ジャガー初のSUV「Fペース」に試乗|Jaguar
CAR / IMPRESSION
2016年5月31日

ジャガー初のSUV「Fペース」に試乗|Jaguar

Jaguar F-Pace|ジャガー Fペース

ジャガー初のSUV「Fペース」に試乗

速くて快適、そしてスポーティ

ジャガーが史上初めて手掛けたSUV「Fペース」。最初のコンセプトモデル「C-X17」が披露されてから3年、巨大な垂直ループのスタントでSUVらしからぬ高い運動性能を証明しながらのワールドプレミアも記憶に新しい。そのFペースに河村康彦氏がモンテネグロで試乗。ジャガーは、初となるSUVをどのように仕上げたのか。

Text by KAWAMURA Yasuhiko

ランドローバーに隠れていた存在

ジャガーが手掛けるSUV――ほんの10年程の前までは、そうしたモデルなど、想像だにできなかったものだ。

フォードが“親会社”であったそんな当時のジャガー車ラインナップは、「満を持しての市場投入」であったはずの「Sタイプ」や「Xタイプ」が、思い通りの成果を果たせずに大苦戦。並行して販売中のフラッグシップセダンである「XJシリーズ」は、自身の歴史と伝統に過分の重きを置くあまり、最新技術を駆使したアルミニウム製骨格を手にしながらも、見た目上ではそうした先進性をアピールすることがままならず、コンサバティブそのものの受け身に回ったデザインから、こちらもまた存在感の薄さに繋がっていた。

結局、ひとつのヒット作にも恵まれることなく、アストンマーティンから移籍したイアン・カラム氏が同社のデザインディレクターとなって初の作品である、披露されたての新型「XK」だけが期待と注目の存在だった、という状況。

Jaguar F-Pace First Edition|ジャガー Fペース ファーストエディション

Jaguar F-Pace First Edition|ジャガー Fペース ファーストエディション

かように、今から10年ほど前のこのブランドは、SUVの導入どころか「生き残るのが精一杯」と、むしろそのように表現したほうがふさわしい状態にあったのだ。

同時に“ジャガーのSUV”が想像し難かったのは、このブランドが4WDモデルではエキスパートのランドローバー社と、「密接な関係を持った兄弟メーカー」であったという点にも理由がある。

実際、「ウチにはランドローバーがあるからね!」というフレーズは、今から確か5~6年ほど前に、前出イアン・カラム氏に当方が直接「将来的に、“ジャガー ブランドのSUV”に興味はないのか?」という質問を投げかけたさいの回答でもあったもの。

そう言われればそうだよナ――と、その場では何となく納得してしまったものの、コンセプトモデル「C-X17」が披露されたのは、2013年のフランクフルト モーターショーの舞台。

そんなC-X17のイメージが“量産型”である「Fペース」で忠実に再現されたことを思えば、前出カラム氏のコメントが、すでにジャガー発のSUVの存在を「言いたくても言えない段階」にあったものであるのは明らかだろう。

Jaguar F-Pace|ジャガー Fペース

ジャガー初のSUV「Fペース」に試乗

速くて快適、そしてスポーティ (2)

パフォーマンス クロスオーバー

皮肉なことに、フォード傘下を外れた後に苦境から脱し、「Fタイプ」に「XE」、さらには新型「XF」――と、さまざまなカテゴリーのニューモデルがまさに“収穫期”にあるのが昨今のジャガー。そうしたなかで投入されたこのブランド初のSUVであるFペースは、まずはそのルックスで多くの人々を魅了することになるはずだ。

国際試乗会の舞台となったのは、アドリア海を挟んで“イタリア半島のかかとの対岸”とでも表現をしたくなるロケーションにあるモンテネグロの地。快晴の陽光の下で目にするFペースのスタイリングは、用意された3色のどのボディカラーのモデルも、とてもスタイリッシュでスポーティであることが、まずは印象的だった。

なかでも、前出コンセプトモデルのC-X17を彷彿とさせる目にも艶やかなブルーのボディに、22インチ(!)シューズを履いた世界限定2,000台、そのうち50台が日本に導入されることが決定済みの「ファースト エディション」のルックスは、圧倒的な存在感を放ちつつも過度な押し出し感は抑えられ、SUVらしからぬ流麗なスポーティさが何とも魅力的。

