母と子の深い愛情と葛藤を“映画界の救世主”が描くヒューマンドラマ『Mommy/マミー』
母と子の深い愛情と葛藤を“映画界の救世主”が描くヒューマンドラマ
グザヴィエ・ドラン最新作『Mommy/マミー』
天才の名をほしいままにし、“映画界の救世主”とも称えられる監督グザヴィエ・ドラン。彼が母と息子の深い愛情と葛藤を描いたヒューマンドラマ『Mommy/マミー』が4月25日(土)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次ロードショーされる。
Text by YANAKA Tomomi
登場人物の心理状態にあわせて画面構成が変わる、独自の描写スタイルにも注目
弱冠19歳で発表した『マイ・マザー』や『胸騒ぎの恋人』で映画界に鮮烈にあらわれ、時代の寵児となったグザヴィエ・ドランの最新作『Mommy/マミー』。デビュー作の『マイ・マザー』とおなじ、彼にとっての原点である母と子を軸にした物語だ。
『Mommy/マミー』は昨年のカンヌ国際映画祭で当時83歳の巨匠ジャン=リュック・ゴダールと並び、審査員特別賞をダブル受賞するなど、世界が絶賛。“アンファン・テリブル(恐るべき子ども)”と呼ばれた彼の実力をあらためて世界に知らしめた。
その才能は映画全編を通して散りばめられ、特に今回は画面構成が主に正方形で進められているのが特徴。主人公の心理状態に合わせて長方形に変化させたり、スローモーションの使い方、カメラと人物の絶妙な距離感など、グザヴィエならではの描写スタイルで登場人物の視点や気持ちに寄り添う効果をもたらしている。
多動性障がい(ADHD)のある主人公の青年スティーヴを、アントワン=オリヴィエ・ピロンが繊細に熱演。また『マイ・マザー』にも出演したアンヌ・ドルヴァルが主人公の母親役に、スザンヌ・クレマンは親子の前にあらわれる引きこもりがちな高校教師役として登場。おなじ母と子をテーマにした『マイ・マザー』とキャストはおなじでありながら、まったく趣の異なるドラマをつくりあげているところは、グザヴィエの才能の賜物だろう。
親子の前にあらわれる引きこもりがちな高校教師
2015年、架空の国、カナダ。新政権が成立し、内閣は公共医療政策の改正を目的とするS18法案を可決する。なかでも議論を呼んだのが、発達障がい児の親が経済的困窮や身体的、精神的な危機に陥った場合は法的手つづきをせずに養育を放棄し、施設に入院させる権利を保障するというスキャンダラスな法律だった。
いっぽう、掃除婦としてぎりぎりの生活を送るダイアンは、15歳のひとり息子がいるシングルマザー。普段は知的で純朴なものの、一度スイッチが入ってしまうと攻撃な性格で手をつけられなくなる息子スティーヴはADHDの障がいをもつ。
そして矯正施設から退所してきたばかりのスティーヴと一緒に暮らすことになったダイアン。ある日、親子の前に引きこもりがちで高校教師のカイラという女性が現れ、彼らの交流がすべてを快方に向かうかのように見えたのだが……。
万国共通のテーマである母と子の深い愛情と葛藤。そして人間模様に彩りを与える色彩描写。若さと成熟さをあわせもつグザヴィエ・ドランだからこそ生み出せるエモーションは、観る者の魂をふるわせる。
『Mommy/マミー』
4月25日(土)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
監督|グザヴィエ・ドラン
出演|アンヌ・ドルヴァル、スザンヌ・クレマン、アントワン=オリヴィエ・ピロン
配給|ピクチャーズデプト
2014年/カナダ/138分
http://mommy-xdolan.jp
Photo credit : Shayne Laverdière / © 2014 une filiale de Metafilms inc.