東京モーターショーに集結した、キーパーソンにインタビュー|Porsche
CAR / FEATURES
2015年11月26日

東京モーターショーに集結した、キーパーソンにインタビュー|Porsche

Porsche|ポルシェ

911カレラ4ディレクター Dr.エアハルト・メスレ氏

ターボ化の目的は燃費向上とパワーアップ(1)

東京モーターショーで、新世代の「911カレラ4」をお披露目したポルシェ。最大の眼目は、フラットシックスの排気量が縮小されて、ターボ化されたところにある。すでに「911ターボ」があるのに,カレラもターボとは? ポルシェはいま何を考えているのか。911カレラ4ディレクターのDr.エアハルト・メスレ氏が、“2020年戦略”を語った。

Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki

911カレラと911ターボは別モノ

911があたらしい時代に入りつつある。東京モーターショーに先がけて、2015年9月に開催されたフランクフルトの自動車ショーでベールを脱いだ「911カレラ」。その時のプレスリリースには、下記のようにある。「40 年以上にわたりポルシェが蓄積してきたターボ技術のノウハウにより、ニュー911 カレラのエンジンはパフォーマンスとドライビングプレジャー、そして効率性におけるあたらしいスタンダードを打ち立てます」。少々難解なこの説明は何を意味するのか。そのあたりから質問をはじめてみた。

―― 911カレラをターボ化した理由から教えていただけますか。

私たちの目標は、燃費を向上させることでした。同時に、エンジンパワーは上げる。ただし、ボクサー(水平対向)エンジンを自然吸気のままで、いま言った2つの点でチューンナップしていくのは難しいのです。そこでターボチャージャーを装着することに踏み切りました。

Porsche 911 carrera4s|ポルシェ 911 カレラ4s

911 Carrera 4S

Porsche 911 Turbo S Coupe|ポルシェ 911 ターボS クーペ

911 Turbo S

―― 社内に反対意見はありませんでしたか。

あたらしいことをやろうとすると、いつも反対の議論が巻き起こるものです。空冷エンジンを水冷化する時にもおなじような論争がありました。でも水冷化に成功したあかつきには、“オーケイ、よくやった”という評価の声が大部分で(笑)。そんなものなんですよ。メルセデスだってフェラーリだってターボを採用していますし、市場の抵抗感はないと思いました。

―― 今回のターボ化で、排気量は3リッターと小さくなったいっぽうで、出力は15kW、トルクは60Nmも上がっていますよね。「911ターボ」との差別化はどのようにしていきますか。

911カレラと911ターボの顧客は、まったくちがう層です。なにしろクルマがまったくちがいます。911ターボは、ボディが大きく、スポイラーやエアインテークの形状も異なります。性能でもはるかに上を行っています。今回カレラ4Sで309kWになったとはいえ、911ターボで383kW、ターボSは412kWもあります。エンジンも可変タービンジオメトリーを採用して、より高性能化をはかっています。

ポルシェはいま、メルセデスを脅威に感じている?

Porsche|ポルシェ

911カレラ4ディレクターのDr.エアハルト・メスレ氏

ターボ化の目的は燃費向上とパワーアップ(2)

「AMG GT」のような強力なモデルと戦っていくことはつねに意識している

ポルシェはいま何を考えているのか。東京モーターショーのタイミングに合わせて来日した、911カレラ4ディレクターのDr.エアハルト・メスレ氏に訊く。

―― 欧州委員会が2020年に走行キロあたりのCO2排出量を95グラム以下として、超えた場合は罰金的な税をかけるとしています。スポーツカーメーカーのなかには、目標達成をなかばあきらめているところもあるように見受けられます。ポルシェはどうでしょう。

現時点ではっきりしたことは言えませんが、当然、考えています。(親会社である)フォルクスワーゲンとは別個の目標になるかもしれませんが、数値達成は環境にとっても重要な意味をもつことですから。

―― フランクフルトの自動車ショーに出展した「ミッションE」という4ドアのEVは現実的ですか? あるいは911にいっそ4気筒ターボエンジンを搭載するとか?

あらゆる可能性を追求していきます。自然吸気エンジンで、2020年の数値をクリアするのは難しいでしょう。これからはプラグインハイブリッド(PHV)の拡大とかEVとか、考えていくのではないでしょうか。ただ911には4気筒は搭載しません。

Porsche Mission E|ポルシェ ミッション E

Porsche Mission E

Dr.Erhard Mossle|Dr.エアハルト・メスレ氏

911カレラ4ディレクター、Dr.エアハルト・メスレ氏

―― 911カレラシリーズの排気量が3リッターへとダウンサイジングされたいっぽう、ライバルたちは相変わらず大きな排気量にこだわっているふしがあります。小排気量化に向かうのはマーケットでのハンデになりませんか。

たしかに大排気量のスポーツカーを好むユーザーは世界中にいます。でもそもそもポルシェは、伝統的に、そこまで大きなエンジンを採用していないのです。911ターボでも3.8リッターですから。ポルシェがやってきたことは、つねに最良のバランスを探ることです。出力やトルクの数値をいたずらに上げるのではなく、タイヤから路面にトルクを余すところなく伝えることこそ大事だと思っています。

―― 911が効率の点で問題視され、プロダクトラインナップから消えるということはないのですね。

それはありません。911はたいへん重要なモデルですから。クーペにくわえて、カブリオレやタルガがあり、カレラをはじめ、カレラSや、ターボ、ターボSがあり、さらにGT3も。二輪駆動も四輪駆動も選べます。25ぐらいのバリエーションがありますから、むしろ現代的な技術で魅力を増していくことが重要だと考えています。

―― これからニューモデルが出てくるとしたら、どういう方向で、でしょうか。スポーツカーでしょうか、環境適合車でしょうか。

もし商機があれば、というのがポイントですね。なにがなんでも新型車を投入するのではなく、そこから適正な利益が生み出せ、モデルレンジ全体に貢献があるか。それを見極めていく必要があります。もちろん市場には、メルセデスAMGの「AMG GT」のような強力なモデルが出てきています。それらと十分に戦っていくことはつねに意識しています。

           
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