アウディ S8 × 東儀秀樹|ボーダーレスではなく、アウト・オブ・ボーダー
アウディ S8 × 東儀秀樹
ボーダーレスではなく、アウト・オブ・ボーダー
既成概念にとらわれることなく、つねに新しい時代を切りひらいてきたカーブランド「アウディ」。彼らの思想が結晶化したそれぞれのモデルは、それゆえ、ひとびとを魅了して止まない。それは、同様の価値観のもとに、時代を創造しているクリエイターの姿とシンクロする。そんな両者をフィーチャーする新連載。その第二回は、雅楽師として、伝統と革新を融合させた独創的な作品でひとびとを魅了する東儀秀樹さんが登場する。
文=山崎哲士写真=吉澤健太
挑戦をつづけるクリエイターと、フラッグシップ中のフラッグシップ
アウディのフラッグシップモデル「A8」。その最上級サルーンのハイパフォーマンスモデルが、この「S8」。つまりはフラッグシップ中のフラッグシップ。ちなみにアウディにおける「S」の称号は、レーシングテクノロジーを反映した高性能エンジンとフルタイム4WDのクワトロシステムを搭載するスペシャルなパーケージであることの証明。そう、アウディS8は、ラグジュアリーとピュアスポーツを高次元で融合させた究極のラグジュアリースポーツサルーンなのである。
今回は、そんなアウディS8に似つかわしいゲスト、東儀秀樹さんにご登場願った。奈良時代から1300年続く楽家の血を引き、宮内庁式部職楽部で雅楽師として活躍。1996年に雅楽の持ち味を生かした独創的なファーストアルバム『東儀秀樹』でデビュー。以来、伝統的なものと革新的なもの、西と東をつなぐ魅力的な楽曲を次々と発表。まさにジャンルの壁を越え、絶えず挑戦を続けるクリエーターだ。
「それはあくまで後からそうなっただけで、僕自身は狙ったわけではないんです。ひらめいたのがこのカタチだったということ。ただ、古典に対して自信をもっていて、つねに愛しているから成り立っているとは思っています。と同時に、新しいものが好きなので(笑)。新商品がでたら触ってみないと気がすまない性格。日常がそうだから、自然に古いものと新しいものが融合されているんじゃないか、と」
クルマは性能とデザインのバランスが大切
独創的な“東儀秀樹”スタイルは音楽だけにとどまらない。乗馬やクレー射撃、イラストや写真撮影、腕時計やミニカーのコレクション……と、多彩な趣味の持ち主としても知られる。なかでもビンテージカーを複数所有するほどの大のクルマ好き。しかも、歴史的な名車をためらいもなく日常の足として使っている。
「クルマは道具。乗ってこそ価値があると思っています。あやつる楽しさと見た目の美しさ、つまり性能とデザインのバランスが大切」
これまで数多くのクラシックカーレースに出場。イタリア本国の「ミッレミリア」にも参加、日本人最高位に贈られるナショナルトロフィーを獲得したこともある。そんな経緯もあって、ユネスコ未来遺産運動の委員として、今年10月に開催されるクラシックカーレース「ラリーニッポン」をプロデュースした。
「ミッレミリアに参加して、たとえばアッシジの大聖堂とかで“あっ、ここで演奏したことがある!”と感激するんだけど、ほんの一瞬で走り抜けてしまう。だから、それを教訓に、通り過ぎないレースがあってもいいんじゃないかって。イタリアのミッレミリアが世界で一番美しいレースと言われているけど、日本でもそれに肩を並べるレースができるはず。文明の象徴、人間の英知の結晶であるクルマを駆って、日本の歴史や伝統といった文化を見つめ直す。そんなイベントになってくれたらうれしいですね」
ラグジュアリーなクルマにもスポーツ魂を
もちろんクラシックカーに限らず、最新テクノロジーを搭載する現代のクルマにも興味を惹かれるという。
「子どもの頃、ゼンマイのおもちゃを分解して、駆動部分だけを利用して別のおもちゃをつくったり……昔からメカニカルなものが好きなんです。ただ頭を切り替えていますね。やっぱり新しいクルマは快適であってほしいから(笑)」
といいながら、アウディ S8のドライバーズシートに座る東儀秀樹さんの目が突然輝きだした。
「僕はどんなにラグジュアリーなクルマであろうとも、そこにスポーツ魂を求めてしまうです。座った瞬間にそのスイッチが入りそうになりました。しっかりと固いシートの感じとか、目をつぶっても手を置いたところに必要なものがある考え抜かれたレイアウトとか」
タキシードでも、ノータイでも
つや消しのアルミ素材やカーボンを用いた「S8」のコックピットは、「A8」に比べると少し渋いともいえるが、逆に上質でスポーティーな印象。さらに東儀秀樹さんは、センターコンソールのMMIマルティメディアインターフェースを操りながら、バング&オルフセンのサウンドシステムや4段階に切り替え可能なエアサスペンションに注目していた。
「アウディのイメージはここ何年かで変わりましたね。スパルタンになった。とくにこのクルマは、そんなスポーティーなイメージとラグジュアリー感がうまく調和している。僕は、ひとを乗せたときはどんなスポーツカーでもすごく丁寧な運転をするんですが、ひとりだと、無茶な走りもする(笑)。S8は、タキシードを着てエスコートするときも、帰り道にネクタイを外したときも、両方が楽しめそうですね」
“OUT OF BORDER”--'07年に東儀秀樹さんが発表されたアルバムタイトル。つまり、ボーダーレスでなく、境界線をしっかり理解した上で飛び越える。
まさしくこの言葉こそが、時代を切り開く者たちをつなぐ。
TOGI Hideki
雅楽師。『東儀秀樹』(1986年)でデビュー。『雅楽』(2000年)で第15回ゴールドディスク大賞、『TOGISM2』(2000年)で日本レコード大賞企画賞を受賞。ほか多数のアルバムでゴールドディスク大賞を受賞する。文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。各メディアではTV番組の音楽、CM曲、舞台音楽など。海外での活躍もめざましく、カンボジアの世界遺産・アンコールワットやイタリア・アッシジの世界遺産・聖フランチェスコ教会の公演などを行う。また、絵本の挿絵やNHK大河ドラマ「篤姫」に孝明天皇役で出演するなど、マルチな才能ぶりを発揮。最新アルバムは『東儀秀樹/地球よ、』(2009年7月22日発売)。
Audi S8
アウディ S8は、ルマン24時間レースで5勝を重ねたアウディR8の直噴テクノロジーを採用する5.2リッターV型10気筒FSIエンジンを搭載。低回転から余裕のあるトルクを発生させ、加速・レスポンスともに優れる現時点でアウディ最強の1台、と言えるだろう。アウディスペースフレームと呼ばれるアウディ独自の軽量オールアルミボディ。Sモデル専用に開発されたスポーツ・アダプティブエアサスペンションを装備。フルタイム4輪駆動システム「クワトロ」は、通常走行時の前後のバランスを前輪40%に対して後輪60%とすることで、スポーティでダイナミックな走りを実現している。A8との外見上のちがいは、Sモデル専用のシングルフレームグリルとエアインテークの凛としたフロントフェイス。リアでは専用バンパーと大径のテールパイプである。価格は1510万円。
アウディコミュニケーションセンター 0120-598106
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