Mercedes-Benz E Class Stationwagon|メルセデス・ベンツ Eクラスのステーションワゴン
Mercedes-Benz|メルセデス・ベンツEクラスワゴン 試乗
走りも機能も懐深き新型ステーションワゴン(1)
フルモデルチェンジを受けたメルセデス・ベンツ Eクラスのステーションワゴンに試乗した。新型ステーションワゴンは、メルセデス・ベンツ日本の手で、さる2010年2月24日より日本発売開始されたもの。「ワゴンとして最大の荷室容量」をもつなど機能性を追求すると同時に、燃費経済性の向上をはかったのが特徴だ。
文=小川フミオ写真=荒川正幸
空間にゆとりを。ラゲッジスペース容量は最大約20リットル拡大
S211と呼ばれる新型Eクラス ステーションワゴンは、「先代より空間にゆとりが生まれている」(日本法人)のが特徴のひとつに挙げられている。実際にボディ外寸を、S210という先代と比較すると、ホイールベースは20mm延長されて2,875mmに、ワゴンボディの全長は4,910mm(先代+15mm)、全幅は1,855mm(同+35mm)と縦方向に伸び、横方向にも広がっている。ちなみに1,500mmの全高(アバンギャルド)は同一。これによってラゲッジスペース容量は15リットルから20リットル拡大している。
ラインナップは下記のとおり。
E250CGIブルーエフィシエンシー ステーションワゴン(669万円)
E300 ステーションワゴン(765万円)
E350 BlueTECステーションワゴン・アバンギャルド(833万円)
E350 4MATIC ステーションワゴン・アバンギャルド(930万円)
E550 ステーションワゴン・アバンギャルド(1,115万円)
E63 AMGステーションワゴン(1530万円)
このようにエンジンラインナップの幅が広く、なかでもS211型の特徴のひとつは、1.8リッター4気筒エンジンにターボチャージャーを備えた、高効率・低燃費型「ブルーエフィシエンシー」システムを搭載したモデルをセダンに次いで設定した点。くわえて、尿素を使うなどして、窒素化合物と粒子状物質の除去に成功したクリーンディーゼルエンジンを搭載した「BlueTEC」モデルの設定も注目に値する。
ここではとりわけ話題になっているクリーンディーゼルから触れておこう。エンジンは3リッターV6に燃料直噴システムと、バリアブルノズルタービンを装えたターボチャージャーを搭載して211psを発生。そしてこれに「BlueTEC」システムを組み合わせている。
「BlueTEC」はディーゼルの排ガスの清浄化をはかる目的で開発されたシステム。最大の特長は、NOxと呼ばれる窒素化合物と、PMなる粒子状物質という、ディーゼルエンジンの排ガスにふくまれる2大有害成分の効果的な除去をはかっている点にある。エンジンの燃焼効率を上げればPMは除去されるが一方で比較的低温で燃焼されるNOxは残る。そこで「BlueTEC」では、NOx無害化のために排ガスシステムの最終段階で尿素を噴射する仕組みを採用し、窒素と水に分解するようにした。
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走りも機能も懐深き新型ステーションワゴン(2)
尿素を利用して有害物質を分解する「BlueTEC」
「AdBlue」と呼ばれる尿素水溶液はトランクルームの床下に設けられた24リットルタンクに貯蔵され、おおよそ1,000km走行するのに1リットル消費される。なので大抵の場合、補充は車検時にサービス工場でおこなわれることになる。同様のシステムはダイムラートラック部門に属する三菱ふそうトラック・バスの大型商用車でも採用されるが、乗用車では今後、今年日本導入が予定されているアウディQ7ディーゼルをはじめ、ドイツ各メーカーのディーゼルモデルにも搭載されるといわれている。
従来のディーゼルエンジン搭載モデル、E320CDIと比較するとNOxは69パーセント減、PMは21パーセント減と、よりクリーンになったBlueTECディーゼルエンジン搭載のE350 BlueTECステーションワゴン・アバンギャルドに乗ると、たしかに、エンジンのフィーリングはとてもいい。1600rpmで最大トルクを発生する特性のとおり、アイドリングのほんの少し上でもりもりと力強く加速しはじめ、そのあとターボの領域に入るところから加速感は強烈になる。
基本的に先代S210のE320CDIと同じだが、あきらかに洗練の度合いが高まっていて、回転の上がり方とパワーの出方がよりスムーズで快適になっている。ガソリンエンジンしか知らないひとでもかったるさを感じることはまずないだろう。むしろ55.1kgmもの太いトルクが1,600rpmから発生するため、低速からの加速感はガソリンより上だ。さらに、100km/hの巡航時にエンジン回転は2,000rpmに満たず、じつに静か。これもディーゼルエンジンの美質だ。
