日産GT-R 2017年モデルに試乗|NISSAN
CAR / IMPRESSION
2016年10月12日

日産GT-R 2017年モデルに試乗|NISSAN

NISSAN GT-R|日産 GT-R

日産GT-R 2017年モデルに試乗

ますます磨きがかけられた実力

2007年のデビュー以来、毎年進化を続けてきたGT-R 。その最新版たるMY(=Model Year)17 GT-Rに、モータージャーナリストの島下泰久氏がドイツ~ベルギーの一般道とスパ・フランコルシャン サーキットで試乗した。

Text by SHIMASHITA Yasuhisa

日常域の走りっぷりが格段に進化

筆者はかつて、登場直後の2007年の日産「GT-R」を所有していたことがある。その圧倒的なパフォーマンスには大いに満足していたが、一方でメインテナンスや保証に関するあまりの制限の多さ、そして飛ばさなければ楽しさの感じられない、日常域での味気ない乗り味に飽き足らず、2年ほどで手放してしまったのだった。

しかしながら、今回ドイツ~ベルギーの一般道、そして難所として知られるスパ・フランコルシャン サーキットでテストした、過去最大級の変更を受けて登場したMY(=Model Year)17 GT-Rは、そんな筆者でも、これならもう一度付き合ってみたい、できれば長い時間、じっくりその走りを楽しんでみたいという気にさせる1台に仕上がっていた。以前のGT-Rに筆者と同じような思いを抱いた人も、このMY17 GT-Rは一度試してみる価値、絶対にある。

NISSAN GT-R|日産 GT-R

NISSAN GT-R|日産 GT-R

そう感じさせるのは、何より日常域の走りっぷりが格段に洗練されたからだ。直近のMY15 GT-Rと比較しても、その差は明らか。100mも走れば、違いを実感できる。

サスペンションの動きは目に見えてしなやかになり、路面の継ぎ目やうねりなどを通過する際にも不快な衝撃に見舞われるようなことがなくなった。操舵力が軽減されたステアリングは、ほんのわずかな舵角から確実にレスポンスして、軽快な動きをもたらしている。直進性の向上もトピックで、従来のように轍で進路があちこち乱されること、ほぼ解消されている。

その最大の要因は鍛え直されたボディだ。MY17 GT-Rのボディはフロントウインドウフレームやトランク内のブレースの強化などにより、剛性アップを実現している。しかも単に硬めるのではなく、従来はフロントがやや弱めだったという捻れの前後バランスを均等に近づけることによって乗り味の質を高めているのである。

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日産GT-R 2017年モデルに試乗

ますます磨きがかけられた実力(2)

パワートレインの洗練度も大幅にアップ

パワートレインの洗練ぶりも著しい。エンジンは全体の実に70パーセントもの回転域でトルクアップを果たし、アクセル操作に対するツキが向上している。今回、V型6気筒3.8リッター直噴ツインターボのVR38DETT型エンジンは、最高出力をプラス20psの570psにまで引き上げているが、それはあくまで副産物であり、狙いはこのトルクアップだったという。それを実現したのはブースト圧の向上、そして「GT-R NISMO」譲りの、各気筒ごとの点火タイミングを最適に制御する技術の採用だ。

従来なら踏んでも即座に反応がなく、一瞬の間を置いてからキックダウンして加速に移っていたような場面でも、MY17 GT-Rは分厚いトルクを利して、そのままのギアで加速していくことができる。もちろん、回した時のパワー感は従来以上。サウンドもうまく調律されていて、これまでにないほど過程を楽しむことができる。

ちなみにチタン製のエギゾーストには新たに音量を抑えるスイッチも設けられている。オンにすると驚くほど静かになるから、深夜の住宅街でも、これなら迷惑をかけることはなさそうだ。

NISSAN GT-R|日産 GT-R

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6段デュアルクラッチトランスミッションの変速が格段になめらかになったことも、ドライバビリティの向上に大きく貢献している。さらに言えば、ガチャガチャという作動音が低減されたことも、実際以上になめらかさを際立たせているのである。

