ランボルギーニ ウルスにオフロードで試乗|Lamborghini
Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス
ランボルギーニ ウルスにオフロードで試乗
オンでもオフでもスーパーだった
2017年12月に世界デビューし、2018年2月には日本にも上陸したランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」。アヴェンタドール、ウラカンに続く同社の第3のモデルだ。快適な乗り心地や高い地上高、ラグジュアリーな室内空間を備えており、街中での運転のしやすさ、快適な長距離ドライブ、一般道やサーキットでのスーパースポーツカーらしいダイナミクス、さまざまな環境でのオフロード性能を提供し、ドライバーだけでなく同乗者も楽しめるラグジュアリーSUVとして開発したと謳われる。
通常使用ではオンロードのみを走ることが多いこうしたスーパーSUVが、生来の性能であるオフロードを走ってみたらどうなのか。この疑問に答えるべく開催されたウルスのオフロード試乗会に参加し、さまざまなシチュエーションでの実力を確かめてみた。
Text & Photographs by HARA Akira
抜群のオンロード性能
闘牛の世界に由来する車名を採用するという伝統を引き継ぎ、オーロックスとして知られる大型牛ウルスがスペインの闘牛に非常に近い外観を持っていることから命名されたランボルギーニ「ウルス」。
試乗会場となった栃木県内の走行実験施設「GNKドライブライン ジャパン プルービンンググラウンド」に、イエロー、ホワイト、ブルー、ブラックなどに塗られた“猛牛”がずらりと並ぶその姿はなかなかの壮観だ。
ボディサイズは全長5,112mm×全幅2,016mm×全高1,638mmで、ホイールベース3,003mm、最低地上高158mm〜248mm、乾燥重量2,200kgとういう堂々の体躯を持っている。
フロントに搭載する排気量3,996ccの90°V型8気筒ツインターボエンジンは、最高出力650ps(478kW)/6,000rpm、最大トルク850Nm/2,250〜4,500rpmを発生し、0-100km/h加速3.6秒、0-200km加速12.8秒、100km/h制動33.7m、最高速度305km/hの性能を誇っている。
試乗会スタッフによるインストラクションの後、まずは舗装された外周路での加減速テストに臨む。ここではセンターコンソールに備わるTambro(ランボルギーニ ドライビングダイナミクス コントロール)ドライブモード選択で、ハイパフォーマンス志向の「CORSA」を選択するよう指示された。
200mほどの直線でフル加速し、130km/hを過ぎたあたりで思いっきりブレーキペダルを踏むと、フロント440mm、リア370mmの巨大なローター備えるカーボンセラミックディスクブレーキが2トンを超えるボディを急減速。わずかなノーズダイブとともに何事もなかったようにピタリと停止してくれる。
裏のストレートでのフル加速テストではアクセル全開。右足を床まで踏みつけて650psを解き放つと、デジタルのスピードメーターは読みきれないほどの勢いで数字を増やし、たった500mほどの直線で車速は215km/hオーバーまで伸びる。まさに圧倒的な性能だ。
18〜85Rのコーナーが連続するハンドリング路では、レーシングドライバーである講師の高木虎之介氏がドライブするアヴェンタドールSVJを追っかけるのだが、低速域からの圧倒的なトルクとカーボンブレーキによる車速コントロールのしやすさ、後輪操舵システム(4WS)を備えた4WDシステムの安定感、電子制御式ロールスタビライゼーションを装備することでロールをほとんど発生させないアクティブエアサス、高い着座位置によるコースの見やすさが相まって、スポーツカーらしい速さを十分に体験させてくれた。
Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス
ランボルギーニ ウルスにオフロードで試乗
オンでもオフでもスーパーだった(2)
ファットなピレリPゼロでオフロードを走り抜く
オンロードでの試乗を終えると、さまざまなメニューが体験できるオフロードコースへ。ここでのTambroの設定はTERRA(オフロード)だ。高さ15cmほどの凹凸が続くでこぼこ道では、ボディはミシリとも言わずに平然とクリア。
次は50%勾配、つまり約30°の砂利の急な登り坂へ低速で侵入する。フロントガラスには晴れた空しか見えない急坂の途中で一旦停止し、再び発進してもホイールスピンもせず、ゆっくりと頂上に達してくれる。
