レクサス IS をロードテスト|Lexus
CAR / IMPRESSION
2015年1月23日

レクサス IS をロードテスト|Lexus

Lexus IS|レクサス IS

レクサス IS をロードテスト

レクサスのスポーツイメージを牽引する新型「IS」。プロトタイプ先行生産モデルと、OPENERSでは追ってきたこのモデルもついに、日本発売。いよいよ、日本のナンバーをつけたプロダクションモデルでロードテストをおこなう機会を得た。小川フミオ氏のインプレッション。

Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki

ISをあらわすデザイン

2013年5月16日にフルモデルチェンジを受けたレクサス「IS」。「走りはIS」とレクサスの開発者じしんが言うように、新デザインのフロントグリルをはじめとするアグレッシブなルックスと、四輪操舵システムなど走りのための装備を満載した「IS 350 F SPORT」に代表されるパフォーマンスが特徴的なモデルだ。

実車は、キャラクターラインを極力排除して、面の表情で抑揚をつけているデザイン。流れるようなルーフラインと、直線的にフロントからテールエンドまでつながるショルダーが個性的だ。さらにくわえて、大きなスピンドルグリルが目を惹く。

空力のこともあるから、実際の開口部はそれほど大きくないはずだが、ひと目でレクサスは大きな(そしておそらくパワフルな)エンジンを載せている、というコンテンツを伝えるようなデザインだ。

個人的な感想になるが、従来ISには「LSGSより小さなレクサス」という三男坊的なイメージがつきまとっていた。全体としてはブックエンド コンセプト(下から上までラインナップに比較的強い共通的なデザインイメージを与える手法)を採用しながら、ISはクーペ的なルーフラインによるエレガンスをうまく活かして、アクは少ないがキャラは立つ、という個性を持つ点を評価したい。

IS 350 F SPORTとIS 300h F SPORTをテスト

今回、横浜で試乗したのは、シリーズ中もっとも運動性能が高い「IS 350 Fスポーツ」(595万円)と、ハイブリッドでありながら走りも積極的に楽しませようという「IS 300h Fスポーツ」(538万円)。後者は電気モーターによるTHS-IIを備えてはいるが、両車ともにエンジンをフロントに搭載した後輪駆動だ。

しっとりした乗り味の、おとなっぽいスポーティセダンという核は共通の、一本筋のとおった仕上がりであるのが印象的だった。

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レクサス IS をロードテスト (2)

レクサスの走りを牽引するIS 350 F SPORT

「IS350」は、318psの3.5リッターV6エンジン搭載車。モデルラインナップ中唯一、8段オートマチック変速機を与えられている。スポーツシフトを謳っており、その特徴としては、Gセンサーと組み合わせていることがあげられる。

利点は、コーナリング中の最適なギアコントロール。コーナーの入口で加速度に応じて最適なギアにシフトダウンすることで、“高いギアのままコーナーに進入し、有効なトルクバンドが使えず出口でもたつく”という現象を回避している。

さらにFスポーツになると、「LDH(レクサス ダイナミック ハンドリングシステム)」とよばれる、コンピューターを使ったコーナリングシステムが採用されている。

「安全とクルマを操る愉しさを両立」とレクサスでは説明するこのシステムは、複数の技術で構成されている。

ひとつは「DRS(ダイナミック リア ステアリング)」。車速やハンドル操作などの情報に基づき、操舵輪(前輪)にくわえて後輪も切れ角を最適制御する。「山岳路など中速走行時での軽快なステアリングレスポンスを実現」(レクサス)と謳われている。

これと、ギア比可変ステアリングと、EPS(電動パワーステアリング)が統合制御されている。

コクピットの印象は、開発担当チーフエンジニアが、「ヒップポイントを20ミリ下げ、ハンドルを3度立てた」ことで、よりスポーティなドライビング ポジションを実現したと強調するように、専用シートとともに悪くない。すっとからだがなじむ。

長時間座っていないので断定できないが、「表皮一体発泡工法」なるレクサスでは初というシート(構造材のことだろう)と表皮を一体で形成する方法で作ったFスポーツ専用シートは、座面のクッションも、シートバックのホールド製も良好。腰部の違和感もなかった。バイブレーションもハーシュネスもきちんと吸収されていると感じた。

おいしいところを味わいたいならSPORTモード

ノーマルモードでは、エンジン回転数が2,000rpmに近くなってゆくと、4,800rpmで最大値380Nmになるトルクがどんどん盛り上がり、加速がよさを体感する。

