最強のアルファ ジュリエッタに試乗|Alfa Romeo
Alfa Romeo Giulietta Quadrifoglio Verde|
アルファロメオ ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ
栄光の四つ葉をまとう最強のアルファ
ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ に試乗
アルファロメオのCセグメントハッチバック「ジュリエッタ」。そのなかでも、先日発表されたコンパクトスポーツカー「4C」とおなじ1.75リッターターボ エンジンを搭載し、MTのみという硬派なモデルが「クアドロフォリオ ヴェルデ」だ。このジュリエッタは、伝統の“四葉のクローバー”を名乗るにふさわしいか。櫻井健一氏が試乗して確かめた。
Text by SAKURAI KenichiPhotographs by NAITO Takahito
アルファロメオの栄光を受け継ぐトップグレード
伝統的にアルファロメオの高性能モデルに付けられる“クアドリフォリオ”のネーミングが、四つ葉のクローバーを意味することはよく知られる事実だ。1923年にタルガ・フローリオで優勝したレーシングマシンに付けられていたのがその起源とされ、四つ葉のクローバーをモチーフにしたエンブレムを市販車ではじめて採用したのが「アルファ 1750 GT」である。今から40年以上も前の1967年のことだった。
過去には「アルファ スパイダー」や「アルファ スッド」、「164」、「155」、「145」、最近では「ミト」の上級バージョンにもその名が与えられている。164など1980-90年代のモデルでは、一時期は“ヴェルデ”を省略していたが、ポジションは変わらず、トップモデルもしくは高性能バージョンをあらわしていた。
現在、アルファロメオ「ジュリエッタ」は、スプリント、コンペティツィオーネ、クラシカ、スポルティーバ、クアドリフォリオ ヴェルデの5グレードをラインナップし、スプリント、コンペティツィオーネ、クラシカ、スポルティーバが最高出力170psの1.4リッター 直4 マルチエア16バルブターボエンジンを搭載するのにたいして、クアドリフォリオ ヴェルデは、最高出力235psの1.75リッター 直4 DOHCインタークーラー付きターボエンジンを唯一搭載する。
この1.75リッターエンジンは1,742ccの総排気量から、かつての1750 GTの再来といわれる。クアドリフォリオのネーミングもそうだが、アルファロメオは過去のネーミングや遺産の使い方にたけており、長い歴史とスポーツカーづくりの伝統を、ファンに上手くアピールできていると感じる。
クルマが売れなくなると、あっさり車名を変えるメーカーが多い中で、アルファロメオは、自らの歴史にしっかりと敬意を払っているともいえそうだ。
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アルファロメオ ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ
栄光の四つ葉をまとう最強のアルファ
ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ に試乗 (2)
高いポテンシャル
クアドリフォリオ ヴェルデに搭載される伝統的な排気量とネーミングを持つ1750 直噴ターボエンジンは、すでに紹介しているとおり最高出力235ps/5,500rpm、最大トルク300Nm(30.6kgm)/4,500rpmというスペック。
アルファロメオ「ミト」でおなじみのD.N.A.システムでダイナミックモードを選択し、過給圧を上げると、最大トルクは340Nm(34.7kgm)/1,900rpmに向上する。過給器付きとはいえ、リッターあたり135psのパワーと19.8kgmのトルクは、かなりのポテンシャルである。
足まわりはクアドリフォリオ ヴェルデ専用のスポーツサスペンションと、シリーズ中もっとも大きな225/40R18サイズのタイヤを、専用のホイールとともに装着。
ベースグレードのスプリントから2インチアップとなるタイヤサイズであっても、決してバタバタすることなく余裕を持ってはきこなす。
フィンデザインのブラックカラーホイールやツインエキゾーストパイプも、スポーティなキャラクターにあったチョイスだとおもえるアイテムだ。
ファミリーカーでも通用するといったら大げさか
6段のマニュアルシフトのみを採用するクアドリフォリオ ヴェルデは、ノーマルモードでも低速からトルクが豊かで、D.N.A.システムを使用せずとも、じゅうぶんスポーティな加速性能を持っている。ステアリングの操舵感は正確だが軽く、少々硬めな乗り心地も気になるほどではない。
まるでファミリーカーを運転しているような、といったら大げさかも知れないが、今時は少しハードルの高い、クラッチが少しだけ重いマニュアルトランスミッションであるという点を除けば、コンパクトなサイズとじゅうぶんに実用的な室内から、快適なCセグメントハッチバックモデルにしかおもえない。
