ボルボのクリーンディーゼル モデルに試乗する|Volvo
CAR / IMPRESSION
2015年9月30日

ボルボのクリーンディーゼル モデルに試乗する|Volvo

Volvo V40 D4|ボルボ V40 D4

Volvo S60 D4|ボルボ S60 D4

Volvo XC60 D4|ボルボ XC60 D4

ボルボのクリーンディーゼル モデルに試乗する

ボルボ・カー・ジャパンが、自社による新開発の2リッター4気筒ターボディーゼルエンジン「D4」を、日本仕様の「V40」「V40クロスカントリー」「S60」「V60」「XC60」の計5モデルに搭載し、このほど発売した。ボルボがディーゼル車を日本導入するのは、2.4リッター直6ターボエンジンを搭載した1984年の「760ターボディーゼルセダン」以来のこと。32年ぶりのディーゼルのできはいかに? 塩見智氏が、その実力と乗用車ディーゼルムーブメントの背景についてリポートする。

Text by SHIOMI SatoshiPhotographs by ARAKAWA Masayuki

ディーゼル日本導入ラッシュ第2の波

ボルボのディーゼル導入は、欧州ブランドのディーゼル日本導入ラッシュの第二波のはじまりを意味する。

ボルボに続き、フォルクスワーゲン ジャパンは先日発表した新型「パサート」に今年末ディーゼルモデルを追加することを明らかにしたし、おなじグループのアウディ ジャパンも来年早々に複数のモデルにディーゼルを搭載すると発表済み。ジャガー・ランドローバー・ジャパンもブランニューモデルのジャガー「XE」にディーゼルを追加することを決めている。このほかプジョー・シトロエン・ジャポンは今秋の東京モーターショーにディーゼルの「508」を発表し、来年早々に日本で売り出す。そのエンジンはいずれ売れ筋モデルの「308」にも積まれるはずだ。

VWによるディーゼルエンジン不正事件が明らかになり、事の真偽とは関係なく、メーカーを問わず一時的にディーゼルエンジンへの不信感が強まるのは避けられないだろうが、長い目で見れば、ディーゼルエンジンは変わらずソリューションのひとつとして存在感を示すはずだし、ディーゼル後進国の日本でも、中期的には輸入車を中心に比率が高まっていくはずだ。

Volvo S60 D4|ボルボ S60 D4

Volvo S60 D4

Volvo D4 Engine|ボルボ D4 エンジン

Volvo D4 Engine

すでに4気筒ディーゼルを日本で販売しているBMW(ミニを含む)とメルセデス・ベンツに続き、ここへきて、どうしてこんなに次々と導入されることになったのか。

理由はふたつある。段階的に厳格化されてきた欧州の排ガス規制値が、元々厳しいことで有名な日本の規制値に近づいてきたため、莫大なコストをかけずとも日本仕様を用意することができるようになったというのがひとつ。もうひとつは、ここ数年、マツダがディーゼル車を幅広くラインナップし、この国のディーゼル市場を活性化させたことを受け、欧州各社がそれを商機ととらえたからだ。

というわけで、ようやく日本でも多彩なディーゼルモデルを選べるようになった。ひいきの欧州ブランドにディーゼルがラインナップされるのを待って待って待った皆さん、あとひと息です。待ちきれずにガソリンモデルを買った皆さん、近頃の直噴で過給器付きのガソリンエンジンはディーゼル並みの力強さを発揮しますので、そんなに悲観することはありません。待ちきれずにディーゼルモデルを並行輸入で買った皆さん、円高ならもっと安く買えたのにね。

Volvo V40 D4|ボルボ V40 D4

Volvo S60 D4|ボルボ S60 D4

Volvo XC60 D4|ボルボ XC60 D4

ボルボのクリーンディーゼル モデルに試乗する (2)

ライバルとの比較

さて、ボルボのディーゼルについて。いずれのモデルも最高出力190ps/4250rpm、最大トルク40.8kgm/1750-2500rpmというスペックはおなじ。参考までに、ざっと各社の2リッター直4ターボディーゼルのスペックを見てみよう。

――BMW縦置き(3シリーズ、5シリーズ、X3)
最高出力184ps/4,000rpm、最大トルク38.7kgm/1,750-2,750rpm
――BMW横置き(2シリーズ アクティブツアラー)
最高出力150ps/4,000rpm、最大トルク33.7kgm/1,750-2,750rpm
――ミニ クーパーSD(クロスオーバー、ペースマン)
最高出力143ps/4,000rpm、最大トルク31.1kgm/1,750-2,700rpm
――ミニ クーパーD(ペースマン)
最高出力112ps/4,000rpm、最大トルク27.5kgm/1,500-2,500rpm
――ジャガーXE(予定スペック)
最高出力180ps/4,000rpm、最大トルク43.8kgm/1,750-2,500rpm
(VW、アウディ、プジョーのディーゼルについてはまだ日本仕様がどういうスペックになるのか明らかになっていない)