しかしそれよりはトルクの“つき”がよく、わずかなペダルの踏み込み量に敏感に反応してくれた「スポーツ」モードを選ぶほうが、このクルマのおいしいところがよりよく味わえる。

変速機でも下のギアを積極的に使う設定だ。トルクは先細ることなく、エンジン回転がレッドゾーンにいたるまで、強力に1,640kgの車体を押し出してくれる。

この間、微妙なアクセルコントロールが可能で、おもうままの加減速ができるのだが、Fスポーツに設けられている「スポーツS+」モードを選べば、ステアリングギア比がクイックになることにくわえ、さきのコーナリング制御が積極的に働くため、車体のほうはいっさいの乱れなく、ドライバーが狙ったとおりのラインをいとも軽やかにトレースしていく感覚だ。

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レクサス IS をロードテスト (3)

ハイブリッド+F SPORTのIS 300h F SPORT

IS 300hには、スタンダード(480万円)にくわえて、17インチタイヤ、後席サイドエアバッグ、自動防眩機能などを備えたドアミラー、セミアニリン本革シートといった専用装備をもつバージョンL(538万円)、それにFスポーツが設定されている。それはIS 350と同様だ。

僕が試乗したのはFスポーツ(538万円)だが、IS 350版とことなるのは、変速機が電気式無段となることにくわえ、レクサス ダイナミック ハンドリング システム(LDH)が用意されないことだ。

ハイブリッドシステムの心臓部は、2.5リッター4気筒アトキンソンサイクルエンジンと、電気モーターの組み合わせ。

システム全体の最高出力は220psとなる。JC08モードで燃費は23.2km/ℓ。

いっぽう、「変速フィールを見直し、従来より運転の楽しさが増した」と開発担当者は、スポーティさも改善したことを強調していた。

実際、1,670kgの重量がある車体による重厚感ある乗り心地とともに、トルクの出方が細かく制御されていて、とりわけ中速域を中心とした領域での走りは、ドライバーの意思に忠実な感覚で意外なほど気持ちがいい。

ガソリンエンジンモデルは、基本的に走りに振ったため、燃費が犠牲になったぶん、ハイブリッドの300hで燃費をかせぐ必要もあるだろうが、ハンドリングの楽しさはしっかりある。

「バッテリー搭載位置の見直しなどで、前後の重量配分がほぼ50対50」(開発担当者)なのも、ハイブリッドモデルの操縦性のよさに貢献しているのだろう。ただ、積極的に操縦を楽しみたいなら、エンジンのパワーやフィールを含め、これよりふさわしいモデルがあるのは事実だ。

そのへんの好みを自分なりによく見極めてバージョンを選ぶといいだろう。

EV走行だってもちろんできる

あいにく試乗会のせいで、つまりいろいろな走り方をされバッテリーにたっぷりな充電量が残っていなかったため、EVモードでの走行を経験する機会は限られたが、時速50kmまで、比較的重量級のボディを意外なほど力強く走らせた。

トヨタでは燃費のよい運転をエコドライブと呼び、G-BOOK装備車両では、一定基準以上の「エコドライブ」をしたことで獲得できるエコポイントを、バーチャルなやりとりで日本ユネスコ協会連盟プロジェクト世界遺産の中にある任意のプロジェクトに「寄付」することもできる。

このように運転と遊びを結びつける施策はガソリン車にはないものだ。

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レクサス IS をロードテスト (4)

ベンチマークは3シリーズ

試乗会で開発担当者に話を聞いたところ、「(ISの)ベンチマークはBMW 3 シリーズ」という意外なことを教えてくれた。「たとえば、ATのシフトスケジュールをとっても、加速など運転状況にあった人間の感覚を重視している」とその理由も説明してくれた。

「追い抜きのためにギアを落として減速した場合、低いギアを保持するプログラムは、再加速を前提にすると、気持ちよい運転のために必要。しかしそれでは燃費が悪くなってしまう。かといってシフトアップが早いと、再加速のためにアクセルペダルを踏み込んでも力が充分に出ないと感じられてしまう。環境、操縦性、ドライバーの感覚、さまざまな要素にどう折り合いをつけていくか。3 シリーズの変速モードは気持ちよさを感じさせるプログラムが上手」と担当者は謙虚に分析を語ってくれた。

アウディがオプションで用意している、エンジンやステアリング特性、サスペンションの硬さなどを選択できる「アウディドライブセレクト」も研究対象だったそうだ。「スポーツやコンフォートというモードでの車両の設定もさることながら、もっとも興味ぶかかったのは、車両が自動的にこの2つのモードを切り替えるAUTOモード。どのタイミングでコンフォート、どのタイミングでスポーツにするか、自動で制御するプログラムが大いに勉強になりました」(同)。世界を相手にするために、ライバルの研究を怠っていないということだ。