刷新されたインテリアも、間違いなく日常域の快適性向上に貢献している。まず特筆すべきは改良されたシートの出来映えで、表面の張り感がなくなりしなやかに沈み込んで、身体をしっかりサポートする感触が、実に心地良い。姿勢が安定するから、まるで着座位置が下げられたかのようにも感じられるほどだ。

新デザインのダッシュボードは、全面一枚革のレザー張りに。従来のようなおもちゃっぽさが無くなって、雰囲気がグンと良くなっている。一方、ステアリングホイールに集められたスイッチ類があまり操作しやすいとは言えないこと、コラム固定式だったシフトパドルがステアリングホイール連動に改められたことは、惜しいポイントである。

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日産GT-R 2017年モデルに試乗

ますます磨きがかけられた実力(3)

どんな路面でも臆せず踏んでいける

もちろん、このクルマはGT-R。単に快適性を高めただけというわけがない。肝心なパフォーマンスの面でも長足の進化を果たしている。いや、正しく表現するならば、絶対性能の進化がまず前提にあり、結果として走りの質も向上したと言うべきかもしれない。それをまざまざと実感したのは、初めて訪れたスパ・フランコルシャンでの走りっぷりだ。

山岳地帯にある元公道だけにアップダウンが激しく、舗装は荒れ、コース幅も非常に狭いこのコースの中でも、とりわけ名所オー・ルージュは、全開で下った先で減速しながら右コーナーに進入するとクリッピングポイントから一気に上りに転じて、今度は左に旋回しながら全開で駆け上がっていく難所である。前後左右、そして上下に目まぐるしく荷重が変化するため、操縦がとにかく難しい。

NISSAN GT-R|日産 GT-R

NISSAN GT-R|日産 GT-R

しかも試乗は、ちょうど雨が降り出すという最悪のタイミングで臨むことになったのだが、MY17 GT-Rはそんな場面で急に浮き上がったり、逆に沈み込んで姿勢を崩したりせず、正確な操舵応答と確実なトラクションによって、安定した、そしてもちろん速いコーナリングを楽しむことができた。ほかのコーナーでも同様で、跳ねて踏めないといったことは一切無く、むしろ積極的に踏んでグリップさせていくことができる。パワフルなだけでなくレスポンスも機敏なパワートレインも、そんな思いに応えてくれるから、初めてということを忘れて思い切り攻めることができたのだった。

しなやかなサスペンションは、もちろん乗り心地を劇的に改善している。しかしながら実はそこには、フラットなサーキット以外のどんな路面でも、臆せず踏んでいけるという境地が目指されたのではないか。激しいGを楽しみながら、思ったのはそんなことである。

来年には登場10年を迎えることになるGT-Rだが、その実力はいまだ色褪せるどころか、ますます磨きがかけられている。円熟を感じさせながら、丸くならずにエッジをさらに際立たせたMY17には、走らせていて久々にアツくさせられた。これだけの大きな飛躍を見せたとなれば、登場からもうすぐ10年となるこのR35型GT-R、まだまだしばらくは我々クルマ好きを楽しませてくれるに違いない。今回の試乗は、深くそう確信させたのだ。

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NISSAN GT-R|日産 GT-R
ボディサイズ|全長 4,710 × 全幅 1,895 × 全高1,370 mm
ホイールベース|2,780 mm
トレッド前/後|1,590 / 1,600 m
車両重量|1,760 kg
エンジン|3,799 cc V型6気筒ツインターボ
ボア×ストローク|95.5 × 88.4 mm
圧縮比|9.0
最高出力|419 kW(570 ps)/6,800 rpm
最大トルク|637 Nm(65.0kg/m)/3,300-5,800 rpm
トランスミッション|6段デュアルクラッチ
駆動方式|4WD
最小回転半径|5.7 メートル
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッド ディスク
サスペンション 前|ダブるウィッシュボーン
サスペンション 後|マルチリンク
タイヤ 前/後|255/40ZFR20 / 285/35ZFR20
価格|
(Premium edition)1170万5,040円
(Black edition)1186万9,200円
(Pure edition)996万840円

問い合わせ先

日産お客さま相談室

0120-315-232(9:00-17:00、12/31-1/2を除く)

http://www.nissan.co.jp/

           
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