新型ゴルフ海外試乗リポート|Volkswagen
Volkswagen Golf| フォルクスワーゲン ゴルフ
これが7代目
進化をつづけるゴルフに試乗
登場するたびに、その完成度が驚きをもたらす、フォルクスワーゲン「ゴルフ」。世界中のメーカーがこのクルマを手本にするなか、その追従を振り切るように「ゴルフ」は7代目へとモデルチェンジを果たした。OPENERSでは、この新型ゴルフの評価を、河村康彦氏、島下泰久氏の両名に依頼。まずは、ゴルフ進化の真価をさぐるべく、河村康彦氏がドライブ!
Text by KAWAMURA Yasuhiko
どこをどう「これ以上良くしよう」というのか!?
”こいつ”の、一体どこをどう「これ以上良くしよう」というのか!? それが──今となっては従来型という事になる──これまでのゴルフ、すなわち「ゴルフ6」がニューモデルへと世代交代すると耳にしての、自身の率直なおもいだった。
「ゴルフ6」のエクステリア/インテリア各部の仕上がりは、どこに目をやっても文句なしの質感。その出来栄えは、より上級のモデルである
「パサート」と直接見くらべても決してヒケを取るものではなく、それどころかうっかりすれば、グループ内のプレミアムブランドであるアウディの作品にすら肉薄しそうという印象だ。
動力性能も、もっともベーシックな1.2リッターエンジン車でさえ、まさに「必要にして十二分」。それも、単に絶対的な加速力にとどまらず、エンジンの回転フィールや変速の質など多分に感覚的な分野でも、大いに好印象が得られるものだった。
静粛性もすでに高い水準に達していて、むしろそれよりあとに登場した“最新ライバル”の方が、「ゴルフ以上に喧しい」と実感できてしまう場合もめずらしくなかった。極めつけはそのフットワーク性能で、アウトバーンの国生まれらしい磐石ともおもえる安定感を確保しながら、ハンドリングは正確そのもの。その上で、コンフォート性は遥か上級の大型セダンのごとくしなやか、ときているのだから、ここでもまた「もはや文句のつけようなどない」というのが現実だったのである。
かくして、そんなどこにも旧さなど感じさせないこれまでのゴルフをモデルチェンジしようというのだから、それは並大抵のことではないはずだし、冒頭のごとき疑問が湧きだしてしまうのも、止むを得ないというもの。
そんなおもいを抱きつつ日本から足掛け2日を費やして赴いたのは、地中海に浮かぶイタリア領はサルディニア島。「四国とほぼ同等の面積」というだけあって、“島”とは言ってもその風景は壮大。ただし、ワインディング ロードには事欠かないものの高速道路を試せないのはちょっと残念だな……と、過去の訪問の経験から得たそんな事前のおもいとともに、
「ゴルフ7」こと「新型ゴルフ」の国際試乗会が開催される島の北部に位置するホテルへと、勇躍到着となった。
「ゴルフ」の静かさはもはや「ライバル知らず」
日本導入の暁には、この仕様こそがメインとなるはず、と予想される1.4リッターのターボ付き直噴ガソリンエンジンに、お馴染み「DSG」を謳う7段DCTを組みあわせた仕様で早速スタートをする。と、その走りに即座に感じた従来型との明確なちがいというのは、主に次の2つのポイントとなった。
まずひとつは、その圧倒的な静粛性の高さだ。
ゴルフの静粛性が、「ゴルフ6」でもすでに最新ライバル以上に高い実力を備えていたというのは前述のとおり。が、そんな感覚がしみこんだ身体で新型をテストドライブしてみれば、そこではこれまでとはまた明確に1ランクことなる静粛性の際立つ高さに、心底驚かされる事になったのだ。
そんな“常識を超えた静粛性”を実感したのは、最近では「プジョー508」の初ドライブで経験をして以来。いずれにしても今度の「ゴルフ」の静かさはもはや「ライバル知らず」で、これが新型でスタートを切っての、まずは個人的な第一印象となった事は間違いない。
