MP4-12Cスパイダーに試乗|McLaren
CAR / IMPRESSION
2014年12月9日

MP4-12Cスパイダーに試乗|McLaren

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

サーキットであらわになるスパイダーの実力

MP4-12C スパイダーに試乗

マクラーレン「MP4-12C」のオープンモデルとして、8月のペブルビーチ・コンクール・デレガンスでその姿をはじめて披露した「MP4-12C スパイダー」。マクラーレンはこのクルマを「クローズドモデルとまったく変わらないパフォーマンスを実現した、ルーフも妥協もないモデル」と強くアピールするが、さて、その実力や如何に。南スペインにあるプライベートサーキット、「アスカリ レース リゾート」で山崎元裕が試す。

Text by YAMAZAKI Motohiro

スパイダーへのマクラーレンの自信

マクラーレン オートモーティブのスーパースポーツ、「MP4-12C」のラインナップに、オープン仕様の「スパイダー」が追加設定された。カスタマーへの本格的なデリバリーは2013年から開始される予定となっており、それはMP4-12Cシリーズの中で、約80パーセントという比率を占めることになると予想されている。

MP4-12Cスパイダーの、テストドライブの舞台として用意されたのは、南スペインにあるプライベートサーキット、「アスカリ レース リゾート」だった。5,425メートルというコース長の中には、大小26のコーナーが設けられ、さらに人工的な起伏を設けることで、攻略の難易度を高めたこのコースは、一昔前までならば、それをオープンモデルのテストに使用することは一般的ではなかっただろう。

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

穏やかな海を臨む、風光明媚なリゾート地で、クローズドモデルとはまた別のキャラクターを味わう。それが長年、スーパースポーツから派生したオープンモデルの試乗会では、典型的なスタイルだったことをおもいだす。

それはマクラーレンの、MP4-12Cスパイダーにへの自信の表れなのだろう。その姿をはじめて目にした、8月のペブルビーチ・コンクール・デレガンスや、オフィシャルデビューの場となった9月のパリ・サロン。さらにつづいて開催された、東京での発表会においても、マクラーレンはそれを、「クローズドモデルとまったく変わらないパフォーマンスを実現した、ルーフも妥協もないモデル」とアピール。その言葉の真偽を確認するには、これ以上に厳しいシチュエーションはないはずだ。

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

サーキットであらわになるスパイダーの実力

MP4-12C スパイダーに試乗(2)

600psから625psへと強化されたパワーユニット

スパイダーの発表に前後して、マクラーレンは、MP4-12Cに2013年モデルとしてのアップデートを実施している。もっとも大きな変化は、ミッドに搭載される3,799cc V型8気筒+ツインターボエンジンの最高出力が、従来までの600psから625psへと強化されたこと。エグゾーストシステムはスパイダーのための専用デザインとなる。組み合わされるデュアルクラッチ式の7段ギヤボックス=SSGにも、クラッチコントロールやシフトスピードをさらに高速化するための改良がほどこされた。

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

さらには、これもまたMP4-12Cに採用されるメカニズムとして特徴的な、スタビライザーではなく、油圧によってアクティブなロール制御を実行する、プロアクティブ・シャシー・コントロールのセッティングも、2013年モデルでより最適化が進められたという。また細かい部分では、左右のバタフライドアに、より確実な操作性を持つ、コンパクトなオープナースイッチが採用されたこと。新デザインのホイールやインテリアの仕様など、オーダー時のオプションがさらに増えたことなども、カスタマーには見逃せない話題といえる。

約17秒でトランスフォーム

MP4-12Cスパイダーが採用するルーフは、最強のライバルともいえるフェラーリ「458スパイダー」と同様、ドイツのヴェバスト社との共同開発によるリトラクタブルハードトップだ。

2分割デザインのルーフはCFRP製で、30km/h以下の速度ならば、走行中でも約17秒でフルオートマチックのオープン&クローズが可能。ルーフはキャビン後方の専用スペースへと収納される仕組みだが、クローズ時にはここは52リットル分のラゲッジスペースになる。

フロントには144リットルの容量を誇るトランクが用意されており、ここには航空機の機内持ち込みサイズのスーツケースを簡単に収納することができた。その実用性は相当に高い。

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

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サーキットであらわになるスパイダーの実力

MP4-12C スパイダーに試乗(3)

フェラーリの主張は、もはや言い訳にしか聞こえない

スパイダーのエクステリアデザインは、個人的にはクーペのそれよりも魅力的なものに感じられた。機能こそが造形を生み出すのだというマクラーレンのデザインコンセプトは、それが誤りではないことは十分承知してはいるものの、フェラーリやランボルギーニといった、イタリアン・スーパースポーツと比較すると、そのアピアランスはやや優等生的に過ぎるという評価を受けることも多かった。

もちろんスパイダーも、ウエストラインから下のパートでは、デザインはクーペのそれと変わらないのだが、キャビンのコンパクトさが強調されるトンネルバックのデザインを採用したことで、視覚的に軽さをより感じるようになったのが、その好印象の直接の理由だ。

