ドライビングのための1台

メルセデス・ベンツ「CLAクラス」は、スポーティなルックスどおり、ドライブが楽しいモデルだ。2013年7月24日に日本発売が開始されたCLAクラス。メルセデスのラインナップにおける位置づけは、そのネーミングを分解すればわかるように、CL＝4ドアクーペ、A=コンパクト。プラットフォームは、まさにAクラスと共用する。




日本でのラインナップは下記のとおり。
CLA 180（1.6リッター4気筒ターボ／335万円）
CLA 250（2リッター4気筒ターボ／459万円）
CLA 250 4MATIC（同上／484万円）
CLA 45 AMG 4MATIC（同上／710万円）


そのなかで今回、試乗に供されたのは、122psの最高出力をもつベースグレードのCLA 180と、211psのCLA 250。ともに前輪駆動で、フルタイム4WDシステム搭載モデルと、AMGモデルは少し遅れてのデリバリーとなるそうだ。

CLAクラスは、日常の足になるハッチバックでもないし、ラインナップの中核をなす大型セダンでもない。クルマに乗ることに楽しさを見出すひとのための、躍動感や若々しさが前面に打ち出されたモデルだ。新型Aクラスで人気を呼んだ「ダイヤモンドグリル」（すべてのモデルに採用）と、エンジンの存在感を強調するかのようにフロントグリルがバンパーをたわませているようなアグレッシブな造形が、このクルマがドライビングのための1台であることを如実に語っている。


実際にハンドルを握ると、トルクがたっぷりあるエンジンの特性と、ダイレクトな操縦感覚とが、硬めだがしっとり感もあるサスペンションシステムとバランスし、このクルマでしか得られない魅力となっているのがわかる。

予想以上にパワフルだ

ベースモデルのCLA 180の特徴のひとつは、新開発の1.6リッター4気筒エンジンにある。「ブルーダイレクト」というメルセデスの技術が採用されている。高効率化、すなわちより好燃費をめざしたエンジンだ。

すこし専門的になるが、このエンジンの要は、リーンバーンとよばれる、理論空燃費（ガソリンとそれを燃やすのに必要な空気の最適なバランス比）より薄い混合気を作りだすシステムにある。使用する燃料の量が抑えられるのだ。それでいながら1,250rpmで200Nmもの最大トルクを発生する。自動車重量税と自動車取得税は免税となる。

走らせると、予想以上にパワフルだ。7段のデュアルクラッチをもちいた変速機との組み合わせもうまくチューニングされていて、シフトショックはいっさいないし、加速時にトルク不足感をおぼえることもなかった。


後述するCLA250と比較すると、ハンドルなどがややスローだし、サスペンションの設定もコンフォート方向に振っているが、市街地でのドライブに適したモデルだ。Aクラスと同様のハイバックシートは、個人的にはやや後頭部への圧迫感があるが、ホールド性といい、クッション性といい、申し分ない。

ドアを4枚そなえている理由

CLA 250（459万円）の2リッター4気筒ターボエンジンも、CLA 180同様、リーンバーンの「ブルーダイレクト」だ。最高出力は211ps/5,500rpm、最大トルクは350Nm/1,200-4,000rpmとなっており、自動車重量税と自動車取得税は75パーセント減免となる。ドライブトレインは、7段デュアルクラッチシステムを組み合わせた前輪駆動方式。


CLA 250の特徴は、CLA 180以上に、性格づけがスポーティに振られていることだ。アクセルペダルのごくわずかな踏み込みにたいして反応は鋭く、1,470kgの車体は、軽々とダッシュする。足まわりは硬めで、サスペンションシステムにおいて、リアアクスルキャリアにラバー素材を使用することで静粛性と快適性を高めたと謳われるが、CLA 180よりダンパーもスプリングも締められている。

車体の空力が徹底的に煮詰められ、Cd値0.23を実現したそうだ。くわえてボディ各所の見直しで、車内の静粛性も抜群に高く、ウィンドウまわりで風きり音はほぼ聞こえてこない。そのぶん、多少、ホイールハウスあたりからタイヤノイズが入ってくるが、これはほかが静かになったためで、乗員どうしはささやき声でも会話ができるだろう。

後席にもAクラス同様、ハイバックシートがそなわる。乗り降りのさいは、あえて小さくまとめたウィンドウアーチのせいで頭をルーフにぶつけないよう気をつける必要があるが、乗ってしまえばレッグルームも余裕があり、ドアを4枚そなえている理由がわかる。ふだんは2人で乗る機会が多いひとや、子どものいる家族にはぴったりだろう。