Mini Cooper SD Crossover

Mini Cooper SD Crossover

Jaguar XE Polaris R-Sport

Jaguar XE Polaris R-Sport

ついでに、現在日本で買える2リッター以外の4気筒ディーゼルのスペックも見てみよう。

<1.5リッター>
――マツダ スカイアクティブ-D(デミオ)
最高出力105ps/4,000rpm、最大トルク25.5kgm/1,500-2,500rpm

<2.2リッター>
――メルセデス・ベンツ(E、CLS)
最高出力177ps/3,200-3,800rpm、最大トルク40.8kgm/1,400-2,800rpm
――マツダ スカイアクティブ-D(アテンザ、アクセラ、CX-5)
最高出力175ps/4,500rpm、最大トルク42.8kgm/2,000rpm

<2.3リッター>
――三菱(デリカD:5)
最高出力148ps/3,500rpm、最大トルク36.7kgm/1,500-2,750rpm

<2.8リッター>
――トヨタ(ランドクルーザー プラド)
最高出力177ps/3,400rpm、45.9kgm/1,600-2,400rpm

Mercedes-Benz CLS 220 BlueTEC Shooting Brake

Mercedes-Benz CLS 220 BlueTEC Shooting Brake

Mazda Atenza

Mazda Atenza

これを見ると、D4の最大トルク40.8kgmというのは2リッターターボディーゼルとしては平均的で、最高出力190psはなかなかの高出力ということになる。

Volvo V40 D4|ボルボ V40 D4

Volvo S60 D4|ボルボ S60 D4

Volvo XC60 D4|ボルボ XC60 D4

ボルボのクリーンディーゼル モデルに試乗する (3)

余裕あるパワーとエコの実力

ただし、スペックはあくまでスペックだ。乗ってみないことには、実際の、あるいは体感上の速さ、力強さはわからない。

最初に試乗したのはXC60。車外で聞くエンジン音は「カタカタ」というディーゼル特有のノック音が強く、うるさいとは言わないものの、音量はそれなりに大きい。が、ドアを開けて乗り込んでドアを閉めると、その印象はがらり一変して静か。振動も少ない。遮音と制振の対策がしっかりなされているのがわかる。例えば、エンジンのヘッドカバー。ヘッドの上にプラスチックのパネルを固定するのが一般的だが、ボルボのそれは分厚く、柔らかなスポンジ状のものがヘッドにくっつくように固定されている。

Volvo V40 D4|ボルボ V40 D4

Volvo V40 D4

Volvo S60 D4|ボルボ S60 D4

Volvo V40 D4

走らせはじめれば、さらに音も振動も気にならなくなり、言われなければパッセンジャーはディーゼルとは思わないのではないか。いっぽうドライバーは知らずに乗っても力強さによってすぐにディーゼルだと気づくだろう。低回転から豊富なトルクが立ち上がるうえに、8段ATがエンジンの回転数を効率がよいゾーンにとどめたまま、ほぼショックなく次々ギアアップしていくため、望む速度に達するまでの時間が短い。スポーツカーに積まれるような高回転型のガソリンエンジンの場合、回転上昇の過程にドラマがあり、それを楽しむものだが、最新のターボディーゼルはそういうのをすっ飛ばしてサッと速度を上げる。

ディーゼルエンジンが“力強い”ことばかりを強調してしまったが、パワーに余裕があるということは、ペースを上げなければ燃費を稼ぐことができるということでもある。D4エンジンを搭載したボルボには「エコ+(プラス)モード」が設定される。このモードを選ぶと、ギアシフトとロックアップのポイントが最適化されるほか、アクセルペダルのレスポンスがマイルドになる(ペダルストローク自体も増える)。

また、完全停止せずとも時速7km/h以下になるとアイドリングストップが作動するのにくわえ、65km/h以上でアクセルペダルから足を離すとニュートラルになってエンジンブレーキが解除されることで燃費を稼ぐコースト機能も作動する。これらによって燃料消費量が最大5パーセントカットされる。

もうひとつ細かい点だが、世の多くのクルマにそなわるアイドリングストップは、ひとたびエンジンが再始動すると一定速度に達しないと再びアイドリングストップしないが、ボルボの場合、再始動後、1km/hに達すれば再びアイドリングストップする。

