ポルシェ75年&テノールの巨星が選ぶ「至高のエンジン音」──コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2023が開催| Concorso d’Eleganza Villa d’Este
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2023年7月11日

ポルシェ75年&テノールの巨星が選ぶ「至高のエンジン音」──コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2023が開催| Concorso d’Eleganza Villa d’Este

911の原点

今回のポルシェ75周年クラスでウィナー、および「最も象徴的な自動車」賞に選ばれたのは、「901プロトティープ “クイックブラオ”だった。
901とは、先に「0」をはさむすべての3桁数字を商標登録していたプジョーの抗議を受けて改名する以前の911である。1963年フランクフルトショーで発表された。生産されたのは100台弱といわれる。さらに今回の参加車は、そのプロトタイプだ。
オーナーはアロイス・ルーフJr.氏。ドイツ・バイエルン州で長年ポルシェをベースにしたハイパフォーマンスカーを製造してきたRUF社の2代目社主である。
クイックブラオ(Quickblau)は「快速の青」を意味する。ルーフ氏は筆者に説明する。
「これは1962年から64年に13台造られた901試験車両の1台です」
ポルシェ75周年クラス ウィナー/「最も象徴的な自動車」賞:ポルシェ 901 プロトティープ “クイックブラオ” (1963) アロイス・ルーフJr.氏
各車には、ブラオマイセ(青いシジュウカラ)、フリーターマウス(コウモリ)といったニックネームが付けられていた。
「現存するのは2台で、1台は米国にある7号車バルバロッサ(赤ひげ王)、もう1台が6号車である、このクイックブラオなのです」
ポルシェはクイックブラオを駆使して、広範囲にわたるテストを実施する。担当したのはエンジン開発責任者だったフェルディナント・ピエヒだった。
続いて車両は65年からは911エンジンの設計者ハンス・メッツガー用のカンパニーカーに供される。その後67年、個人に売却されるが、新オーナーはクイックブラオをクラッシュさせてしまう。
「その壊れた個体を購入したのが、私の父でした」
父とはRUFの創業者アロイスSr.氏である。「18歳だった私に、『これがお前の最初のポルシェだ。自分で直せ』とね」とルーフ氏は振り返る。
ただし、アロイスSr.氏は911の水平対向6気筒は、息子には高性能すぎると判断。「そこで912の水平対向4気筒エンジンに換装しました」。修理後、約3年にわたり楽しんだという。
ポルシェ 901 プロトティープ “クイックブラオ” (1963)
後年ルーフ氏は父から継いだ社業の発展に専念。クイックブラオは惰眠を貪ることになる。
だがヒストリーを調べるうちに、5連メーターが初めて装着された車両であるなど、911史にとって貴重な1台であることを認識。2020年から22年にかけてフルレストアに取り掛かった。エンジンは初期の911用を発見して換装した。ニックネームの元となった美しいエナメルブルー6403と名付けられた塗色も、忠実に再現した。
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