ポルシェ 718ボクスターに試乗|Porsche
Porsche 718 Boxster|ポルシェ 718ボクスター
Porsche 718 Boxster S|ポルシェ 718ボクスター S
スポーツカーとしての地位は揺るがず
新たに4気筒ターボ エンジンが与えられた最新のボクスターたる「718 ボクスター」。日本でのデリバリーを間近に控えた同モデルに、モータージャーナリスト島下泰久氏が試乗した。
Text by SHIMASHITA Yasuhisa
ボディは外板パネルのほぼすべてを変更
デビューから20年という節目で、「ボクスター」に大きな転機が訪れた。エンジンを従来の6気筒自然吸気から4気筒ターボに替えて、同時に車名を「718ボクスター」へと改めたのだ。この718とは、1950年代後半から60年代にかけてル・マンなどの世界的な耐久レースやヒルクライムで大活躍した4気筒ミッドシップのレーシングスポーツの名から取られたものである。
かねてより4気筒ターボエンジンを開発していることは小耳に挟んでいたが、まさか車名まで変えてくるとは想像しなかった。しかしながら、4気筒エンジンへの変更に確かな意味を付与するには、これは必然だったのだろう。幸い、たくさんのヒストリーの引き出しがあるポルシェならではの話だ。
その水平対向4気筒ターボエンジンは、718ボクスターが排気量2リッターで、最高出力300ps、最大トルク380Nmを発生。「718ボクスターS」は排気量が2.5リッターとなり、911ターボと同じく流量可変式のバリアブルジオメトリータービンを採用する。こちらは最高出力350ps、最大トルク420Nmを誇る。
変わったのはエンジンだけではない。見ての通り718ボクスターは内外装にも大幅に手が入れられている。エクステリアは、外板パネルのほぼすべてを変更。左右テールランプのあいだに「PORSCHE」のロゴが刻まれるなど、伝統を再解釈したような部分も見つけられる。
インテリアも円形のエアダクトが採用されるなどダッシュボードのデザインが一新されている。またインフォテイメントシステムとして、911に続いて新しいPCM(ポルシェ・コミュニケーション・マネージャー)が搭載された。朗報は、遂に日本仕様でも、こちらが選べるようになったこと。従来の、扱いづらかった後付け同然のナビとは、ようやくお別れである。
Porsche 718 Boxster|ポルシェ 718ボクスター
Porsche 718 Boxster S|ポルシェ 718ボクスター S
スポーツカーとしての地位は揺るがず (2)
ベストチョイスは718ボクスターSのMT仕様
最初に試乗したのは718ボクスターSのPDK仕様、スポーツエギゾースト付きという車両だった。まず印象を支配するのはドッドッドッと脈動感強く、そして野太いサウンド。従来の6気筒とは当然ながらまるで別物の響きは、荒々しさすら感じさせる。
ターボ化によって実用域のトルクは格段に充実していて、走り出した瞬間から「速い」と感じさせる。何しろ0-100km/h加速は4.2秒と、実は996ターボと肩を並べる数値なのだ。トルクカーブはフラットで、その意味では刺激に欠ける部分もなきにしもあらずなのだが、回すほどにビートの粒が揃ってくるから、パドルを使ってマニュアル変速しているときには、ついつい引っ張り気味にしてしまう。
718ボクスターもエンジンの基本的な感触は似通っている。アクセル操作に対する反応は十分に鋭く、ターボ特有のネガを意識させられることはない。動力性能的には、ボクスターらしくエンジンを思い切り回して楽しむには、このぐらいがちょうどいいところだろうか。いずれにしても、この音と振動は、好き嫌いが結構出てくるだろうなと感じたのは確かだ。
しかしながら、そのあとに718ボクスターSのMT仕様、それもスポーツエギゾースト無しという車両に乗ったところ、そんな印象は一変することとなった。低音を強調し過ぎない排気音は、それだけで吹け上がりまで軽やかに感じさせるほど。MTゆえに、無意識に引っ張り気味に走らせてもいるのだろう。ボクサーエンジンが本来もっているスムーズさを十分に味わうことができたのである。
どうやらこちらが正解という感じだが、特に2リッターの718ボクスターの場合は、ごく低速域のトルクが細いので、MTだと何度もエンストしかけてしまった。そこだけは要改善と指摘しておく。
Porsche 718 Boxster|ポルシェ 718ボクスター
Porsche 718 Boxster S|ポルシェ 718ボクスター S
スポーツカーとしての地位は揺るがず (3)
シャシーも大幅に進化
ついエンジンにばかり目が向いてしまうが、718ボクスターはシャシーも大幅に進化している。サスペンションがわずかに締め上げられ、ステアリングもギア比が速められたことで、ミッドシップならではのターンインの鋭さ、自分を中心に向きが変わっていくような旋回感覚は、さらに研ぎ澄まされた印象だ。
それでいて乗り心地も、むしろ上質感を増している。当たりはさらにしなやかになり、可変ダンピングシステムであるPASMをSPORTやSPORT PLUSにしても、もちろん減衰力は高まるのだが、決してガツンというショックを伝えてきたりはしないのである。メカニズムの基本的な部分は変わっていないにもかかわらず、その進化は走ってすぐに明らかに違いがわかるほどなのだから、大したものだと唸るしかない。