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

センターコンソール上のアクティブダイナミクスパネルには、パワートレインとプロアクティブ シャシー コントロールのセッティングを、各々独立して設定できるダイヤルスイッチが備えられるが、まずはコースの下見を兼ねて、「ノーマル」と「スポーツ」を互いに使い分けながらドライブをはじめる。

ここで早くも驚かされるのは、スパイダー化されても一切変わることのない、マン・マシンの一体感。けして大げさな表現ではなく、タイヤが一転がりした瞬間から、ドライバーはマシンへの全面的な信頼感を抱くことができるだろう。その感覚を生み出しているのは、基本構造体となるCFRP製のモノコックタブ。マクラーレンはそれを「モノセル」と呼ぶが、それが持つ圧倒的な剛性感こそが、ドライバーのさまざまな操作=インプットにたいする、正確無比な車体の反応=リアクションを生み出す理由にほかならないのだ。

アルミニウム製のスペースフレームを458スパイダーの基本構造体に採用するフェラーリは、CFRP製のモノコックを、生産台数を限定しないシリーズモデルに採用することは、耐久性等の問題で時期尚早であると主張するが、それも言い訳にしか聞こえなくなるほどに、マクラーレンのモノセルには素晴らしい印象を抱く。

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サーキットであらわになるスパイダーの実力

MP4-12C スパイダーに試乗(4)

コーナリング中のロールは皆無に近い

ミッドのV8エンジンは、事前に詳細を知らなければ、自然吸気エンジンのそれと感じるほどに、ナチュラルなフィーリングを発揮するパワーユニットだ。最大トルクの600Nmは、3,000-7,000rpmで完全にフラットに得られているから、どのような速度域からでも、アクセルペダルを踏み込めば、直後に加速体勢を整えることができる。レブリミット付近での動きも、マイナーチェンジでさらに鋭さを増した。

さらに改めて考えてみれば、625psの最高出力が発揮されるのは7,500rpm。ツインターボエンジンとしては、きわめて高回転型なキャラクターを、このエンジンは持つ。オープン時にはエグゾーストノートも、よりダイレクトにキャビンに伝わるようになった。そのサウンドのチューニングには、若干の不満を覚えるというのが正直な感想だが、これもツインターボエンジンであることを考えれば、妥協しなければならない部分だろうか。

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

コースにも、そして操作系にも慣れたところで、パワートレインとシャシーコントロールのセッティングを「トラック」に変更。そのパフォーマンスをフルに体験してみることにした。このモードでは、ステアリングのレスポンスはさらにクイックなものになり、コーナリング中のロールは、少なくともそれをドライブする身には、皆無に近い状態になる。

さらにはESC(エレクトリック スタビリティ コントロール)の機能をベースとしてブレーキステアや、高速域からの急制動時に確実な効果を発揮するエアブレーキ等々、さまざまなデバイスが常に理想的にリンクすることで、MP4-12Cスパイダーは、まさにクーペモデルとのちがいを一切感じさせない、魅力的な走りを披露するのだ。

いや厳密には、ウエイトは40kgほど増加し、またエアロダイナミクスも変化しているはずだから、スパイダーとクーペの走りが完全に共通であるということはないのだが、そのちがいを感じることができるのは、ドライビングに相当なスキルを持つ者だけということになるのだろう。

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サーキットであらわになるスパイダーの実力

MP4-12C スパイダーに試乗(5)

コントロール性と乗り心地の両立

その圧倒的なコントロール性と同時に、スーパースポーツとはおもえないほどの乗り心地を感じながらのホットラップを終え、自分自身のクールダウンを兼ねて、今度はサーキット周辺のワインディングロードをクルージングしてみた。

ここで改めて感じたのは、キャビンへの風の巻き込みなど、不快な要素がまったく感じられなかったこと。スパイダーのために最適化されたという、オーディオやエアコンの機能もまた素晴らしい。

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー

「IRIS」と呼ばれる、センターコンソールの縦長ディスプレイには、ナビゲーションシステムにも使用されるが、日本仕様でもはたして同様の機能が搭載されるのかどうかは気になるところだ。

MP4-12Cスパイダーが可能とする最高速は328km/h。日本でのプライスは、先日開催された発表会で3,000万円とアナウンスされている。ちなみに2013年には1,500台レベルの年間生産台数を狙うというマクラーレン。日本市場はこのうち80台前後を担う見込みだ。

spec

McLaren MP4-12C Spider|マクラーレン MP4-12C スパイダー
ボディサイズ|全長4,509 × 全幅1,910 × 全高1,203 mm
ホイールベース|2,670 mm
トレッド 前 / 後|1,656 / 1,583 mm
車輛重量|1,376 kg
エンジン|3,799 cc V8 ツインターボ
最高出力|625 ps(約460 kW)/ 7,500 rpm
最大トルク|600 Nm(約61.2 kgm)/ 3,000-7,000 rpm
0-100 km/h加速|3.3 秒(コルサタイヤ装着時3.1秒)
最高速度|329 km/h
トランスミッション|7段デュアルクラッチ
タイヤ 前/後|ピレリPゼロ 235/35 R19 / ピレリPゼロ 305/30 R20
燃費(EU複合サイクル)|11.7 ℓ / 100 km
CO2排出量|279 g/km
価格|3,000 万円

           
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