アウディ初のプレミアムコンパクトSUV「Q3」に中国で試乗|Audi
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2015年1月21日

アウディ初のプレミアムコンパクトSUV「Q3」に中国で試乗|Audi

Audi Q3|アウディ Q3

トランス・チャイナ・ツアー2011

アウディ初のプレミアムコンパクトSUV「Q3」に中国で試乗(1)

さきごろ発表されたばかりのコンパクトSUV アウディ Q3の国際試乗会が中国で開催された。ジャーナリスト 小川フミオ氏によるインプレッションをお送りする。

文=小川フミオ

大谷達也氏による、アウディQ3国内試乗記はこちら

小型化によりスタイリッシュさと利便性を両立

アウディ Q3はさる2011年4月の上海オートショーでお披露目された新型SUV。「アウディにとって初のセグメントに参入することになる」と、ルーパート・シュタッドラー社長が言うように、スタイリッシュさと利便性を合致させたモデルだ。

Q3を、日本でも販売好調というQ5と比較すると、全長で250mm短い4385mm、全幅で69mmコンパクトな1831mm、そして全高が70mm低い1590mmとなる。メカニカルレイアウトの面でも、Q5ではエンジンが縦置きされるのにたいして、Q3では横置きとなる。

ハッチゲートが寝かされているのも、Q5との大きな相違点。全体の印象は近いものがあるが、実際に並べてみると、「スポーティなキャラクター、エモーショナルなデザイン、情熱を傾けた品質」とさきのシュタッドラー社長の言葉を裏づけるような、個性が際立つ。小まわりが効いて、街乗りにもよさそうだ。

エンジンラインナップは多岐にわたるが、日本市場には2012年なかごろ、最高出力211psの2リッターターボエンジンに、フルタイム4WDシステムであるクワトロを組みあわせたモデルが導入される予定。

アウディ初のプレミアムコンパクトSUV「Q3」に中国で試乗|Audi|02

今回、「トランス・チャイナ・ツアー2011」と銘打たれた試乗会で用意されたのは、まさにこの「Q3 2.0TFSIクワトロ」というモデルだった。

Audi Q3|アウディ Q3

トランス・チャイナ・ツアー2011

アウディ初のプレミアムコンパクトSUV「Q3」に中国で試乗(2)

北京から桂林までを巡るツアー形式の試乗会

「私たちが中国に進出して20年。100万台を販売してきました。エキサイティングであり、日々なにかがはじまっているこの地を、都市からその奥まで紹介していきたいと考えました」(シュタッドラー社長)

「中国穿越之旅」と中国語のタイトルもつけられたこのツアーは、北京から南へくだり、最後は桂林まで。5700kmを4つのグループにわけ、160人の参加者を集めておこなわれた。僕たちが担当したのは、深圳から広州を経由して桂林までの約800km。途中は高速道路あり、村落を抜ける道あり、自然のなかを抜ける道ありと、多様性に富むルートだった。

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アウディ初のプレミアムコンパクトSUV「Q3」に中国で試乗|Audi|05

中国といえば政治の中心の北京か、経済の上海か、と思いがちだが、大きな港をもつ天津(Tianjin)、ドイツ企業になじみの深い青島(Quindao)、南中国の古都であると同時に高層ビルが増えている南京(Nanjing)、内外からの投資で人口が急増している福州(Fuzhou)、日本企業にはおなじみの深圳(Shenzhen)、メガシティと呼ばれる広州(Guangzhou)といったぐあいに、地方の各都市が拡張している。

たとえばアウディが工場をもつ長春(Changchun)なんて、ふだんは縁のない都市だが、規模は大きい。僕たちが泊まったのは、東京でも「超」がつく高級ホテルにかぞえられる「シャングリラ」だったし、ホテル前にはルイ・ヴィトンやブリオーニやアルマーニなどがはいるショッピングモールがあって賑わっていた。

あたらしいデザインやあたらしい技術で、つぎの時代への足場を築いていくアウディにとって、はやい速度で変化をとげている中国は、マーケットとしても、またイメージのオーバーラップという意味からも、意外に近い存在なのかもしれない。「パワフル、高効率、クーペライクなデザイン、都会的」というキーワードが並ぶQ3のイメージと、いまの中国は近いのだという。

Audi Q3|アウディ Q3

トランス・チャイナ・ツアー2011

アウディ初のプレミアムコンパクトSUV「Q3」に中国で試乗(3)

最高出力211psを発生する2リッターターボユニットを搭載

中国の道路は、フルタイム4WDシステムをもつQ3にふさわしい、と思っていた。中国でのドライブ経験がある知人たちから、路面の悪さについて聞いていたからだ。「中国の道路にはまだ我われのクルマは向いていない」と英国のスポーツカーメーカーのCEOが語ってくれたのは3年前だった。

