カレラGTの後継

2003年に発売されたポルシェ「カレラGT」は、タルガトップのオールカーボンボディに5,733ccV型10気筒エンジンを積み、1,380kgという軽い車両重量と、レーシングカーレベルのサスペンションやブレーキを備えつつも、高級ロードカーとしての居住空間を併せもつスーパーカーだった。

この後継車として位置づけられるのが2010年に発表され、すでに生産が決定、予約もはじまっている、「918スパイダー」だ。

今回、ポルシェは南イタリアのナルドサーキットに報道陣を招いて、この918スパイダーのテスト車両で試乗をおこなった。いまだ空力デバイスはもたず、シャシーにダミーのボディを部分的にかぶせたような状態だが、クルマの基本構造は概ね完成をみているようだ。

搭載されるエンジンは、ル・マン24時間レースやアメリカン・ル・マンシリーズに参戦した2シータープロトタイプレーシングカー「RSスパイダー」に使用されたものをベースにした、4.6リッターV8エンジン。レース用らしく9,000rpmまでの回転をゆるし、570ps以上の出力を生み出すドライサンプ式のユニットだ。これがリアアクスル前方に配置され、リアを駆動するが、その背後にあるクラッチのさらに後方には出力約90kWの電気モーターがあり、そこから911ターボのものをベースとしつつ、低重心化のために上下さかさまに配置されたPDK、LSDとつづく配置になっている。

電気モーターはフロントアクスルにも存在する。こちらはリアのハイブリッドパワートレインとは独立しており、出力は約80kW。固定ギア比で、高速走行時にはオーバーレブをふせぐため切断される。

この2つのモーターを駆動するバッテリーはドライバーのすぐ後ろ、車両中心の低い位置に配置されている。エンジンの排気方向はコンセプト時の横から、上へと変更されているが、これは、素早く排気をおこなうとともに、高温になる排気側をV型バンクの内側に置くことで、バッテリー周辺に熱をためない工夫だという。

充電は、エンジン、強力な制動力を発揮するモーターからもおこなわれるが、家庭用コンセントからも可能だ。

高効率と高性能を両立するハイブリッドドライブ

ハイブリッドシステムを搭載して、重量的には不利に働く構造ながらも、各部の徹底的な軽量化で1,700kg未満という車両重量を達成した車体は、電気モーターのみでも25km以上走行する。

走行モードは、このEV走行を積極的におこなう「E-Power」モードからはじまり、エンジンとモーターを併用する「ハイブリッド」モード、エンジンが主な駆動力を提供する「スポーツハイブリッド」モードと、段階的にスポーティになり、「レースハイブリッド」モードではエンジンが高負荷で動作し、余剰出力をバッテリーの充電にまわす。高出力が必要になった場合に、モーターが最高出力でアシストにまわるためだ。さらに、数周のサーキット走行向けに、「ホットラップ」モードというバッテリーのエネルギーを使い尽くしてラップタイムを追求するモードも存在する。

リアアクスルは電子制御で操舵される。調節は車速に応じ、低速域ではリアホイールがフロントホイールと逆位相で動くことで、高速かつ正確で、回転半径の小さいコーナリングを実現。高速域では逆にフロントホイールと同位相で動くことで、リアの安定性を高める。

ニュルブルクリンク北コースでのラップタイムはカレラGTの7分32秒より10秒はやい7分22秒。0-100km/h加速はカレラGT 3.9秒にたいして3秒以下とされている。

限定918台の生産は2013年9月18日から開始される予定で、納車は2013年11月から。2011年5月の時点での価格は68万4,800ユーロだ。

PORSCHE 918 Spider｜ポルシェ918 スパイダー
サイズ｜全長4,643 × 全幅1,940 × 全高1,167mm
車両重量｜1,700kg 未満（DIN値）
ホイールベース｜2,730mm
ラゲッジコンパートメント容量｜約100リッター
エンジン｜4.6リッターV型8気筒エンジン＋モーター（パラレル方式フルハイブリッドシステム）
最高エンジン回転数｜約 9,000rpm
最高出力（エンジン）｜570ps 以上
最高出力（リア）｜約 90kw
最高出力（フロント）｜約 80kw
最大トルク（総合）｜750Nm
駆動｜後輪ハイブリッドモジュール＋前輪ギアユニット付き電気モーター
トランスミッション｜7段PDK
サスペンション（前）｜ダブルウィッシュボーン式（ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム（PASM）付き）
サスペンション（後）｜マルチリンク式（後輪独立操舵用の電子機械式アダプティブステアリングシステム、ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム（PASM）付き）
ブレーキ｜アダプティブ制御エネルギー回生システム、セラミックブレーキディスク（PCCB）
バッテリー｜リチウムイオンバッテリー（初期定格容量 6.8kWh、最大出力 202kW）、家庭用電源対応プラグインチャージャー付き
最高速度｜325km/h 以上
最高速度（電気モーターのみ）｜150 km/h 以上
加速性能｜
0‐100km/h 3.0秒以下
0‐200km/h 9.0秒以下
0‐300km/h 27.0秒以下
燃費（総合）｜約3.0ℓ/100km（NEDC）
CO2排出量（総合）｜約70g/km
電気モーターのみの航続距離｜25km以上