今回惜しかったのは、新たに設定されたPSM Sportモードを体感できなかったことだ。ある程度のスライドを許容するだけでなく、スロットル開度を巧みに制御してドリフト維持を容易にするところまで手伝ってくれるこのモードは、思い通り操る喜びをより多くの人に味わわせてくれるに違いない。
実際のドライビングフィールとして、あるいはイメージとしても、4気筒ターボのエンジンにはやはり複雑な思いを抱く人も少なくないとは思う。少なくとも、最初のうちは。しかしながらスポーツカーとしてのトータルの完成度で見て、じゃあコレ以外の選択肢があるのかと言えば、やはりその地位が揺らぐことはない、と言い切ることができる。個人的には、懸案のエンジンもスポーツエギゾースト無し、そしてできればMTならば納得できる範囲かなというところだ。
なお、これを期にミッドシップモデルは718シリーズとして統合され、ケイマンもすでに新型が「718ケイマン」として発表されている。これまでの2車の関係性とは異なり、両モデルのエンジンスペックには差はつけられてはいない。それどころか発表された価格を見ると718ケイマンのほうが、718ボクスターより廉価に設定されている。
その意味でも718ボクスターは、ポルシェのエントリーモデルという従来の位置づけから脱して、これまでとは違った個性を持ったモデルへと生まれ変わったと見るべきかもしれない。市場での反応が、これまで以上に楽しみな1台である。
Porsche 718 Boxster|ポルシェ 718ボクスター
ボディサイズ|全長 4,379 × 全幅 1,801 × 全高1,281 mm
ホイールベース|2,475 mm
トレッド前/後|1,515 / 1,532 mm
車両重量|1,335 kg
エンジン|1,988cc 水平対向4気筒ターボ
ボア×ストローク|91.0 × 76.4 mm
圧縮比|9.5
最高出力|220 kW(300 ps)/6,500 rpm
最大トルク|280 Nm/1,950-4,500 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(PDK)/ 6段AT
駆動方式|MR
最小回転半径|5.49 メートル
ブレーキ 前|φ330×28mm ベンチレーテッド ディスク
ブレーキ 後|φ299×20mm ベンチレーテッド ディスク
サスペンション 前|マクファーソン ストラット
サスペンション 後|マクファーソン
タイヤ 前/後|235/35R18 / 265/45R18
最高速度| 275 km/h
0-100km/h加速|(7PDK)4.9 秒(Sport+では4.7秒) (6MT)5.1 秒
0-200km/h加速|(7PDK)18.1 秒(Sport+では17.8秒) (6MT)18.3 秒
燃費(NEDC)|(7PDK)6.9 ℓ/100km(およそ14.5km/ℓ) (6MT)7.4ℓ/100km(およそ13.5km/ℓ)
CO2排出量|(7PDK)158 g/km (6MT)168 g/km
価格|(7PDK)710万4,000円 (6MT)658万円
Porsche 718 Boxster S|ポルシェ 718ボクスター S
ボディサイズ|全長 4,379 × 全幅 1,801 × 全高1,280 mm
ホイールベース|2,475 mm
トレッド前/後|1,515 / 1,540 mm
車両重量|1,355 kg
エンジン|2,497cc 水平対向4気筒ターボ
ボア×ストローク|102.0 × 76.4 mm
圧縮比|9.5
最高出力|257 kW(350 ps)/6,500 rpm
最大トルク|420 Nm/1,900-4,500 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(PDK)/ 6段AT
駆動方式|MR
最小回転半径|5.49 メートル
ブレーキ 前|φ330×34mm ベンチレーテッド ディスク
ブレーキ 後|φ299×20mm ベンチレーテッド ディスク
サスペンション 前|マクファーソン ストラット
サスペンション 後|マクファーソン
タイヤ 前/後|235/35R18 / 265/45R18
最高速度| 285 km/h
0-100km/h加速|(7PDK)4.4 秒(Sport+では4.2秒) (6MT)4.6 秒
0-200km/h加速|(7PDK)15.0 秒(Sport+では14.7秒) (6MT)15.2 秒
燃費(NEDC)|(7PDK)7.3 ℓ/100km(およそ13.7km/ℓ) (6MT)8.1ℓ/100km(およそ12.3km/ℓ)
CO2排出量|(7PDK)167 g/km (6MT)184 g/km
価格|(7PDK)904万4,000円 (6MT)852万円
ポルシェカスタマーケアセンター
0120-846-911
http://www.porsche.com/japan/jp/