しかし今回、ハイウェイから一般道、さらに農村を縫うような屈曲路など、あらゆるコースを走って知ったのは、田園地帯といえども道の幅員が広く、かつきれいな舗装で整備されていることだった。

なので、SUVといっても、都会的なQ3でなんの不都合もない。それどころか、トルクたっぷりで、かつ、高速走行でも真価を発揮するクワトロシステムの恩恵にあずかることができたのだった。

211psの最高出力をもつ2リッターターボユニットは、低回転域でのダッシュ力とともに、3,000rpmあたりからの加速感がめざましい。超高張力鋼板を多用して軽量化をめざした車体は約1.5トン。軽快な感覚でのドライビングをもたらしてくれる、バランスのよいコンビネーションだ。

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車体の剛性感は高く、ハンドリングもセダンとおなじように正確で、かつ切り込んだときに車体が向きを変える反応速度も速い。SUVのSであるスポーツの要素をきちんと備えていることがわかる。A1よりスポーティな印象を受ける。

竹林のあいだを屈曲路がつづく中国のワインディングロードでも、安心して操縦ができる。かつ乗り心地も意外に快適。17インチタイヤがやや硬めに感じられたが、日本向けの車輌では設定が変えられるだろう。

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静粛性も高い。3車線の高速道路の法定速度である120km/hでは、エンジンルームからの透過音もウィンドシールドまわりからの風切り音も低く抑えられている。後部座席に座っていてもリアゲートまわりや、リアのタイヤハウスから気になる音が聞こえてくることはなかった。遮音についても、じつによくできていると感心した。

Audi Q3|アウディ Q3

トランス・チャイナ・ツアー2011

アウディ初のプレミアムコンパクトSUV「Q3」に中国で試乗(4)

燃費を補佐する充実した機能

アウディ Q3は、最近のアウディ各車と同様、経済性を重視した技術がいくつも採用されている。たとえば信号待ちのときなどエンジンを停止させる「スタート&ストップ・システム」、走行中にアクセルペダルから足を離すとクラッチが切れてエンジンとトランスミッションが切り離される「コースティングモード」、ブレーキペダルを踏むと電気が発生してそれを蓄電する「エネルギー回生システム」といったぐあいだ。

中国の田園地帯はガソリンスタンドが少ないので、(万が一……)なんて思ったが、燃料計の針が動く速度はかなりゆっくりしていた。つまり予想以上に燃費がよさそうだ。パワーと燃費という二律背反する課題の追求は、SUVでもきちんとおこなわれている。それがアウディだ。

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アウディ初のプレミアムコンパクトSUV「Q3」に中国で試乗|Audi|11

Q3は毎日の生活の理想的なパートナー

インテリアの質感も高い。「ダッシュボードのデザインを水平基調にしたところを注目してほしい。そして乗員を取り囲むように、ぐるりとキャラクターラインをまわしたことで、軽快感を生み出すことを狙いました」。インテリアを担当したアウディのデザイナーの説明だが、たしかに、視覚的な面からも室内の居心地はよい。試乗車はブラックで統一されていたが、なかにはダークグリーンや、ブラックとホワイトのコンビネーションをうまく活かした配色も用意されているとか。

もうひとつ、リアシートで感心したのは、座面前端部がもちあがっていて、乗員の体重分布が考えられていることだ。SUVやハッチバックではフラットな座面が多く、脚部でからだを支えることができないため、クルマの動きにたいして不安定なうえ、臀部が痛くことがあるが、Q3では終始快適な気分でいられた。

アウディは、ドイツ人医師が乗る救急車まで同行させるなど、万全の体制を敷いてこのツアーをおこなった。幸いお世話になったひとはいなかったが、中国でのツアーが教えてくれたのは、Q3のクオリティの高さだった。「毎日の生活の理想的なパートナー」とシュタッドラー社長の言葉があるが、そのとおりだと思った。東京でもおなじだろう。

Audi Q3 2.0 TFSI quattro|アウディ Q3 2.0 TFSI クワトロ
ボディサイズ|全長4,385×全幅1,831×全高1,590mm
ホイールベース|2,603mm
エンジン|2リッター直4DOHC16バルブ+ターボチャージャー
最高出力|155kW(211ps)/5,000-6,200rpm
最大トルク|300Nm/1,800-4,900rpm
トランスミッション|7段Sトロニック
燃費|36.7mpg
CO2排出量|179g/km
価格|2万8610ユーロ(約310万円)

大谷達也氏による、アウディQ3国内試乗記はこちら

           
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