モータージャーナリスト小川フミオ氏が選ぶ最新SUV ベスト10
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2020年6月30日

モータージャーナリスト小川フミオ氏が選ぶ最新SUV ベスト10

Best New SUVs

モータージャーナリスト小川フミオ氏が選ぶ最新SUV ベスト10

コンパクトからフルサイズまで、世界中でSUVブームがとどまるところをしらない。ここでは、モータージャーナリスト小川フミオ氏が、各メーカーからリリースされている最新SUVから、実際に試乗して選んだ最新SUVベスト10を紹介する。

Text by OGAWA Fumio

SUV=セダンにはない楽しさを持ったクルマ

外出自粛生活が長かった分、クルマ生活への夢はふくらむ。アウトドアを含めて楽しめるSUVを走らせる楽しさにも、憧れてしまう。ここではようやく自由にドライブに出られるようになった昨今、こんなモデルがいいのでは!というお薦めを選んでみました。
メルセデス・ベンツGクラス
SUV(スポーツユーティリティビークル)の定義は広くて、メルセデス・ベンツ「Gクラス」や「ディフェンダー」、それにトヨタ「ランドクルーザー」のような本格的クロスカントリー型4WDを含めることもあれば、米国に多い前輪駆動だって、はたまた、ステーションワゴン的なクロスオーバーだって含まれることも。
ランドローバー ディフェンダー
そこでここでも、すこしだけ間口を広くして、セダンにはない楽しさを持ったクルマと定義しようと思う。スタイリングしかり、悪路走破性しかり、そして運転する楽しさも、またしかり。
スズキ ジムニー
このところのSUVブームで、10台を選ぶのは難航した。けっこう個性的なモデルが多いからだ。選に漏れてしまったなかには、スズキ「ジムニー」(悪路走破性ピカイチ)やマツダ「CX-30」(コンパクトでスタイリッシュ)、あるいは「CX-8」(3列シートの使い勝手ばつぐん)なども含まれる。
マツダCX-30
メルセデスGクラスや最新の「GLS」もいいクルマだし、走りという点ではアウディの「SQ5」だって入れたい。フォルクスワーゲン「T-CROSS」は楽しいカラースキームを持っているし、トヨタが発表した最新の「ヤリスクロス」も雰囲気があって気になる。といった具合。
フォルクスワーゲンT-CROSS
漏れてしまったクルマだけ、えんえん書きつづっても、意外に面白いリストができる気がするぐらいだ。今回は一芸にひいでたというか、キャラクターがはっきりしたクルマを選んでみた。なので、興味のあるクルマがみつからなくても失望しないでください。
10位 シトロエンC5エアクロス
現代的ミニバンというべきモデルで、オフロード的なテイストを加味してある。ボディのグラフィクスの遊びが特徴。
前輪駆動方式であり、私は1970年代のシムカ(マトラシムカ)ランショを思い出した。全長4,160mmのボディに1,199cc3気筒エンジンのC3エアクロスと、全長4,500mmのC5エアクロスが日本で発売されている。
最大の魅力は、室内空間の余裕と、それに乗り心地。路面の凹凸を丁寧に吸収してしまい、なんだか雲に乗っているようだ。こういう味のクルマはほかにはない。
シトロエンがかつて1955年にDSで四輪に油圧と窒素ガスのサスペンションシステムを採用したとき、C5エアクロスの乗り心地が理想だったはず、とまで思う。
1,598ccのガソリンモデル(409万円)と、1,997ccのディーゼルモデル(431.9万円)が設定。どちらもよい。
9位 ランドローバーレンジローバーイボーク
スタイリッシュさがセリングポイントであるものの、オフロード性能もしっかりと高い。
車両の下の地面がモニターで見られるクリアサイトグラウンドビューをはじめ、最新技術のオンパレード。
「レンジローバー・ヴェラール」の姉妹車のような、美しい磁器を思わせるボディが目を惹く。初代イヴォークはいまも魅力があるいっぽう、この2代目も個性的だ。
インテリアも斬新。ウール素材やユーカリを使った植物繊維をシート表皮に使うアイデアも秀逸。
個人的にはスポーティな「R-DYNAMIC」より標準モデルのハンドリングが素直で好み。180psの2リッターディーゼル、200psと2449psの2リッターガソリンとパワートレインは3種類。472万円〜。