トランクルームも「Cクラスより大きな、470リッターの容量」（メルセデス・ベンツ日本）といい、リアシートの背もたれが倒れるトランクスルー機能を使えば、おとな3人にゴルフバッグ3個の収納が可能になることも強調されている。


市街地でスタイリッシュに乗りたいひとならCLA 180でいいだろうし、500万円を切る価格でドライブも楽しいパーソナルカーを欲しいひとならCLA 250を勧める。

CLAクラスも安全装備はぬかりない

メルセデス・ベンツのセールスは絶好調だそうだ。世界市場における2013年上半期の販売台数は69万台超。「過去最高」という。日本でも同期2.4万台で、前年同期比124パーセントだそう。背景には、「Aクラス」、「Eクラス」、そして「Sクラス」と主要モデルの新型が発売されたことにくわえ、「Cクラスまでレーダーセーフティパッケージ標準装備を拡大したことも高く評価されている」とメルセデス・ベンツ日本の広報部では話している。


CLAクラスも安全装備はぬかりない。これを目当てにメルセデス車を買おうというひとが多いのもうなずける。ステレオカメラとミリ波レーダーという「目」をそなえている。たとえば、時速7km/h以上で前走車との間隔が狭すぎる場合、または障害物を含めて2.6秒以内に衝突の危険性がある場合に警告音を発するレーダー型衝突警告システム「CPA」が標準装備だ。

先行車を一定間隔で自動的に追従し制動までおこなうディストロニック・プラス

後方から先行車両に追突してしまう事故をふせぐ「コリジョン プリヴェンション プラス」

CLA 45 AMG 4MATIC以外は19万円のオプションになるが「セーフティパッケージ」が用意されている。

・CPAプラス：CPAの機能を強化し、ドライバーのブレーキングでは不十分とクルマが判断した場合、自動的に制動を補助する機能

・ディストロニック・プラス：先行車を一定間隔で自動的に追従し制動までおこなう

・レーンキーピング・アシスト：60km/h以上で車線逸脱をハンドルを振動させることで警告する

・ブラインドスポットアシスト：ドアミラーの死角範囲をモニターして危険性を警告する

・プレセーフ：衝突が避けられないとクルマが判断した場合、電動セイフティベルトテンショナーの作動、サイドウィンドウの自動巻き上げ、パセンジャーシートの位置自動調整


EクラスやSクラスのように、車両が車線内にとどまって走行するのを自動的に補助するステアリングアシスト機能は、CLAクラスには用意されていない。


「セーフティ＆コンフォート」をメルセデスでは標榜するが、くわえて楽しさとエッジの効いたスタイリングをもっているのが、CLAクラスと感心した。

Mercedes-Benz CLA 180｜メルセデス・ベンツ CLA 180
ボディサイズ｜全長4,640×全幅1,780×全高1,430 mm
トレッド 前/後｜1,545 / 1545 mm
ホイールベース｜2,700 mm
重量｜1,470 kg
エンジン｜1,595 cc 直列4気筒 直噴DOHCターボ
最高出力｜90 kW（122 ps）/ 5,000 rpm
最大トルク｜200 Nm（20.4 kgm）/ 1,250-4,000 rpm
トランスミッション｜7段AT（DCT）
駆動方式｜FF
サスペンション 前/後｜ストラット / 4リンク
タイヤ｜225/40R18
ブレーキ｜ ディスク
燃費（JC08）｜17.4 km/ℓ
トランク容量（VDA値）｜470 ℓ
価格｜335万円

Mercedes-Benz CLA 250｜メルセデス・ベンツ CLA 250
ボディサイズ｜全長4,685×全幅1,780×全高1,430 mm
トレッド 前/後｜1,545 / 1545 mm
ホイールベース｜2,700 mm
重量｜1,500 kg
エンジン｜1,991 cc 直列4気筒 直噴DOHCターボ
最高出力｜155 kW（211 ps）/ 5,500 rpm
最大トルク｜350 Nm（35.7 kgm）/ 1,200-4,000 rpm
トランスミッション｜7段AT（DCT）
駆動方式｜FF
サスペンション 前/後｜ストラット / 4リンク
タイヤ｜225/40R18
ブレーキ｜ ディスク
燃費（JC08）｜16.6 km/ℓ
トランク容量（VDA値）｜470 ℓ
価格｜459万円