ミニ クーパーSDクロスオーバーに試乗する|Mini
Mini Cooper SD Crossover|ミニ クーパーSDクロスオーバー
ミニ クーパーSDクロスオーバーに試乗する
日本向けのミニとして、はじめてディーゼルエンジンを搭載した「ミニ クーパー SD クロスオーバー」。ミニが代々スポーツモデルに冠している「クーパーS」と、エコな「クリーンディーゼル」の組み合わせが目を引くこのモデルの実力を大谷達也氏が確かめた。
Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki
クーパーSとディーゼルの組み合わせの意味
2014年9月、やんちゃでコンパクトなミニにディーゼル エンジン搭載モデルが追加された。その名も「ミニ クーパーSDクロスオーバー」の心臓部は、143ps/305Nmのハイパワーを誇る直列4気筒 2.0リッター ターボディーゼル エンジン。
かつてとは比べものにならないほどクリーンになったいっぽうで、相変わらずガソリンを凌ぐ省燃費性(ミニ クーパーSクロスオーバーを約19パーセント上回る16.6km/リッター)を誇るクリーンディーゼルがミニにも積まれるようになったのは時代の流れだろうが、注目して欲しいのはそのネーミング。
いうまでもなく、「クーパーSD」の名は、ミニにとってもっとも重要なグレード名のひとつである“クーパーS”の後ろにディーゼルを意味する“D”を組み合わせたもの。相当の自信と覚悟がない限り、ミニはこのネーミングを使わなかったはずである。
では、その印象はどうだったのか?
実は私、5ヵ月ほど前に今回とまったくおなじ広報車に試乗したことがある。それも“おなじ仕様”ではなく、試乗した個体そのものが同一だったのだ。「だったら、試乗した印象もおなじ」と考えるのが普通だろうが、面白いことにこれが微妙にことなっていた。
まず、アイドリング時のキンキンキンキンというノック音がほとんど聞こえなくなって、ディーゼルに乗っている感覚が大幅に薄らいでいたのだ。
スロットルを深めに踏み込んで加速していっても、耳に届くのは「ブオーッ!」という重低音ばかり。エグゾーストサウンドの雑味成分が明らかに減っている。しかもエンジンの回り方まで格段にスムーズ。わずか数1,000kmほどの走行でこれほどエンジンの印象が変化するとはまったく想像もつかなかったことだ。
Mini Cooper SD Crossover|ミニ クーパーSDクロスオーバー
ミニ クーパーSDクロスオーバーに試乗する (2)
刃物のようなシャープさ
とはいえ、低速回転域で分厚いトルクを生み出すターボディーゼル エンジンの美点はそのまま残っていて、2,000rpm前後の力強さは3.0リッタークラスのガソリン エンジンに匹敵するくらい。
試しに、軽く横Gがかかっている状態でガバッとスロットルペダルを踏み込んだところ、縦方向のグリップが不足して一瞬タイヤがスキッドするほど力強いダッシュを示した。そうした加速感が、高回転まで引っ張ったときに感じられるのではなく、低回転域で発揮されるところがいかにもディーゼルらしい。
いっぽうでハンドリングは、ゴーカートフィーリングを標榜するミニそのものだった。私なりの解釈で申し上げれば、生半可なコーナリングではクルマがほとんど傾かないほど高いロール剛性と、わずかな操舵量でも急激にノーズの向きを変えるゲイン(感度)の高さがミニのゴーカートフィーリングの源。この結果、ステアリングを握った拳の手首を軽くひねるだけで間髪入れずにコーナリングを始める機敏さをミニは備えている。
この特質はクーパーSDにもそっくり受け継がれていた。まるで鋭利な刃物のようにシャープなコーナリングは、直進付近だけでなく、たとえばステアリングを90度近くまで切ってもその鋭さを失わない。
だから、ちょっとスピードが乗っている状況だと、リアタイヤが滑り初めてスピンするんじゃないかという心配が頭をもたげるが、実際にはリアタイヤのグリップが失われることなく、安定したスタンスを保ったままコーナーをクリアする。
試乗中、コーナリング中にギャップに乗り上げてリアの荷重が抜けたとき、瞬間的にテールスライドしたことが一度だけあったものの、あとは徹頭徹尾グリップし続けた。このリアスタビリティの高さは驚異的でさえある。
Mini Cooper SD Crossover|ミニ クーパーSDクロスオーバー
ミニ クーパーSDクロスオーバーに試乗する (3)
スタビリティの高さが生む功罪
また、ハードコーナリング中もタイヤやブッシュがたわんでいる印象を与えず、足回りの動きがシャキッとしているところも、クーパーSDを含むミニ共通の特徴だ。
いっぽうで、これが災いしている側面もある。足回りにたわむ部分がなければ、振動やショックを吸収する逃げ場がなくなる。このため、路面のざらつきや段差などがミニはストレートに車内に侵入してくるのだ。細かな振動が伝わるという意味ではステアリングも同様。
そうしたある種の“荒さ”は、生き生きとして元気な若者であれば、クルマに乗っている実感を強く伝えてくれるものとして歓迎されるかもしれないが、一定以上の年齢を重ねた、もしくは実際の年齢以上に落ち着いてしまったユーザーには、洗練されていない印象を与える恐れがある。
でも、このテイストこそがミニなのだ。これが性に合わないのであればBMWを買えばいいだけの話。クーパーSDもまったく同様で、ディーゼル エンジンを積みながらも、ミニのキャラクターをよくここまで再現したとおもう。つまり、クーパーSDもミニそのもの。そのネーミングは伊達ではないのだ。
Mini Cooper SD Crossover|ミニ クーパーSDクロスオーバー
ボディサイズ|全長 4,105 × 全幅 1,790 × 全高 1,550 mm
ホイールベース|2,595 mm
トレッド 前/後|1,535 / 1,560 mm
重量|1,420 kg
エンジン|1,995 cc 直列4気筒DOHCディーゼル ターボ
最高出力| 105 kW(143 ps)/ 4,000 rpm
最大トルク|305 Nm/ 1,750-2,700 rpm
トランスミッション|6段オートマチック
ブレーキ 前|ディスク
ブレーキ 後|ディスク
タイヤ 前/後|205/55R17
燃費(JC08モード)|16.6km/ℓ
トランク容量|350-1,170 ℓ
価格│387万円
MINIカスタマー インタラクション センター
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