8位 アウディQ5
スタイリング的にはけれん味が少なく、通好みともいえるものの、運転の楽しさではかなり輝く。
1,984ccの4気筒ガソリンエンジンはよく回り、力もたっぷり。エンジンを上の回転までひっぱって走るスポーティなドライブの楽しみを味わわせてくれる(いまは1,968ccディーゼルの設定もあり)。
加速中にはとりわけ“いいエンジンだなあ、いいクルマだなあ”とため息が出るぐらい、クルマ好きを楽しませてくれるのだ。
クロスカントリー型4WD好きに対して”色目”をいっさい使わず、スポーティなドライブフィールを追求したいさぎよい設定が好ましい。705万円〜
7位 ジープチェロキートラックホーク
710psの6.2リッターV8搭載の、超がつくパワフルなSUV。“ホーク”シリーズのなかにあって“トラック”(サーキット)とつくだけある。
ソリッドなシャシーに組み合わせたスーパーチャージャー付きのこのエンジン(本国には自然吸気型の6.4リッターユニットもある)は、回転が上がるとかん高い金属的な作動音を発生。
静止から時速60マイルまで3.5秒で加速と公表されている加速を味わいながら、その音を聞くのは、ほかにない楽しみだ。深いエアダム、大径ホイールと大きなブレーキなど、オフロードは似合わなさそう。街かサーキットでとにかくカッコよいSUV。
そういえば、ロールスロイス・カリナンの「ブラックバッジ」なども、このワルいSUV路線ではないか。2018年から19年にかけて、1330万円超で限定発売された。2020年以降も期待。
6位 レクサスRX
2019年8月29日にマイナーチェンジを受けて、ぐっとよくなったレクサスのSUVにおいて中核をなすモデル。
めざましく改良されたのは、乗り心地とハンドリングだ。それまでのRXは、3.5リッターV6ハイブリッドのパワートレインを筆頭に、パワフルさでは印象的だったが、バランスがいまひとつだった。
このクラスのクルマ(全長4890mmで、中心価格帯は700万円台)にしては、スポーティさも快適さも、もっとよくてもいいのでは、と思わせたのは事実。
今回のマイナーチェンジ版で、そんな不満は吹きとんだ。メーカーはシャシーにまで手を入れるという大幅な改良。スポット溶接の個所を増やすとともに、適度なしなりを生むことでハンドリング向上に寄与するため接着材の使用個所も延長したそう。
サスペンションシステムにも手を入れ、コーナリング時のニュートラル性も向上。実際に運転すると、まさに開発者の狙いどおりの出来映えだ。
従来は“NXのほうがいい”と言ってきたが、いまは、“サイズで決めればNXでもRXでもまったく失望しない”と断言。513万円〜
5位 ランボルギーニウルス
スタイリングもハンドリングもパワートレインも見事のひと言。スポーツカーメーカーが手がけたSUVの傑作。
650psの8気筒エンジンにフルタイム4WDシステムの組合せをもった万能選手だ。プロファイル(サイドビュー)で観たときキャビンはコンパクトな雰囲気にして4ドアの機能的なSUVでありながら、ランボルギーニが作ると、ひと味もふた味もちがう、と思わせる。
その第一印象は、タイトに作られたコクピットに乗りこんだとき、エンジンをかけたとき、走りだしたとき、加速したとき、コーナリングしたとき、ブレーキを踏んだとき、ようするにあらゆる場面で、間違ってなかったと知れる。
もちろん、滑りやすかったり、岩場だったり、オフロードでも予想以上によく走る。個人的にはアルカンターラのシート表皮が好み。コクピットはレースカー的に仕上げて気分を盛り上げていたい。
全長5112×全幅2016mmのボディは“大きすぎる”と敬遠するむきもあるようだけれど、それであきらめては、もったいない。
4位 トヨタハイラックス
日本のクロスカントリー型4WDにおいては、スズキ ジムニーと並んで抜群の悪路走破性を誇る。
その意味ではまことに機能主義的なクルマなのだけれど、全長5335メートルの“ダブルクルー・キャブ(前後席にひとが乗れるキャビン)”トラックというのが、市街地では逆にシックだと思うのだ。
2.4リッターディーゼルエンジンは扱いやすく、乗り心地もけっして悪くない。1名乗車のまま高速道路を走っても疲労感はまったくないほどだ。