ディーゼルモデルは尿素タンクをトランクルーム内に備えるためスペアタイヤが収まる位置を失ってしまった。そこで日本仕様はグッドイヤーのランフラットタイヤを装着する。厳密な走行距離が記載されていないが、パンクしても50~100km程度の距離の走行が可能なタイヤがランフラットタイヤだ。
このランフラットタイヤが賛否両論で、ハンドリングのダイレクト感が疎外され、かつコーナリングでのステアリングの正確さも犠牲しているという厳しい批評もある。たしかに通常のタイヤに較べると中立付近でのレスポンスは曖昧で、最初は多少の違和感がある。
でも走り出すと、意外に気にならない。むしろ中立付近での反応が速いタイヤに較べて安逸な感じが好ましく思えるぐらいだ。ランフラットタイヤ標準装着のレクサスSC430が10年間のモデルライフで、不自然さを克服できなかったことに較べると、E350 BlueTECステーションワゴン・アバンギャルドでは乗り心地をはじめ、ハンドリングの設定とタイヤの性格とのマッチングのよさを感じさせる。
スタイリングはスポーティな印象が強くなった。車体側面のキャラクターラインにより、後輪の存在が強調される現在のW211(セダン)と同様の手法で、ワゴンでありながら、運転する楽しさを備えている、そんなイメージを感じさせるのに成功している。大きな開口部をもつハッチゲートは自動開閉式で、メモリー機能も採用され開口位置を記憶させることができる。そのため狭い場所でも天井にゲートをぶつける心配もないという。
荷室は分割可倒式のセカンドシートを倒すことで広大になる。ステーションワゴンという車型では最大の積載量を誇る。そこはワゴンづくりに長い伝統をもつメルセデスならでは。かつ先代より20mm延長されたホイールベースの恩恵で室内空間の広々感は増し、前後席ともに足もと、身体側面、そして頭上空間が広く、快適に乗っていられる。
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走りも機能も懐深き新型ステーションワゴン(3)
1.8リッター4気筒+ターボチャージャーのブルーエフィシエンシー
もう1台トピックスになりえるのが、1.8リッター4気筒エンジンにターボチャージャーを装着したE250CGIブルーエフィシエンシー・ステーションワゴン(669万円)。燃費を抑えながら、高効率化をはかったモデルだ。CGIはチャージド(過給された)・ガソリン・インジェクション(燃料直接噴射)の頭文字をとったもの。
204psというハイパワーと10・15モードでリッター11kmを超える経済性による効率のよさは、すでにセダンで実証ずみ。2,000rpmで31.6kgmもの大トルクを発生しはじめる設定は約1.8トンのワゴンボディでも不足はない、はずなのだが……。しかし実際はターボの効きが体感できる約2,000rpmを境に、その上と下とでは加速感がだいぶちがう。
発進はやや重く、すばやく流れに乗ろうとするとどうしてもアクセルペダルを多めに踏み込まざるをえない。欧州のような流れが一定の交通状況では大きな問題はないだろうが、日本の都市部だと慣れるまでは少しギクシャクした感じがつきまとうそうだ。車重が100kg少々かさむせいか、より軽量のセダンをかつて乗ったときは感じなかったことなのだが。
ハンドリングは通常のラジアルタイヤを装着していることもあり、とくにランフラットタイヤを履くBlueTECのあとだと、E250CGIブルーエフィシエンシーはスポーティに感じた。実際にハンドルの入力に対してのレスポンスはだいぶ上がっている。ワインディングロードではステーションワゴンらしからぬほど、スポーティなハンドリングを披露してくれた。中立付近でもわずかに切るだけで車体は即座に反応してノーズの向きを変える。このあたり、新世代のメルセデスだという感もひとしお。
メルセデス・ベンツE350
BlueTECステーションワゴン・アバンギャルド
ボディ|全長4900×全幅1855×全高1500mm
ホイールベース|2,875mm
車両重量|1,820kg
エンジン|3ℓV型6気筒DOHC(ディーゼル)+インタークーラー付ターボチャージャー
最高出力|155kW[211ps〕/3400rpm
最大トルク540Nm[55.1kgm〕/1600-2400rpm
駆動方式|後輪駆動
トランスミッション|7段AT
価格|833万円
メルセデス・ベンツE250
CGIブルーエフィシエンシー ステーションワゴン
ボディ|全長4900×全幅1855×全高1515mm
ホイールベース|2,875mm
車両重量|1,770kg
エンジン|1.8ℓ直列4気筒DOHC+インタークーラー付ターボチャージャー
最高出力|150kW[204ps〕/5500rpm
最大トルク|310Nm[31.6kgm〕/2000-4300rpm
駆動方式|後輪駆動
トランスミッション|7段AT
価格|669万円
MERCEDES CALL
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