アウディ 2013|Audi
Audi|アウディ
アウディ 2013
ランボルギーニ、イタルデザイン ジウジアーロ、ドゥカティという、3つのイタリアンブランドを傘下におさめたのにくわえて、アウディブランド自体も好調なアウディグループ。さらなる成長と、環境負荷の大幅な低減にむけた具体的なヴィジョンがしめされた今年の年次記者会見を、小川フミオ氏がリポート
Text by OGAWA Fumio
アウディは好調だ
世界中で22秒に1台の割合でアウディが売れているという。とくに、中国や北米で販売は絶好調。アウディAGは、さる2013年3月12日に、ドイツ インゴルシュタットにおいて開催した記者会見で、明るい現状と未来への展望を語った。
今年のアウディの記者会見の会場は、ミュンヘンからクルマで45分ほど走ったインゴルシュタットにある本社。大きなホールにしつらえられた壇上には、ルーパート・シュタートラー取締役会会長をはじめとする、役員がずらりと並んだ。
アウディにおける2012年の売上げは、145万台。経済状況が不透明な時代にあっても前年より15万台増と、アウディは好調である。2015年の目標として以前より掲げられていた年販150万台も、2013年には達成できるかもしれないうえ、「200万台が次の目標」とするシュタートラー会長の言葉も、現実味すら帯びてきた。
アウディでは、年次株主総会開催に合わせて、世界各地からジャーナリストらを招待する。そこでは、活発な質疑応答をまじえて、近未来のアウディの活動も披露される。ゆえに貴重な場だといえる。
スマートフォン操作のA7も
今回は、シュタートラー会長がスマートフォンを操作すると、完全自動操縦システムを組み込んだ無人の「A7」が舞台の袖から登場して同会長の操作に従って走行する様子に、会場のいたるところから感心する声があがった。
また、既存の施設を利用しながらメタンガスを燃料に使う「A3 g-tron」の詳細など、さらなる環境適合技術のお披露目も大きな注目を浴びた。
Audi|アウディ
アウディ 2013(2)
好調のうちわけ
日本でも上級車種のハイブリッド版を投入したり、2013年は新型「A3」の発売を予定するなど、精力的な活動が注目されるアウディ。2012年も対前年で、14パーセントの販売増を記録して好調だ。
「昨年(2012年)、私たちは145万台超のアウディブランドの車両をデリバリーしました。2011年より約15万2,000台多い数字です。今日、私たちは、10年前の2倍の販売台数を誇ります。欧州の経済状況はおもわしくありませんが、私たちにとって重要な市場の状況は依然として上向きです」
シュタートラー会長は誇らしげにそう語るとともに、2012年(1月~12月)の業績は、売上488億ユーロ(約6兆1,000億円)。前年比110.6パーセントとしめした。そして2013年の営業利益は、過去最高の54億ユーロも可能という見解がしめされた。2015年までに150万台という販売目標が、前倒しに達成されるかもしれないとも。
さきに引用したシュタートラー会長の言葉にあった「重要な市場」での好調な販売状況について数字を挙げて説明した。
北米における2012年の販売は、対前年比118.5パーセント、アジアパシフィックは同128.1パーセント。「(2012年に)私たちはプレミアムブランドとして、はじめて40万台超の販売を記録。1995年の全生産台数に匹敵する数です」
そしてさらに中国の販売は伸びると語った。中国からのジャーナリストが今回は多く、質問も活発だった。
北米では、2012年は約14万台の販売を記録。5台に1台は、「A6」、「A7」、「A8」、そして「Q7」という高収益モデルだったことも、シュタートラー会長はつけくわえた。また、ロシアでの販売は台数こそ3.3万台だが、前年比では144パーセントという著しい伸びであることが大いに注目された。
いっぽう経済危機に見舞われているスペインでは、販売台数11.7パーセント減という例外的な厳しい数字だった。「ディーラーはかろうじて黒字を出している。今後私たちは、ディーラーを守っていく措置をとららければならない」と、セールスおよびマーケティング担当の役員、ルカ・ディ・メオ氏は語った。
Audi|アウディ
アウディ 2013(3)
イタリアのインスピレーション
今年のアウディでは、製品にまつわるニュースも多い。ひとつは、ランボルギーニ、ドゥカティ、イタルデザインを束ねることになったことだ。すべてイタリアの企業であることが興味ぶかい。
「イタリア企業とのコラボレーションからは、さまざまなインスピレーションが受けられる。これがアウディにとってのメリットでしょう」
そう語るのは、アウディデザインを統括するウォルフガング・エッガー氏だ。
「グッドデザインとは、ビジョンを持つこと。とても明確に未来を描く能力から、時代を切り拓いていくものが生まれます。イタリアのよさはクラフツマンシップといわれますが、そこにデジタル技術をくわえていくことで、他社にないパワーを持つことができるのです」
CNG ready
もうひとつは、環境適合技術。ハイブリッド「e-tron」はすでに路上に走り出しているが、今回はさらに「g-tron」なるCNGとガソリンのハイブリッド燃料を使うコンセプトモデルがお目見えした。
メリットはガスモードで走るかぎり排ガスがクリーンなことで、かつドイツでは、すでに国内にガスのパイプラインが巡らされているうえ、CNGスタンドも市街地にあるため、インフラの対応はすぐにできるのがメリットだ。ジュネーブショーで公開されたあと、欧州のメディアでは熱い注目を集めている。
Audi|アウディ
アウディ 2013(4)
増産とクオリティ
「今後3年間で、私たちは過去最大の投資計画を実行に移します。額にして110億ユーロにのぼり、うち約半分の55億ユーロはドイツ国内の工場の生産性強化のために充てます。今日、22秒に1台のアウディ車が販売されているわけで、生産設備も販売と歩調を合わせる必要があります」
シュタートラー会長は上記のように述べるとともに、さらに海外での増産計画にも言及した。
「現在、私たちは、ハンガリーのジュールと、中国の佛山に工場を持っており、生産量は段階的に増えています。この2つの工場で、2013年は30万台の生産を積み増しすることができるでしょう。さらに、メキシコのサンホゼ チャパにも新工場を建設することも決定しています。この工場が稼働すれば米国での販売がより順調になり、さらに関税なしで米国と欧州への輸出が可能となります」
増産にともなって、従業員の訓練もアウディのような高級ブランドには重要なこと、とシュタートラー会長は言葉をつづける。
「2013年に私たちは世界最大規模の訓練センターを北京に開設します。ディーラー拠点が増加しているだけに、アウディにふさわしいサービス(筆者注:修理など)技術を習得してもらう必要があるからです。私たちが重要視しているのは“数は質によってのみ確保できる”ということです」
さきにこのコラムで触れたように、アウディは既存の車種の量産にばかり熱心なのではない。ハイブリッドやCNG燃料車などによる環境対応や安全対応(自動操縦のA7もその一部)の技術開発にも余念がない。