サーキット専用モデルFXX Kを公開|Ferrari
Ferrai FXX K|フェラーリ FXX K
サーキット専用モデルFXX Kを公開
フェラーリは、限られた顧客のためのサーキット専用モデル「FXX K」を、12月5日にアラブ首長国連邦のアブダビにあるヤス・マリーナ・サーキットで全世界初公開する。FXX Kの基本ボディデザインやメカニズムなどはスペチアーレモデル「ラ フェラーリ」がベースであるものの、最高出力を772kW(1,050ps)、最大トルク900Nm(91.8kgm)に向上させた専用ドライブトレーンを採用。独自のR&Dプログラムをもちい、ユーザーはフェラーリ社のテストドライバーとしてこのマシンをドライブすることになる。
Text by SAKURAI Kenichi
フェラーリの開発に携わる、FXXプログラム専用マシン
フェラーリがサーキット専用モデル「FXX」を発表したのは2005年。アメリカ・カリフォルニア州のモントレーで開催された、ペブルビーチ・コンクールデレガンスの会場で限られた顧客にのみ公開された。ベースは当時の最高峰、スペチアーレとして限定発売された「エンツォ フェラーリ」である。画期的だったのは、単にサーキット専用車両(公道走行は不可)として、歴代No.1となるハイパフォーマンスカーを販売するのではなく、「FXX プログラム」と名付けられた新たな顧客サービスの一環としてこのクルマが用いられることであった。
オーナーがFXXをサーキットで走らせたい場合、イタリアにあるフェラーリの「コルサクリエンティ」部門から専門のサービスチーム(または認可された各国のサービススタッフの場合もあるという)が直接そのサーキットまで派遣され、まるでF1のピットクルー並みのサポートを実施。それは車両のメンテナンスはもちろん、サーキットでのアメニティまで含まれ、同時に走行時にはさまざまなデータ取りもおこなう。このデータは、フェラーリの本社に送られ、車両開発の参考になるのである。
つまり、「FXX プログラム」とは、オーナーがフェラーリの開発テストドライバーの一翼を担い、FXXを走らせるすべてのエクスペリエンスを総称したもので、そこで使用されるマシンがFXXだったというわけだ。当時この「FXX プログラム」に必要とされた費用は150万ユーロと発表され、その金額にはマシンと各種メンテナンス費が含まれていた。
このFXX プログラムの後を受けてスタートしたのが、当時のフラッグシップモデル「599」をベースに開発されたサーキット専用車「599XX」を使用した「599XX プログラム」。599XXは2009年のジュネーブ モーターショーで発表された。こちらもFXX プログラムと同様に、オーナーはフェラーリの開発ドライバーとして位置づけられ、サーキット走行時には、同様のサポートが標準装備された。
Ferrai FXX K|フェラーリ FXX K
サーキット専用モデルFXX Kを公開 (2)
ラ フェラーリをベースに、ついに1,000psをオーバー
今回発表される「FXX K」は、フェラーリ初のハイブリッドモデル「ラ フェラーリ」がベース。ラ フェラーリは全世界399台限定のスペチアーレとして2013年のジュネーブ モーターショーでデビュー。このマシンをベースに、サーキット専用車としてシステム最高出力を772kW(1,050ps)、最大トルクを900Nm(91.8kgm)に強化。V12エンジンが632kW(860ps)、電気モーターが140kW(190ps)を発揮するというのがその内訳である。
車名に与えられた「K」は、F1マシンに搭載される、エネルギー回生システム「KERS」に由来。この技術はもちろんハイブリッドモデル、ラ フェラーリにも搭載されている。ラ フェラーリではハイブリッドシステムを「HY-KERS」と呼び、F1マシンやサーキットからのフィードバックを謳っている。
搭載されるV12エンジンは、総排気量6,262cc。FXX K搭載のためにさまざまなチューニングを施している。たとえば、カムシャフトはまったくの新開発で、改良型の機械式バルブトレーン、新設計のインテークマニホールドを装備。サーキット専用車であるためサイレンサーは不要とされ、これに合わせ排気システムも見直したという。
注目は進化したHY-KERSだ。こちらもサーキット専用モデルとして、純粋にパフォーマンスのみを追求。「Qualify」「Long Run」「Manual Boost」、そして「Fast Charge」という4種類のセッティングの選択ができる。「Qualify」は、限られた周回数で最大パフォーマンスを得るためのモード。その名のとおり、予選を勝ち抜くために、耐久性よりも短期決戦を優先したパフォーマンスを得ることができる。
「Long Run」は、コンスタントに性能を発揮するよう最適化されたモードで、レース中に使用することを想定。「Manual Boost」は、ストレートでの追い越しや、ここぞ、というときに即座に最大トルクを発生させることができる最速のハイパフォーマンスモードだが、長くは使用できない。「Fast Charge」は、バッテリーを充電する際に使用する。これらはセンターコンソールのマネッティーノを操作して任意にセレクト可能である。
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サーキット走行に特化したエンジニアリング
基本的なアピアランスはベースとなったラ フェラーリに準ずるが、大型化とともに30mm低められたフロントスポイラーやサイドのスプリッター、テール両端の垂直フィンとウイングレット、ボディ下面のフラットボトム化、フロント285/650R19、リア345/725R20サイズとなるピレリ製スリックタイヤやフロント398mm、リア380mm径のブレンボ製カーボンセラミックブレーキディスクなどの採用によって、かなりレーシーに仕上げられた。まさにサーキットが似合う、コンペティティブなイメージを醸し出す。
こうしたモディファイは、単にスポーティなスタイルを狙ったものではなく、たとえば低めのドラッグセッティングでもラ フェラーリ比で約50パーセント、より高速走行をおこなうアグレッシブなダウンフォースセッティングでは、30パーセントもダウンフォースを改善。サーキットを速くスムーズに走ることだけを追求した結果といえる。ちなみにダウンフォースは速度200km/hで540kgという、これはもうレーシングカーといっていい数値を達成している。
先進の電子デバイス、E-Diff(電子制御デファレンシャル)や、F1-Trac(トラクションコントロール)、レーシングSSC(サイドスリップアングル コントロール)なども、装着されるピレリ製スリックタイヤに合わせて最適化。ABSの作動モードは、ステアリングホイールに装備したマネッティーノを操作することで5段階から選択できる。
まさにサーキットを走るためだけに特化したFXX K。台数は未公表だが、これまでの「FXXプログラム」同様限られた数十人のオーナーがFXX KをもちいたR&Dプログラムで、フェラーリ社の社外テストドライバーになることができる。そこには、フェラーリが実験車両と呼ぶFXX Kのパイロットとして、地球上でもっともスーパーな究極ともいえるエクスクルーシブ体験が待っているのだ。
なお、この発表の模様は、別途、現地特別取材にてお届けする予定である。ご期待頂きたい。