フェラーリの極東エリア責任者にインタビュー|Ferrari
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フェラーリ極東エリア統括CEO、ディーター・クネヒテル氏にインタビュー
次の世代のフェラーリオーナーを開拓したい
年に1度のフェラーリ オーナーとファンのためのイベント「フェラーリ・レーシング・デイズ」。今年も3月5日、6日の2日間にわたって、鈴鹿サーキットを舞台に開催された。フェラーリにおける極東エリアの総責任者、ディーター・クネヒテル氏に、会場で話を聞いた。
Text by OPENERS
FXX Kが日本に初上陸
3月はじめのある週末、鈴鹿サーキットに甲高いエキゾーストノートが響きわたった。明らかに12気筒とわかるそのサウンドの持ち主は、フェラーリ「FXX K」。フェラーリのスペチアーレモデル、「ラ フェラーリ」をベースに開発された、最高出力1,050psを誇るサーキット専用車が、日本に初上陸し鈴鹿サーキットを駆け抜けた。
フェラーリオーナーとファンのための日本最大級のサーキットイベントとして毎年開催されている「フェラーリ・レーシング・デイズ(以下FRD)」。昨年の富士スピードウェイから鈴鹿サーキットに舞台を移して行われた今年は、週末の2日間で1万人以上のフェラーリファンと、500人以上のフェラーリオーナー、そして前述のFXX KやかつてのF1マシンをはじめ、数百台のフェラーリが鈴鹿サーキットに集結した。
さらに、メインイベントとなるフェラーリ公認ワンメイクレース「フェラーリ・チャレンジ・アジアパシフィック」も2016年シリーズ開幕戦として開催。国内外より過去最高となる35名の“フェラーリ乗り”が参戦し、伝統のグランプリコースで表彰台のセンターを目指し熱戦を繰り広げた。
「今回、フェラーリ・レーシング・デイズを鈴鹿サーキットで行ったのは非常に意味のあることなのです」
そう語るのは、フェラーリ極東エリア統括CEO、ディーター・クネヒテル氏だ。拠点となるシンガポールから鈴鹿サーキットに駆けつけた氏に、会場で話を聞いた。
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フェラーリ極東エリア統括CEO、ディーター・クネヒテル氏にインタビュー
次の世代のフェラーリオーナーを開拓したい (2)
日本のマーケットは欧米のそれと似ている
「フェラーリ・チャレンジ・アジアパシフィックに出走するドライバーは、フェラーリというブランドに対しパッションを持った、コアな方々といえます。彼らのなかには、鈴鹿サーキットが好きな方が非常に多い。口を揃えて、鈴鹿をシリーズ中でもっともエキサイティングなトラックだと言います。彼らのそうしたエキサイトメントは、このイベントにお集りいただいたティホシ(フェラーリファン)にも伝わるので、非常にすばらしいイベントになると確信しています」
今回、鈴鹿サーキットで開催されたFRDについて、プランニング段階からかなりのエネルギーとノウハウを注ぎ込み、非常に慎重に計画してきたと語るクネヒテル氏。イベントを楽しんでいるオーナーやファンの姿を目にし、充分な手応えを感じたようだ。
「私自身、プログラムの合間を縫ってFXX Kと488でコースを走りましたが、本当にグレートな瞬間でした。鈴鹿は、8字型のレイアウトがユニークで、長いストレートのあとの左の高速コーナーなど非常に厳しくチャレンジングなコースですが、とても楽しかったです」
そう言って笑みを浮かべるクネヒテル氏。フェラーリ・チャレンジ出走ドライバーたちの鈴鹿評を肌で感じたのだろう。聞けば、ドイツのホッケンハイムリンクをはじめ、中国の上海インターナショナルサーキットやマレーシアのセパンサーキットなど、これまでも多くのグランプリコースを自らドライブした経験があるのだそうだ。ちなみに、フェラーリ入社前は、シトロエンやルノー、そしてポルシェなどさまざまなカーブランドの仕事に携わってきたという。そんなカーガイであるクネヒテル氏にとって、日本のマーケットはどう映っているのだろうか。
「日本のカスタマーは、ブランドへのパッションがあるだけでなく、テクニカルな面についても造詣が深いのが特徴です。アメリカ、イタリア、イギリス、そしてドイツなど、レース文化が深く根づいている欧米の国々とよく似ていて、アジアでは非常に特異なマーケットです」
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フェラーリ極東エリア統括CEO、ディーター・クネヒテル氏にインタビュー
次の世代のフェラーリオーナーを開拓したい (3)
いたずらに販売台数を増やすようなことはしない
では、フェラーリにおける極東エリアの責任者として、クネヒテル氏は今後日本のマーケットをどう育てていくのだろうか。
「次のステップとしましては、新規顧客の開拓に力を入れていきたいと考えています。つまり、次の世代のフェラーリオーナーを育むことです」
そのための方策が、フェラーリがよりアフォーダブルになるようなファイナンスサービスと中古車認定システムの充実であり、「カリフォルニア T」のような、より幅広い顧客層に受け入れられるプロダクトラインナップなのだそうだ。事実、グローバルで見ればカリフォルニア Tオーナーの新規顧客率は7割におよぶ。
とはいえ、他のいかなるブランドよりもエクスクルーシブ性を大事にするフェラーリゆえ、今後もいたずらに販売台数を増やすようなことはしないという。
「極東エリアでも特に重要な、日本、オーストラリア、そして韓国のマーケットでは、つねに中古車価格をチェックしています。もし下落するようであれば、新車の販売台数をおさえることで、中古車の価値を維持するよう努めます。このようにしてマーケットの安定性を保つことが、フェラーリというブランドとオーナーの皆様にとって重要でだと考えています」
カリフォルニア Tと「GTC4ルッソ」という2台のGTシリーズを、ビジネスにおける重要車種に位置づけているというクネヒテル氏。では、グランプリコースを嬉々として走るカーガイとして、もっともお気に入りのモデルは?
「F12ベルリネッタです。740psを誇るスーパーカーですが、実はとても運転しやすいんです。もちろん非常にパワフルで、ひとたびアクセルペダルを踏み込めば、サーキットの王様になった気分に浸れるのも魅力です」
Dieter Knechtel|ディーター・クネヒテル
フェラーリ極東エリア統括CEO
1972年オーストリア生まれ。ウィーン大学でマーケティングの修士号を取得した後、シトロエン・オーストリアに入社し、自動車分野でのキャリアをスタートさせた。その後ルノーを経て、2006年以来、中国のポルシェ・ホールディングにおいて、BMW、ポルシェ、フォルクスワーゲン、ベントレーといったブランドの事業展開等に携わる。2015年4月にフェラーリに入社、極東エリアの責任者として北東アジア(日本、韓国)および東南アジア(ASEAN諸国)、オーストラレイシア(オーストラリア&ニュージーランド)におよぶアジアパフシフィック地域におけるフェラーリの各業務を担当。