フランクフルトにみる、各ブランドのエコ戦略|IAA 2015
CAR / FEATURES
2015年9月30日

フランクフルトにみる、各ブランドのエコ戦略|IAA 2015

Frankfurt Motor Show 2015(IAA 2015)|フランクフルト モーターショー 2015

フランクフルトにみる、各ブランドのエコ戦略

近年のモーターショーでつねにメインテーマとなるのが、エコだ。今回のフランクフルトモーターショーでももちろん例外ではなく、各ブランドからエコを意識したモデルたちがコンセプトカーから市販車まで幅広く登場している。会場を訪れた小川フミオ氏が見て、聞いて、尋ねてまわった各社のエコ事情をリポート。

Text by OGAWA Fumio

2020年問題が時代を変える

2015年9月に、独フランクフルトで開催された自動車ショー、通称フランクフルトショー。特徴をひとことで解説すると、エコカーのオンパレード。ポルシェの電気自動車にはじまり、アウディもフォルクスワーゲンもメルセデス・ベンツもBMWも、電気自動車やプラグインハイブリッドを数多く出展していた。

なぜかというと、自動車メーカーがいま頭を悩ましている「2020年問題」があるからだ。読者は先刻ご承知かもしれないけれど、欧州委員会が、欧州市場で販売される車両が排出するCO2の量を平均して走行キロあたり95g以下に抑えることを義務づけることになった。実施されるのが2020年である。超えてしまうと多額の制裁金を課金される。

自身の社会的責任に意識的であり、IR的にも環境適合企業であることが“マスト”といえる自動車メーカーにとって、なんとか2020年までにめどをつけなくてはならない。そこで昨今では、充電できて電気モーターの役割分担がエンジンよりも大きいプラグイン ハイブリッド(PHV)に注目が集まっているのだ。

BMW 330e|ビー・エム・ダブリュー 330e

BMW 330e

ほんの少し前までPHVは一種ぜいたくな存在だった。価格も高く、オーナーは、社会的な責任を意識しつつ、社会で特権的な立場にあることを顕示するという、少し変な表裏一体の関係にあった。その流れがたったいま変わった。ドイツではプラグインハイブリッドの価格が(戦略的に)引き下げられ、いまやガソリンエンジン車と同等というモデルが出はじめている。

「プラグイン ハイブリッドならキロあたり90gを切れます。1台でも多く普及させて規制にひっかからないようにしたい」。ミュンヘンに本拠地を置くメーカーの広報担当者は、会場でその事情を解説してくれたのだった。

そこにあって、強力な布陣でPHVをはじめ、エコカー戦略を展開するのが、フォルクスワーゲンでありアウディである。

Frankfurt Motor Show 2015(IAA 2015)|フランクフルトモーターショー 2015

フランクフルトにみる、各ブランドのエコ戦略 (2)

SUVでもサルーンでもPHV

「新開発の2リッター4気筒ガソリンエンジンは、従来の1.4リッターより燃費がよく、つまりCO2排出量が少ないんです」。話題の新型アウディA4を発表した、アウディAGで技術開発部門を統括するドクター・ウルリッヒ・ハッケンベルグは、フランクフルトショーの会場で、そう語って胸を張った。

新型A4の新開発の4気筒エンジンは、従来のオットーサイクルでなく、ミラーサイクルという機構だ。トヨタ自動車も熱心だが、簡単に説明すると、混合気(燃料と空気が混ざったもの=これに着火して爆発させてピストンを動かす)を導き入れる吸気バルブの閉じるタイミングを調整して、圧縮比より膨張比を大きくし、燃焼効率をよくするところにメリットがある。

Audi A3 e-tron|アウディ A3 eトロン

Audi A3 e-tron

BMW 225xe|ビー・エム・ダブリュー 225xe

BMW 225xi

「これからの社会はよりエネルギーを節約しCO2を低減する方向に向かいます。そこにあって都市化(都市内の移動に適した交通)は、インテリジェントな方向へとより強く舵を切っていきます」。こう述べるのは、フォルクスワーゲングループ監査役会のドクター・マルティン・ウィンターコーン会長だ。インテリジェントというのは、昨今の自動車界におけるトレンディなキーワードで、電子の手助けを借りて燃費をよくしていくことを意味する。エンジンの燃焼技術のコントロールから、人間より燃費のいい運転を可能にする自動運転システムまで、あらゆることが含まれる。

SUVは依然として世界的に人気が高く、今回のショーでも、ベントレー「ベンテイガ」、ジャガー「Fペース」など、話題の新型車が揃った。フォルクスワーゲンもSUV「ティグアン」の新型を発表したが、とりわけ目玉は、同時に発表された「GTE」というプラグインハイブリッドモデルである(発売は少し先になるそう)。

BMWは、フルモデルチェンジした「7シリーズ」がショーの中心となったが、なかでもプラグイン ハイブリッドモデル、「740e」の存在感を強調した。燃費がリッターあたり50kmちかくにおよび、キロあたりのCO2排出量は49グラム。「これからのラグジュリーセダンの在り方のベンチマーク」と宣言するに値する内容だ。くわえて、「X5」「3シリーズ」「2シリーズ」にも、数字の後ろに「e」がつくプラグイン ハイブリッドモデルを設定した。

Frankfurt Motor Show 2015(IAA 2015)|フランクフルトモーターショー 2015

フランクフルトにみる、各ブランドのエコ戦略 (2)

高効率を求める時代のスポーツカーの在り方

「スポーツカーとEVは水と油のようにとらえられてきましたが、それを融合させることに成功しました」。ポルシェAGのマティアス・ミュラー社長の言葉とともに、ショー会場でヴェールを脱いだのは、「ミッションE」と名づけられた4ドアのコンセプトモデルだった。

「ピュアEVでスポーツカーを作るとどうなるかの例になると思います」。ミュラー社長がそう語るように、静止から100km/hまでを3.5秒で加速するというスーパースポーツカーなみの性能を有するという。充電はわずか15分しかかからず、日常的にどんな場合でも使えるポルシェ、ということが強調された。ただし現時点では、観音開きのドアをもち、独特の曲面パネルで覆われたスタイルをもつミッションEはコンセプトモデルである。

噂されていた「911」の4気筒モデルは姿を現さなかったが、911カレラにもターボが採用されたのがニュースだ。低回転域からのトルクアップをはかり、それによって燃費向上を目指すのが、これからの911のありかた、とミュラー社長は強調した。

Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス

Lamborghini Urus

Porsche Mission-e|ポルシェ ミッションe

Porsche Mission-e

「効率性がとても大事だというのは理解しています」。そう話すのは、アウトモビリ・ランボルギーニのステファン・ウィンケルマンCEOだ。

「ただし、すぐに「アヴェンタドール」や「ウラカン」にターボ付きV6エンジンを搭載するようなことはしません。ファンがそれを期待していませんから。でも今度私たちが発表するSUV(現時点では「ウルス」の名で2018年発表といわれている)ではターボエンジンを使うことになるでしょう。(おなじグループの)アウディが開発したプラットフォームですが、ランボルギーニの個性が存分に発揮されたモデルになるはずです」。「ウラカン LP610-4スパイダー」をフランクフルトショーでお披露目したランボルギーニも、あたらしい時代へと向かう岐路へとさしかかっているのかもしれない。

           
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