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ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ に試乗 (3)
アルファロメオのスポーツカーだ
しかし、D.N.A.システムをダイナミックモードにし、アクセルを踏み込めば、スポーツカー顔負けの加速Gが、ドライバーを襲う。エンジン、トランスミッション、ステアリング特性がすべてスポーティでハードな設定となり、このジュリエッタが特別なエンブレムを備えるモデルであったことを思い出させる。力強い加速フィールは、脳内からドーパミンがドバドバ出ているかのごとく快感を促し、ドライビングも自然とアグレッシブになる。
かつてのように、トルクステアで悩まされることはないが、エレガントな容姿に似合わないパンチの効いた走りは、イタリア物=ファッションと考える向きには、少し荷が重いかもしれない。
けれど反対に、アルファロメをスポーツカーブランドと捉え、走りをまっとうに楽しみたいというハードコアな層には、これほどジャストフィットするグレードもほかにはないだろう。アクセルへの反応、ステディなステアリングフィール、体と一体化するクルマの挙動。そのどれもが、スポーツカーそのものである。
しかし、その気にさせる時間はおもいのほか短い。
1750エンジンは、あっという間にタコメーターの針を踊らせ、レブリミットに達する。レッドゾーンを迎える6,000rpm手前で加速は頭打ちになる。ここですぐにギアを上げなければ、強烈な加速感は持続しない。
しかし、そうこうしているうちに車速は法定速度の許容範囲をあっさり超えてしまうので、ATでなかったことをありがたいとおもうのはこの時である。ATやアルファロメオ自慢のTCT(乾式デュアルクラッチ トランスミッション)といった自動変速でシームレスに湧き出るトルクを楽しんでしまうと、公道では運転免許証が何枚あっても足りなくなるからだ。加速を味わえる時間は短いが、MTが変速時に自制心を取り戻すチャンスを与えてくれると好意的に解釈するしかない。
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ジュリエッタのアドバンテージ
法定速度の範囲内でも、タービンの動きを感じながら下からモリモリと涌き上がるトルクを操る楽しさを十二分に味わえる。
高回転型のエンジンのような官能的ともいえるサウンドやドライブフィールはないが、じゅうぶんドラマを持ったエンジンであると紹介できそうだ。回して楽しいNAエンジンとタイプはことなるが、ターボにはターボのドライビングプレジャーがある。現代版1750エンジンがもたらす2,000rpm手前からの加速フィールは、きっと病みつきになる。
現代のクルマに課せられた厳しいエミッション規制と、実用的な燃費基準を満たしたクルマというだけではなく、アルファロメオという100年以上もつづくブランドの歴史をも所有できるのが、ジュリエッタのアドバンテージ。
アルファロメオというメーカー名と、復活したジュリエッタの名称、そしてそこに1750の数字とクアドリフォリオ ヴェルデのネーミングがくわわったとなれば、まさに無敵。四つ葉のクローバーをモチーフとするだけに、エースのフォーカードといってもいいほどの強さである。
もちろん、単なる記号の盛り合わせではない、完成度やバランスの高さもクアドリフォリオ ヴェルデ魅力だ。
しかし、アルファロメオには、ロイヤルストレートフラッシュともいえる最強の手札がまだ残っている。
誰もが期待する、GTAの登場がそれである。
Alfa Romeo Giulietta Quadrifoglio Verde│アルファ ロメオ ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ
ボディサイズ│全長 4,350 × 全幅 1,800 × 全高 1,460 mm
ホイールベース│2,635 mm
トレッド前/後│1,555 / 1,555 mm
重量│1,440 kg
エンジン│1,742cc 直列4気筒 DOHC インタークーラー付きターボ
圧縮比│9.2
ボア×ストローク│83.0×80.5 mm
最高出力│173 kW(235 ps)/5,500 rpm
最大トルク│
(Normal/All weather)300 Nm(30.6 kgm)/4,500 rpm
(Dynamic)340 Nm(34.7 kgm)/1,900 rpm
トランスミッション│6段マニュアル
駆動方式│FF
サスペンション前│マクファーソン ストラット(スタビライザー付き)
サスペンション後│マルチリンク(スタビライザー付き)
タイヤ│225/40R18
ブレーキ前/後│ベンチレーテッドディスク/ディスク
燃費|12.3 km/ℓ
CO2排出量│189 g/km
定員│5人
価格│388万円