フォルクスワーゲンの新たなるフラッグシップ「アルテオン」の真価|Volkswagen
Volkswagen Arteon|フォルクスワーゲン アルテオン
見た目以上にエッジィな、新たなるフラッグシップモデル
2013年3月のジュネーブモーターショーでデビューした、フォルクスワーゲン最新のフラッグシップモデル「アルテオン」。このたび日本上陸を果たした同モデルは、いったいどんなクルマに仕上げられているのか。その真価を探る。
Text by TAKI Masashi
公道走行可能なテクノロジーショーケース
クーペスタイルを纏った流麗なスタイリングに目を奪われがちだが、フォルクスワーゲン「アルテオン」の奥深さは、現在のフォルクスワーゲンの最新技術を集約させたファンクションにこそある。いわば公道走行可能な、テクノロジーショーケースでもあるのだ。
例えば(と、挙げ始めるとキリがないのだが)、トラフィックアシストという渋滞時追従支援システムと、パークアシスト(駐車支援システム)は、普段使いにおいてとても重宝するファンクションで、アルテオンが自動運転を見据えていることを強く示唆。部分自動運転機能が標準装備されているのだ。TVのCMでおなじみの安全に関わるクルマの先進技術のほとんどは(名前こそ違えど)標準装備されている。
さまざまな情報処理を軽減するインフォテイメントシステム、それを簡単に動かすジェスチャーコントロールなどもまた、標準装備。最新のアバンギャルドなファンクションが、近未来的なエレガントなフォルムにパッケージされている。
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見た目以上にエッジィな、新たなるフラッグシップモデル (2)
セダンでもステーションワゴンでもクーペでもないスタイリングを確立
そのダイナミックなファストバックデザインは「セダンの快適性、ステーションワゴンの機能性、クーペのスタイリッシュさを兼ね備え」ているとされていて、その言葉に偽りはない。
全長4,865×全幅1,875×全高1,435mmのボディサイズは「パサート」よりさらに一回り大きく、2,835mm ものロングホイールベースの確保することにより、室内空間は広大に。ナパレザーで仕立てたシートに腰掛ければ、一瞬それがスタイリッシュなファストバックであることを忘れてしまったほどだ。
さらにリアハッチを開けると、広大なラゲージルームが出現。フル乗車で563リッター、後席を倒せば1,557リッターという、ステーションワゴン並みの容量を誇っている。しかもそのパワーテールゲートは、SUVやステーションワゴン的に、足をバンパー下にやると開くイージーオープン機能付で、両手が荷物でふさがっているとき(意外と多いシチュエーションだ)など、とても便利。セダン的にも、ステーションワゴン的にも使えるのだ。
それでいてクーペを思わせるプロポーションを携えおり、ホイールアーチ上まで覆うボンネットや、水平のフロントグリルバーがLED ヘッドライトと一体となるようつながっているディテールは、ワイドボディをより一層強調。サイドビューにおいては、ボンネットからテールランプまで続くキャラクターラインが、より低く構えるような印象を演出。リアホイール上部のマッシブな膨らみは、あたかも隆起した筋肉を思わせる。
サイドウインドウはフレームレスで、ガラスエリア全体がクロームで縁取られ、アルテオンにエレガントな側面を与えている。スポーツカー的なディテールを随所に携えながら、セダンでも、ステーションワゴンでもクーペでもない、スタイリングを確立。そしていったんステアリングを握ってみれば、アルテオンが意外にも歩幅の広い、グランドツーリングカーであることが理解できるはずだ。
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感動的ですらある7段DSGの素早いレスポンス
ボンネットに収まるのは、最大出力 206kW(280ps)、最大トルク 350Nmを発生する2.0TSIエンジンで、駆動方式は4輪駆動の4MOTION を採用。トランスミッションは、新型「ゴルフ R」に採用されたものと同じ最新の湿式7段DSGで、とても精緻なフィールが印象的。大人4名乗車で、大人4名分の荷物を載せ、見通しの悪い夜のタイトなワインディングを1時間以上ドライブ、といったシチュエーションでも、この精緻さに救われストレスフリーに運転が楽しめる。
280psの2.0TSIエンジン+4MOTION+7段DSGの組み合わせは秀逸で、ワインディングロードでも高速道路でも余力は十分。終始リラックスしていられたから、グランドツアラーに間違いない。特に7段DSGの素早いレスポンス、ギアチェンジは特筆に値、感動的ですらある。
さらに、ブラックを基調としたR-Line デザインのインテリアにも、グランドツアラー的な華がある。アルミを用いたデコラティブパネルやピアノブラックのセンターパネルに、ナパレザーのシートトリムという組み合わせはスポーティな中にも上質さを演出。特別な空間を生み出している。
快適なのは前席ばかりでなく、長いホイールベースによりリアシートはクラストップレベルのレッグルームを確保。クーペ的な長いルーフはリアの頭上空間にも余裕を与えており、そのスタイリングから前席が上席と決めつけてしまうのは、いかにも惜しい。
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近未来的エクステリアにふさわしいコクピット
インテリアの話題でつけ加えたいのは、ジェスチャーコントロール機能付インフォテイメント システム「ディスカバープロ」、デジタルメータークラスター 「アクティブ インフォ ディスプレイ」やヘッドアップ ディスプレイなどの、最新デジタルインターフェイスのインテリジェンスについてだ。
それらは、近未来的エクステリアにふさわしいコクピットの演出に一役買っている。その使いこなしには少々の場数を要するが、オーナーに大きな恩恵をもたらしてくれる。なかでも往年の〝真空切り〟を思わせるジェスチャーコントロール機能は秀逸で、例えばオーディオでラジオ局の選曲をする際など、運転中の操作としてとても理にかなっている。その挙動はSF映画に出てくるスペースシップ的でもあり、ちょっと自慢したくなるファンクションだ。
アルテオンの多彩なカラーバリエーションもこのクルマのキャラクターを雄弁に物語っている。ビビッドなチリレッドメタリック(新色)や、ターメリックイエローメタリック(有償オプション)といったボディーカラーは、アルテオンがオーナーのプライベートユースに寄り添う、自己表現の一助となるクルマであることの証だろう。
このクルマにはバカンスの気配がする。アルテオンは目的地がスキーリゾートなのか、避暑のランナバウトなのか、それが週末だけなのか、長期滞在になるかを、全く問わない。いや、仕事から仕事へと街のなかを縫っていても、バカンスへの予感で束の間、オーナーを癒やしてくれることだろう。
アルテオンは目立つことを厭わない。見た目以上にエッジィな、フォルクスワーゲンの新たなフラッグシップモデルである。
Volkswagen Arteon|フォルクスワーゲン アルテオン
ボディサイズ|全長 4,865 × 全幅 1,875 × 全高 1,435 mm
ホイールベース|2,835 mm
トレッド前/後|1,585 / 1,575 mm
最低地上高|110 mm
車両重量|1,700 kg
エンジン|1,984cc 直列4気筒DOHCターボ
最高出力|206 kW(280 ps)/5,600-6,500 rpm
最大トルク|350 Nm(35.7 kgm)/1,700-5,600 rpm
トランスミッション|7段DSG
駆動方式|4WD
サスペンション前|マクファーソンストラット
サスペンション後|4リンク
ブレーキ|ベンチレーテッドディスク
JC08モード燃費|13.3 km/ℓ
定員|5人
最小回転半径|5.5メートル
価格|549万円(Rライン 4モーション)、599万円(Rライン 4モーション アドバンス)