Jaguar F-Pace First Edition|ジャガー Fペース ファーストエディション

ジャガーでは、このモデルを『パフォーマンス クロスオーバー』と表現するが、なるほどそれは、単なる“SUV”とは紹介をしたくない気持ちも納得の仕上がりだ。

ネーミングのヒントになったピュアスポーツ モデル「Fタイプ」と共通するモチーフを採用したフロントマスクやテールランプに、最新ジャガー車ならではのデザイン言語が強く実感をできる一方で、イグニッションオンとともにセンターコンソールからせり上がる大きなダイヤル式のATセレクターなど、インテリア デザインも最新ジャガー流儀の仕上がり。

Jaguar F-Pace First Edition|ジャガー Fペース ファーストエディション

Jaguar F-Pace First Edition|ジャガー Fペース ファーストエディション

大人4人に十二分なキャビンスペースと、広いラゲッジスペースを確保することから、“ジャガーでもっとも実用的なスポーツカー”というセールストークも用いられるのが、Fペースのパッケージングでもある。

さすがに、他のジャガー車に比べればドライバーズシートは高い位置にあるものの、乗降性は決して悪くない。SUVではありながらやや脚を前方へと投げ出し気味に座るのは、なるほどランドローバーの作品群とは明確に異なるスタンスだ。

Jaguar F-Pace|ジャガー Fペース

ジャガー初のSUV「Fペース」に試乗

速くて快適、そしてスポーティ (3)

ジャガー車のなかにあっても最上級と思える快適性

まず乗ったのは、最高380psの出力を発するFタイプ譲りのメカニカル スーパーチャージャー付き3リッターV6エンジンを、8段ATとの組み合わせで搭載する前述のファースト エディション。同じパワーパックを積む「S」グレードがそのベースで、“シージアム ブルー”と名付けられた青色は、このモデル専用に設定されるボディ色だ。

ただし、こうしてコンセプトモデルのイメージ再現に注力したゆえに、「恐らく乗り味は、ちょっと厳しいものになっているかも知れないナ――」というのが、スタート前の正直な印象でもあった。22インチのシューズは見た目には何ともスタイリッシュだが、あまりに大径に過ぎないか? と、そんな疑念が拭えなかったのだ。

Jaguar F-Pace First Edition|ジャガー Fペース ファーストエディション

Jaguar F-Pace First Edition|ジャガー Fペース ファーストエディション

が、走り初めて即座に、そんな心配は杞憂であることを教えられた。バネ下の動きは思いのほか軽やか。サスペンションそのものはやや硬めのセッティングを意識させられるものの、「シューズが大き過ぎる」という印象は一切抱かされない、しなやかな乗り味が実現されていたからだ。加えれば、そんなタイヤが発するロードノイズが予想と覚悟をしていたよりも遥かに小さく、快適性全般が「ジャガー車のなかにあっても最上級!」と思えるレベルにあったことも驚きだった。

欧州仕様車のデータとして発表されている、このモデルの車両重量は1,861kg。そこに前出パワーパックを搭載した結果、0-100km/h加速タイムはおよそ5.5秒との発表。さすがに、Fタイプには及ばないものの、これはもはや一級スポーツカーレベルと表現して過言ではない速さであることは間違いなし。4WDシステムを採用するので、もちろんトラクション能力にも不満があろうはずがない。

Jaguar F-Pace First Edition|ジャガー Fペース ファーストエディション

Jaguar F-Pace First Edition|ジャガー Fペース ファーストエディション

タイトなワインディングロードでは、1.9メートル超の全幅が気になるシーンもあった一方、いざ自身で操ってみれば「実際よりも小さく感じられる」という印象を受けたのは、視界の良さに加え、自在なハンドリング感覚が得られたゆえでもある。前出4WDシステムは、基本的に後輪側へとより多くのエンジントルクが配分されるセッティングが採用されている。

いずれにしても、速くて快適、かつスポーティなテイストに溢れたその走りの感覚は、「さすがはジャガーのSUV」と納得の行くもの。端的に言って、これまで“SUVのスポーツカー”というタイトルをひとり占めして来たポルシェ「マカン」は、かつてない強敵を迎えることになったのは間違いない。