次いで印象に強く残ったのは、「アクセルペダルをOFFにしても、どこまでも転がりつづけていく」という走りの感覚だった。燃費向上を目的に走行抵抗低減を徹底させた最近のモデルでは、アクセルOFF時の速度低下の鈍さに、転がり抵抗の小ささを実感する事は決して少なくない。
しかし新型ゴルフの場合、それが他に類を見ないほど際立っている。 最近では、アクセルペダルを緩めた段階でエンジンとトランスミッション間に挿入されたクラッチが自動的に切れ、その先は“惰性”によって進んで行く、というプログラムが組み込まれたモデルは少なくない。
が、新型ゴルフの場合、そうしたシステムの採用が謳われているわけではなく、実際にタコメーターの針がアイドリング状態へと落ちてしまうわけでもないのに、まるで同様の“空走感覚”が得られるのだ。
おそらくこうした特性は、リアルワールドでは燃費の大幅向上につながっているのだろう。いっぽうで率直なところ、それが時に「エンジンブレーキがほとんど効かない」という違和感として受け止められたのも事実だ。くわえれば、エンジンブレーキ力の不足を感じ、パドル操作によって積極的なダウンシフトを試みても、実はそこではエンジン音が高まるのみでさほど減速度は増してくれない。「減速が必要ならば躊躇わずにブレーキを踏め!」というのが、今や新時代の正しいドライビングの流儀であるのかもしれないが……
Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
これが7代目
進化をつづけるゴルフに試乗 (3)
「さすがはゴルフ」と紹介できる
というわけで、実はそんなこの2点をのぞいてしまえば、“残り”のあたらしいゴルフの走りのテイストというのは、「どれも“想定内”であった」という言い方もできる。
新素材への置換などコストを増す方法には頼らずに、ボディ骨格のみで23kg、車両全体では「最大100kg」を謳う大幅な軽量化の実現によって、スタートの瞬間から動力性能には確かにさらなる蹴りだしの力強さが実感できる。“アウトバーン領域”での走りのチェックができなかったのはちょっと残念ではあったが、今回経験したあらゆる走りのシーンの中での安定感は、「さすがはゴルフ」と紹介できる高さでもあった。
さらに特筆すべきは、その乗り味のしなやかさ全般にも確実に磨きがかかっていた事だったが、実はそこは今回チェックをおこなったすべてのテスト車に、電子制御式の可変減衰力ダンパーがオプション装着されていた事を、割り引いて考える必要があるかもしれない。
そんな「ゴルフ7」への今回のモデルチェンジをひとことで紹介するとすれば、それはやはり『正常進化』というフレーズに尽きるとおもう。特に突飛なアイディアを新採用したわけでもない今度の「ゴルフ」は、その見栄え上でも「かわり映えしないナ」と感じる人がいても不思議はない。
しかし、そうしてあらゆる部分にバランス良く磨きがかけられた「ゴルフ7」が身を置くステージというのは、並大抵の高さではない事は改めて認識しておくべきだろう。なぜならば、その“踏み台”となったのは、すでに“旧型”にして並外れた商品性を備えていた、「ゴルフ6」なるモデルであるのだから!
Volkswagen Golf 1.4 TSI 103kW(140 PS)|フォルクスワーゲン ゴルフ 1.4 TSI 103kW(140 PS)
ボディサイズ|全長4,255×全幅1,790×全高1,452 mm
ホイールベース|2,637 mm
トレッド 前/後|1,549/1,520 mm
トランク容量(VDA値)|380-1,270 リットル
重量|1,288 kg
エンジン|1,395 cc直列4気筒ターボ
最高出力| 103 kW(140 ps)/4,500-6,000 rpm
最大トルク|250 Nm /1,500-3,500 rpm
トランスミッション|7段DSG / 6段マニュアル
駆動方式|FF
最高速度|212 km/h
0-100km加速|8.4秒
燃費(NEDC Combined cycle)|4.7 ℓ/100 km
CO2排出量|109 g/km
価格|22,525 ユーロ