その先の下り坂への侵入では、巨大なV8エンジンを搭載するボンネットのおかげで先が見えないのだが、コンソールのボタンでフロントカメラを起動。それを見ながら鼻先を下り坂の入り口に向けると、ヒルディセントコントロールによって一定速度を保ったままゆったりと平地まで降りてくれるのだ。ちなみにタイヤは21〜22インチのファットなピレリPゼロのままである。
カーボンブレーキが濡れると、ローターの温度が低下して効きが悪くなるという理由で後回しになった水路は、長さ約30m、深さ30〜40cmの水が満たされたコース。この中に3,000万円近い新車でジャブジャブと入っていくのは少し気が引けたのだが、意を決して突入。ドアサイドからの水の侵入もなく、大きく水しぶきを上げながらそれを豪快に渡りきるウルスの姿は圧巻だ。
Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス
ランボルギーニ ウルスにオフロードで試乗
オンでもオフでもスーパーだった(3)
非の打ちどころがない万能性
テストコース内だけでなく、施設周辺のオフロードルートを走れたのも全く新しい体験だった。その道は、近くを流れる思川の堤防道路だったり、田畑の中を抜けるあぜ道だったり。普段は農家の軽トラックしか走らないような狭い土の道を、隊列を組みながら派手な土煙を上げて走るウルスの姿は、ドライブしている我々だけでなく、それを見た近隣の人たちも驚いたに違いない。
大型ボディのウルスだったが、後輪操舵が効果を発揮し、一見して曲がりきれないような角度の右左折を一発で曲がれたのには感心した。走り終えたウルスは当然埃だらけで、ボンネット内のエンジンカバーまで真っ白になってしまっていたが、あえてこうした試乗会を開催することでウルスの性能をユーザーに届けたいとするランボルギーニの姿勢には頭が下がる。
同様の試乗イベントは一般ユーザー向けとしても随時開催されており、すべてのメニューをこなすと修了証を手渡してくれるという嬉しいサービスがある。
スタンダードボディの価格は2,779万9,200円。荒れ地を走るための走行モードであるTERRAやSABBIA(砂漠)はオプション装備で、ボディカラーをはじめとするそのほかのオプション品は数限りない。ユーザーの好みを100%反映すると、車体価格は3,000万円を大きくオーバーするに違いない。
2018年の発表会のために来日していたランボルギーニのステファノ・ドメニカリ CEOが、「ウルスは家族や友人など4、5人を乗せて日常使いができるクルマで、サーキットから高速道路、都市部から荒地までの全てに対応できます。つまり、これまでの市場になかった、完全なニュープロダクトなのです」と語っていたとおり、新型SUVの万能性に非の打ちどころがないことは十分に体験できた。
売れ行きも好調のようで、生産拠点のイタリアはサンタ アガタ工場を2倍の16万平方メートルに拡大し、新たに従業員を500人規模で雇い入れたという話も納得がいく。
Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス
ボディ|全長 5,112 × 全幅 2,016 × 全高 1,638 mm
ホイールベース|3,003 mm
トレッド 前/後|1,695 / 1,710 mm
車輛重量|2,200 kg
エンジン|3,996cc V型8気筒ツインスクロールツインターボ
最高出力| 478 kW(650 ps)/6,000 rpm
最大トルク|850 Nm/6,800 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|4WD
サスペンション 前/後|マルチリンク(アダプティブ エア)
タイヤ 前|285/45R21
タイヤ 後|315/40R21
ブレーキ 前|カーボンセラミックディスク φ440 × 40 mm
ブレーキ 後|カーボンセラミックディスク φ370 × 30 mm
最高速度|305 km/h
0-100km/h加速|3.6 秒
0-200km/h加速|12.8 秒
100-0km/h制動|33.7メートル
燃費(EC値)|12.7 ℓ/100 km(およそ7.9km/ℓ)
CO2排出量|290 g/km
最低地上高|150 – 248 mm
最小回転半径|5.9メートル
トランク容量|616 – 1,596 リッター
価格(消費税込み)|2,779万9,200円