いっぽう、IS Fスポーツのサスペンションシステムにはダンパーの減衰力をコントロールするNAVI・AI-AVSを装備。電子制御の利点を活かして、「あらゆる走行状況で破綻のない動きをするように徹底的な設定をおこないました」と、おなじ開発担当者は胸を張る。

感覚という数値化できないものを車両開発のベンチマークにすえるのは大変なことだが、BMWやアウディの感覚的な部分をクルマづくりの参考にしたことも、この部分の完成度を上げることに貢献しているようにおもう。

ISの二面性、そして将来性

レクサスISは、ある意味、二重性のあるクルマである。

ドライバーが意識的にスポーツ+モードを選べば、快適性の高い4ドアセダンの奧のトビラの向こうに、もうひとつ、非日常的なスポーティな世界を持っているのだ。

「BMW 3 シリーズ」や「アウディ A4」とは味わいがちがうが、Fスポーツで感じる、ある種ピュアなスポーツ志向は、とりわけレクサスの、さらにいえばIS 350のキャラクターを明確化している。

あとは、自動運転化をふくめた安全装備が今後一部の輸入車(メルセデス・ベンツ新型「Eクラス」、キャディラック「ATS」、フォルクスワーゲン新型「ゴルフ」、ボルボ「V40」)の方向へと進んでいくのか興味があるし、より燃費とスポーティさの充実がはかられたら、そんなモデルにも乗ってみたい。

1台でラグジュアリーからスポーツまでカバーするのは大変なことだとおもうが、ドイツにはAMGという好敵手が高い次元でバランスとれたモデルをつくっている。レクサスにも励ましのエールを送る。

Lexus IS 350|レクサス IS 350
ボディサイズ|全長4,665×全幅1,810×全高1,430mm
ホイールベース|2,800 mm
トレッド 前/後|1,535/1,550 mm(F SPORTのみ後1,540mm)
最低地上高|135 mm
最小回転半径|5.2 メートル
トランク容量|480リットル
重量|1,630 kg(F SPORTは1,640 kg)
エンジン|3,456 cc V型6気筒 直噴 DOHC
最高出力| 234kW(318ps)/ 6,400 rpm
最大トルク|380Nm(38.7kgm)/ 4,800 rpm
トランスミッション|8段オートマチック(8-Speed SPDS)
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|225/40R18 / 255/35R18
燃費(JC08モード)|10.0 km/ℓ
価格|520万円("version L" 575万円 "F SPORT" 595万円)

Lexus IS 300h|レクサス IS 300h
ボディサイズ|全長4,665×全幅1,810×全高1,430mm
ホイールベース|2,800 mm
トレッド 前/後|1,535/1,550 mm(F SPORTのみ後1,540mm)
最低地上高|135 mm
最小回転半径|5.2 メートル
トランク容量|450リットル
重量|1,670 kg
エンジン|2,493 cc 直列4気筒 直噴 DOHC(アトキンソンサイクル)
エンジン最高出力| 131kW(178ps)/ 6,000 rpm
エンジン最大トルク|221Nm(22.5kgm)/ 4,200-4,800 rpm
モーター最高出力|105kW(143ps)
モーター最大トルク|300Nm(30.6kgm)
システム最高出力|162kW(220ps)
トランスミッション|電気式無段変速機
電池|ニッケル水素
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|225/40R18 / 255/35R18
燃費(JC08モード)|23.2 km/ℓ
価格|480万円("version L" 538万円 "F SPORT" 538万円)

Lexus IS 250|レクサス IS 250
ボディサイズ|全長4,665×全幅1,810×全高1,430mm
ホイールベース|2,800 mm
トレッド 前/後|1,535/1,550 mm(F SPORTのみ後1,540mm)
最低地上高|135 mm
最小回転半径|5.2 メートル
トランク容量|480リットル
重量|1,580 kg
エンジン|2,499 cc V型6気筒 直噴 DOHC
最高出力| 158kW(215ps)/ 6,400 rpm
最大トルク|260Nm(26.5kgm)/ 3,800 rpm
トランスミッション|6段オートマチック(6 Super ECT)
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|225/40R18 / 255/35R18
燃費(JC08モード)|11.6 km/ℓ
価格|420万円("version L" 480万円 "F SPORT" 480万円)

           
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