Jaguar F-Pace|ジャガー Fペース

ジャガー初のSUV「Fペース」に試乗

速くて快適、そしてスポーティ(4)

ジャガーならではのSUV

一方、そんなファースト・エディションから、すでにXEやXFに積まれて日本にも上陸済みの新世代ディーゼルエンジンを搭載した「20d Rスポーツ」へと乗り換えると、こちらはこちらで新たなFペースの魅力を教えてくれることとなった。

ターボ付きの2リッター ディーゼルユニットが発する最高出力は、ファースト エディションに比べると実に200psものダウンとなる「わずかに」180ps。ところが、いざ実際に乗ってみると特に街乗りシーンではなかなかの力強さが味わえるのは、こちらの心臓は430Nmという最大トルク値を、1,750rpmというより日常的に多用するポイントから発してくれるからだ。

Jaguar F-Pace 2.0d R-Sport|ジャガー Fペース 2.0d Rスポーツ

Jaguar F-Pace 2.0d R-Sport|ジャガー Fペース 2.0d Rスポーツ

それでも動き始めの一瞬だけは、わずかに“重さ”を意識させられる。が、そこを過ぎれば動きの軽快感に文句は出ない。

ハンドリングの軽快感が、前出ファースト エディションに勝るとも劣らないのは、4気筒エンジンのこちらのほうが、ノーズセクションの絶対的な重量がより軽いからと考えられる。確かに、ディーゼル エンジンならという音色は耳に届くものの、それでも静粛性には不満ナシ。

すなわち、こちらもまた十分スポーティかつ快適な、“ジャガーならではのSUV”というテイストを、タップリと味わわせてくれるのだ。

言うまでもなく、SUVの世界で言わばジャガーは新参者。

が、そうした白紙からのスタートであったからこそ、世に姿を現したFペースには、自らが理想とするモデルを完成できたという、自由闊達さと自信のほどが滲み出ているようにも感じられるのだ。

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Jaguar F-Pace First Edition|ジャガー Fペース ファースト エディション
ボディサイズ|全長 4,731 × 全幅 1,936 × 全高 1,652 mm
ホイールベース|2,874 mm
トレッド 前/後|1,641 / 1,654 mm
重量|1,861 kg
エンジン|2,995cc V型6気筒スーパーチャージド
ボア × ストローク|84.5 × 89.0 mm
圧縮比|10.5
最高出力|280 kW(380 ps)/6,500 rpm
最大トルク|450 Nm/4,500 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動|4WD
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン/インテグラルリンク
0-100km/h加速|5.5秒
最高速度|250km/h
最小回転半径|5.9 メートル
最低地上高|213 mm
燃費(EU複合)|8.9 ℓ/100km(およそ11.2 km/ℓ)
CO2排出量|209 g/km
トランク容量|650リッター
乗車定員|5名
価格|1,189万円

Jaguar F-Pace 20d R-Sport|ジャガー Fペース 20d Rスポーツ
Jaguar F-Pace 20d R-Sport|ジャガー Fペース 20d Rスポーツ
ボディサイズ|全長 4,731 × 全幅 1,936 × 全高 1,652 mm
ホイールベース|2,874 mm
トレッド 前/後|1,641 / 1,654 mm
重量|1,775 kg
エンジン|1,999cc 直列4気筒ターボチャージド ディーゼル
ボア × ストローク|83.0 × 92.4 mm
圧縮比|15.5
最高出力|132 kW(180 ps)/4,000 rpm
最大トルク|430 Nm/1,750-2,500 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動|4WD
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン/インテグラルリンク
0-100km/h加速|8.7 秒
最高速度|208 km/h
最小回転半径|5.9 メートル
最低地上高|213 mm
燃費(EU複合)|5.3 ℓ/100km(およそ18.9 km/ℓ)
CO2排出量|139 g/km
トランク容量|650リッター
乗車定員|5名
価格|728万円

※価格以外は欧州仕様の値

問い合わせ先

ジャガーコール

0120-050-689(9:00-18:00、土日祝日を除く)

           
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