ルノー ルーテシア RS にフランスで試乗|Renault
CAR / IMPRESSION
2015年4月7日

ルノー ルーテシア RS にフランスで試乗|Renault

Renault Clio R.S.|ルノー ルーテシア R.S.

ルノーコンパクトハッチのスポーツモデル

フランスでルーテシア R.S.に試乗

2012年のパリモーターショーでフルモデルチェンジを果たした、ルノーのコンパクトハッチバック「ルーテシア」。2010年に発表されたコンセプトカー「ルノー デジール」を手がけた、ローレンス・ヴァン・デン・アッカーのデザインとなり、近年のルノーのコンセプトカーのディテールを随所に受け継いだデザインとなった。日本でももう間もなく登場となるこの新型ルーテシアにラインナップされる「RS」は、ルノーのモータースポーツ部門である「ルノー・スポール」が手掛ける、ルーテシアでもっともホットバージョン。新型ルーテシア発売後、日本でも少し遅れてラインナップされるであろうこの「RS」に、ひと足早く、大谷達也氏がフランスで試乗。レポートが到着した。

Text and Photographs by OTANI Tatsuya

ルノーデザインはあたらしい時代を迎えた

ヨーロッパでは「ルノー クリオ ルノー スポール 200 ターボ EDC」のモデル名で発売されたこのハッチバック スポーツモデル、日本ではオトナの事情で「クリオ」とは呼べずに「ルーテシア」となるが、基本的にクリオとルーテシアは同一車種だとおもっていただいて間違いない。

その新型「クリオ」だが、実車を目の前にしてすぐに感じるのが、「ああ、ルノーデザインはあたらしい時代を迎えたんだな」ということ。

ルノーのあたらしいチーフデザイナー、ローレンス・ヴァン・デン・アッカーは、2010年のパリサロンでコンセプトカー“デジール”を発表したが、あたらしいクリオはまさにあのダイナミックで肉感的なイメージを受け継いでいる。

まるでフェルナンド・アロンソの一本につながった太い眉毛をおもわせるフロントグリルのデザインも、いくつもの尾根が重なりあわせることでスポーツ選手の筋肉のような力強い曲面を描き出すボディサイドも、デジールとクリオで共通する特徴だ。

Renault Clio|ルノー クリオ Renault De Zir|ルノー デジール

Renault Clio|ルノー クリオ(左) 
Renault De Zir|ルノー デジール(右)

かわったといえば、新型クリオR.S.(と、ここからはそう呼ばせていただく)は従来型の3ドアから5ドアにかわったところも目あたらしい。5ドア“も”用意されるのではない。5ドア一本になったのだ。

もっとも、リアドアはアルファロメオ 「ジュリエッタ」のようにボディフォルムのなかにきれいに溶け込んでおり、5ドアであることを強くは主張しない。

つまりクーペスタイルを壊していないのだが、それでいながら5ドアならではの「ドア長の短さ」を実現している。これは幅方向の余裕があまりない駐車スペースに停めている人々にとって、間違いなく朗報であるはずだ。

Renault Clio RS|ルノー ルーテシア RS

Renault Clio RS|ルノー ルーテシア RS

そうしたデザインの考えかたはあきらかに新世代のものだが、それでいながらあたらしい「クリオR.S.」から感じられる“体温”は、現行型の「クリオ R.S.」や「メガーヌR.S.」とまったくおなじようにも感じられるから不思議だ。

この辺はうまく言葉で表現できないが、スポーティさを表現する手法に、新型と現行型でおなじ匂い、おなじテイストを感じ取ってしまう。「ということは、ドライビングフィーリングも従来型のクリオR.S.やメガーヌR.S.とおなじように、飛びきり熱いのか?」 そんな期待を抱きつつ、私はクリオR.S.のコクピットに乗り込んだ。

Renault Clio R.S.|ルノー ルーテシア R.S.

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フランスでルーテシアR.S.に試乗 (2)

時代の流れに沿って変身

エンジンを掛ける前に、このクルマのスペックを簡単におさらいしておこう。

新型のスリーサイズは4,095×1,750×1,445mm。ホイールベースは2,589mmで、車重は1,204kgと発表されている。いずれもヨーロッパ仕様値ゆえ、日本のカタログ値との単純な比較はできないけれど、現行型に比べると全長が70mm長く、車幅は約30mm広くなったが、車高は約40mmと、大幅に低くなった。いっぽうでホイールベースは5mm微増。

こうした変更からは、前面投影面積を小さくして空気抵抗を抑えることで低燃費化を実現しようとする意図と、居住空間はホイールベースの延長およびパッケージングの工夫で現状維持もしくは改善を図ろうとしたコンセプトがうかがえる。

Renault Clio RS|ルノー ルーテシア RS

Renault Clio RS|ルノー ルーテシア RS

パワートレーンにくわえられた変更は、さらに大胆なものだ。

まず、エンジンは従来型の2.0リッター 直4 自然吸気エンジンから、新型は1.6リッター 直4 直噴ターボエンジンに置き換えられた。なお、最高出力は先代の202psにたいして200psと互角だが、最大トルクは215Nm(21.9kgm)から230Nm(23.5kgm)へと、より増強されている。

それ以上に印象的なのはトルク特性がフラットになったことで、1,750rpmから5,600rpmまで一定の値を保つ。いわば、近頃のダウンサイジング エンジンにありがちなキャラクターといえる。

もうひとつ忘れることができないのが、ギアボックスがデュアルクラッチ式の6段ATとされたことだ。しかも、マニュアルは用意されず、このATのみがラインアップされる。いうまでもなく、デュアルクラッチ式トランスミッションの採用はルノー・スポールとしてはじめて。いくら時代の流れとはいえ、こうした変更がクルマの乗り味にどう影響したかも、気になるポイントのひとつといえる。

Renault Clio R.S.|ルノー ルーテシア R.S.

