレラS」と比較しても、乗りアジやパフォーマンスはおなじ土俵レベルにあるし、ドライバーの腕次第では、フェラーリ「F12」にさえ肉薄できる性能をもっているのだ。
Chevrolet Corvette Coupe|シボレー コルベット クーペ
ボディサイズ|全長 4,495 × 全幅 1,880 × 全高 1,230 mm
ホイールベース|2,710 mm
エンジン|6,153cc V型8気筒 直噴OHV
ボア×ストローク|103.2×92.0 mm
最高出力| 339 kW(460 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|624 Nm(63.6 kgm)/ 4,600 rpm
トランスミッション|6段AT / 7段MT
駆動方式|FR
サスペンション 前|ダブルウィッシュボーン式
サスペンション 後|ダブルウィッシュボーン式
タイヤ 前|245/40R18
タイヤ 後|285/35R19
価格|(6AT)929万円 (7MT)918万2,000円
Chevrolet Corvette Coupe Z51|シボレー コルベット クーペ Z51
ボディサイズ|全長 4,495 × 全幅 1,880 × 全高 1,230 mm
ホイールベース|2,710 mm
エンジン|6,153cc V型8気筒 直噴OHV
ボア×ストローク|103.2×92.0 mm
最高出力| 343 kW(466 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|630 Nm(64.2 kgm)/ 4,600 rpm
トランスミッション|6段AT / 7段MT
駆動方式|FR
サスペンション 前|ダブルウィッシュボーン式
サスペンション 後|ダブルウィッシュボーン式
タイヤ 前|245/35R19
タイヤ 後|285/30R20
価格|(6AT)1,099万円 (7MT)1,088万2,000円
※スペックは日本仕様。価格は8パーセントの消費税込み