Volvo V40 D4|ボルボ V40 D4

Volvo V40 D4

Volvo V40 D4|ボルボ V40 D4

Volvo S60 D4|ボルボ S60 D4

Volvo XC60 D4|ボルボ XC60 D4

ボルボのクリーンディーゼル モデルに試乗する (4)

AWDモデルの登場を期待

力強く効率の高いパワートレーンを得た結果、元々乗り心地がよく、ハンドリングも適度にスポーティだったXC60のクルマとしての総合力は確実に向上した。唯一残念なのは、ディーゼルはFWDしか選べないということ。長い距離を走ってこそ真価を発揮するディーゼルモデルだからこそ、4WDと組み合わせて季節、天候、路面状態を気にせず出かけたい。

今回はXC60のほかに、S60、V40、V40クロスカントリーのD4搭載モデルにも試乗した。おなじスペックのエンジンを車重の軽いV40系に搭載したからといって、よけいに速いということはないが、軽い分、JC08モード燃費はV40が20.0km/ℓ、V40クロスカントリーが21.2km/ℓと、XC60の18.6km/ℓよりもよい。ちなみに、V40よりもV40クロスカントリーのほうが、車重は10kg重いにもかかわらず1.2km/ℓ燃費がよいのはたまたまだという。国産車ほど計測に力を注げない輸入車の場合、たまにそういうことが起きる。

Volvo D4 Engine|ボルボ D4 エンジン

Volvo D4 Engine

Volvo S60 D4|ボルボ S60 D4

Volvo S60 D4

ボルボは各ディーゼルモデルを、ライバルのおなじような装備のグレードに比べて少し安くなるよう値付けした。ほんの数年前には“ディーゼルモデルがある”ということだけで大きな特徴だったが、まもなく多くのブランドにディーゼルモデルがラインアップされ、ディーゼル同士を比べられる時代になるということのあらわれだろう。

現段階で言えるのは、あわてて買うことはないものの、もしディーゼルボルボに試乗して気に入ったのなら、各ブランド出そろうまで待つ必要はないということ。寒い地方の人、ウィンタースポーツをやるという人は、ディーゼルの4WDが出るまでもう少しの辛抱か。

080507_eac_spec
Volvo V40 D4 SE|ボルボ V40 D4 SE
ボディサイズ|全長 4,370 × 全幅 1,800 × 全高 1,440 mm
ホイールベース|2,645 mm
トレッド 前/後|1,545/1,535 mm
重量|1,540 kg
エンジン|1.968 cc 直列4気筒ディーゼル ターボ
ボア×ストローク|82.0 × 93.2 mm
圧縮比|15.8:1
最高出力|140 kW(190 ps)/ 4,250 rpm
最大トルク|400 Nm(40.8 kgm)/ 1,750−2,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
ブレーキ 前|ディスク
ブレーキ 後|ディスク
タイヤ 前/後|205/50R17
燃費(JC08モード)|20.0 km/ℓ
価格│399万円

Volvo S60 D4 R-Design|ボルボ S60 D4 R-デザイン
ボディサイズ|全長 4,635 × 全幅 1,865 × 全高 1,480 mm
ホイールベース|2,775 mm
トレッド 前/後|1,580/1,575 mm
重量|1,620 kg
エンジン|1,968 cc 直列4気筒 ディーゼル ターボ
ボア×ストローク|82.0 × 93.2 mm
圧縮比|15.8:1
最高出力| 140 kW(190 ps)/ 4,250 rpm
最大トルク|400 Nm(40.8 kgm)/ 1,750−2,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
ブレーキ 前|ディスク
ブレーキ 後|ディスク
タイヤ 前/後|235/40R18
燃費(JC08モード)|20.9 km/ℓ
価格│529万円

Volvo XC60 D4 SE|ボルボ XC60 D4 SE
ボディサイズ|全長 4,645 × 全幅 1,890 × 全高 1,715 mm
ホイールベース|2,775 mm
トレッド 前/後|1,630/1,585 mm
重量|1,800 kg
エンジン|1,968 cc 直列4気筒 ディーゼル ターボ
ボア×ストローク|82.0 × 93.2 mm
圧縮比|15.8:1
最高出力| 140 kW(190 ps)/ 4,250 rpm
最大トルク|400 Nm(40.8 kgm)/ 1,750−2,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
ブレーキ 前|ディスク
ブレーキ 後|ディスク
タイヤ 前/後|235/60R18
燃費(JC08モード)|18.6 km/ℓ
価格│675万円

問い合わせ先

ボルボ お客様相談室

0120-922-662

(平日 9:00 - 17:00)

           
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