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フランスでルーテシアR.S.に試乗 (3)

色気はもう少しあってもいい

センターコンソール上のイグニッションボタンを押し込んでエンジンを始動する。エンジン音は、意外にも静か。個人的には、周囲に迷惑をかけない音量が好みなので、この段階で好感度はぐっと増した。そのいっぽうで「これはあまり辛口ではないかも?」というかすかな不安が心をよぎる。

まずはオートマチックモードのDレンジを選んで走りはじめる。クラッチのつなぎかたは滑らかで、ガクガクせずにすっと動き出す。しかも、歩くような速度でクリオRSを走らせていると、路面のゴツゴツ感がほとんど伝わってこない。

Renault Clio RS|ルノー ルーテシア RS

Renault Clio RS|ルノー ルーテシア RS

そこから30~40km/hくらいまでスピードを上げると、ストローク量が小さな領域ではダンパーの減衰率が比較的低めに抑えられていることがわかる。おかげで、クルマがポンポンと弾むことなく、むしろどっしりと落ち着いた乗り心地をしめす。実にオトナっぽく、快適な足まわりだ。

つづいてギアボックスのマニュアルモードを選び、シフトアップ、シフトダウンを繰り返しながらパリ市内を走り抜ける。

大きめのパドルシフトは操作感も上々。聞けば、アライアンスを組む日産の「GT-R」から譲り受けたものだとか。ずいぶん、ぜいたくなパーツが使われているものだ。

このギアボックスは、多少いじわるな操作を試してみてもほころびを見せなかった。弱点があるとすれば、パドルを操作してから実際にギアチェンジするまでにややタイムラグがあることだが、それを除けばシフト動作そのものは素早く、しかもショックが感じられることもない。第一作目としては高い完成度といえるだろう。

Renault Clio RS|ルノー ルーテシア RS

最高出力200psのエンジンは1,204kgのボディを軽々と加速させるが、フラットトルクのせいか、強いドラマ性を感じさせる部分はない。力量としては文句なし。ただし色気はもう少しあってもいい、という印象である。

Renault Clio R.S.|ルノー ルーテシア R.S.

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フランスでルーテシアR.S.に試乗 (4)

快適で落ち着きのあるホットハッチ

今回はパリからオートルートに乗ってランスを目指した。その隣町のギーには、戦前から1960年代にかけてフランスGPを開催していたサーキットが残っている。

公道を利用したシンプルなレイアウトが特徴で、1954年にはメルセデスがスポーツカーのようなスタイルのF1マシン「W196」を投入し、そのすぐれた高速性能により1-2フィニッシュを果たしたコースとして知られる。

Renault Clio RS|ルノー ルーテシア RS

Mercedes-Benz W196|メルセデス・ベンツ W196

Mercedes-Benz W196|メルセデス・ベンツW196

途中のオートルートでもクリオRSは現行メガーヌRSとはくらべものにならないほどソフトな乗り心地をしめし、筆者を驚かせた。ただし、微少ストローク域でダンパーの減衰率を抑えた設定が災いしているのか、ボディがピクリとも動かないフラット感を生み出すまでには至っていない。

オートルートを走っているときのステアリングの座りも、外乱が入るとわずかに修正する必要性に迫られる。どちらも、従来のルノー車とは微妙にことなる味付けだ。

肝心のハンドリングは、ランスの街中を軽く飛ばした程度なので明言はできないが、全般的にほどよい軽快感が味わえた。

ステアリングをすっと切った瞬間にノーズがスパッとインを向くというほどではないが、快適な乗り心地に見合った、素直で扱いやすいキャラクターだとおもう。

Renault Clio RS|ルノー ルーテシア RS

ただし、装着していたタイヤ(205/40R18のダンロップ スポーツMAXX RT)のせいなのか、コーナリングスピードの限界はさほど高くなく、最終的にはリアがゆっくりと滑り始める。したがって、本物の腕利きには物足りないとおもわれるかもしれないが、ビギナーにはほどよい設定だろう。

テストの環境が限られていたため、あまり歯切れのいい話ができなくて恐縮だが、4代目のクリオRSはサイズに似合わず快適で落ち着きのあるホットハッチであるようにおもわれた。それは、スタイリングに表れているとおり、そしてパワートレーンが一新されたことでもわかるように、ルノースポールのクルマづくりがあたらしい時代を迎えたことをしめしているのかもしれない。

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Renault Clio R.S. 200 EDC|ルノー ルーテシア R.S. 200 EDC
ボディサイズ|全長 4,090×全幅1,732×全高1,432 mm
ホイールベース|2,589 mm
トレッド 前/後|1,504 / 1,500 mm
最低地上高|120 mm
トランク容量(VDA値)|300-1,146 リットル
重量|1,204 kg
エンジン|1,618 cc 直列4気筒 直噴DOHCターボ
圧縮比|9.5 : 1
ボア×ストローク|79.7×81.1 mm
最高出力| 147kW(200ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|240Nm/ 1,750 rpm
トランスミッション|6段デュアルクラッチ(EDC)
駆動方式|FF
タイヤ 前/後|205/45R17 / 205/45R17
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
最高速度|230 km/h
0-100km/h加速|6.7 秒
燃費(欧州値)|6.3 ℓ/100km
CO2排出量|144 g/km
燃料タンク容量|45 ℓ
価格|24,990 ユーロ

           
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