家族で乗るときは荷物の置き場に困るので(荷室はそのままだとむき出し)、TRDなどが用意しているキャノビーなど社外品のオプションを探す楽しみもある。
問題は、どんなかっこうをしたら似合うか、ということだ。もちろん、もっともしっくりくるのは荷台にATV(4輪バギー)や材木などを載せて走ることなんだが。332万1000円〜
3位 ボルボXC40
ちょっとコンパクトなサイズのSUVはこのところのトレンドだ。先鞭をつけた1台が、ボルボが2017年に発表したXC40といえる。
特筆点は、2プラス2的なスタイリングコンセプト。もちろん、大人2人に充分なスペースが後席にはあるのだけれど、後方がキックアップした後席ドアのウィンドウグラフィクスなど、前席に重点を置いたようなイメージも新鮮だった。
ボルボ車といえば、カラースキームに凝ったインテリアと、「センサス」と名づけられた縦長のタッチスクリーン式モニターをほぼ全モデルで展開。
XC40の室内でもボルボ独特のもてなし感が充分に味わえるのはよい。全長4.4メートルで市街地でも使いやすいサイズのSUVとして、日常的につき合うのに気持がいい。
ドイツのプロダクトだと、機能主義的になりがちなことを考慮しても、内装を独自の価値として評価したい。
日本でのラインナップは140kWの「T4」に前輪駆動とAWD、185kWの「T5」にAWDの組合せ。内装や装備によってさらにバリエーションが設定されている。
個人的には”素”の「T4  Momentum」が好み。ディーゼルエンジンを段階的に減らしていくのがボルボの“主義”で、燃費を重視する向きのために、欧州では先ごろ「XC40 Recharge T5プラグインハイブリッド」が追加された。396万2037円〜
2位 メルセデス・ベンツGLEシリーズ
2019年に日本導入された新型GLEシリーズは、ひと言でいって、みごとな出来映え。
日本では、「300d」という180kWの1949cc4気筒ディーゼル、「400d」という243kWの2924cc直列6気筒ディーゼル、それに「450」なる2996cc直列6気筒ガソリンモデルの3本立て。
6気筒のガソリンは発進時などに電気モーターの力を利用するうえ、ツインチャージャーシステムで低回転域から高回転域までカバーする「ISG」を装備。なので驚くほど速い。
この痛快に回るパワフルなエンジンにふさわしく、ハンドリングはシャープ。車高が1780mmあるSUVとは思えないようなドライバビリティが堪能できる。
6気筒ディーゼルも静粛でかつ回転マナーもけっこうスムーズでかつトルキー。よく合っている。
内装も、このGLE(そしてGLSへと続く)新しいデザインテーマでまとめられていて、LEDによるアンビエントライトの使い方や、ダッシュボードに並んだエアの吹き出し口の形状や、センタートンネルに設けられた(実用的な意味はよくわからないものの)大きなグラブハンドルの質感の高さといったものが、印象に残る。954万円〜
1位 BMW X7
3列シートを備えた全長5165mmの余裕あるサイズ。これが最大の特徴かといえばさにあらず。
このクルマでシビれるのは、「X7 xDrive 35d」搭載の2992cc直列6気筒ディーゼルエンジンだ。ガソリンエンジンのようにウルトラがつくぐらいスムーズに上の回転域まで吹け上がるうえに、ごく低回転域からトルクは充分。
車体の大きさをまったく意識させない。少なくとも走っているあいだは、せいぜいX3に乗っているような感じだ。それぐらい軽快で、アクセルペダルの踏み込み方に敏感、かつブレーキフィールも繊細で、コントロール性にも秀でている。
ハンドリングも素直で、ひらひらとレーンチェンジもこなす。BMWは前輪駆動になった新型1シリーズといい、3月に日本市場で本格的なローンチキャンペーンが始まった2シリーズグランクーペといい、最新モデルの出来のよさに感心させられている。
X7はそれらのクルマに較べるとだいぶサイズが大きいものの、操縦する楽しさを味わわせてくれるという点ではかなりの共通点があるのだ。
2列目シートはベンチタイプと、アームレストを左右に備えたキャプテンシートとが選べる。私は後者のぜいたくさが好きだなあ。1099万円〜
                      
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