フランクフルト現地リポート|Audi
Audi|アウディ
フランクフルト現地リポート
ことなる方向性をみせるコンセプトカー
アウディは、フランクフルトモーターショーのステージ上において、おなじスポーティ志向なモデルながら、デザインの方向性はことなる2台のコンセプトカーを競演。この2台を軸に、大谷達也氏が現地からリポート。
Text by OTANI Tatsuy
30年前のWRCマシンにトリビュート「スポーツ クワトロ コンセプト」
アウディは「スポーツ クワトロ コンセプト」と「ナヌーク クワトロ コンセプト」という2台のデザインスタディをフランクフルトショーに持ち込んだ。これほど豪勢な展示車を用意したのは、プレミアムブランドではアウディだけだ。
スポーツ クワトロ コンセプトは、オリジナルの「アウディ スポーツ クワトロ」が1983年のフランクフルトショーで発表されて30周年をむかえたことを記念して制作された“トリビュート・モデル”。円筒形の一部を切り取ってオーバーフェンダーとした“クワトロ ブリスター”や直線的で幅広なCピラーなどを採用することで、WRCで活躍したスポーツ クワトロを彷彿とするスタイリングに仕上げられている。
ボディ構造は超高張力鋼板とアルミ ダイキャスト パーツで構成するいっぽうで、ドアやフェンダーをアルミ製、ボンネットやテールゲートをカーボン コンポジット製とすることにより、1,850kgの軽量設計を実現した。エンジンは4.0リッター V8ツインターボで560psと700Nmを発揮。これに110kwと400Nmを生み出す電気モーターを組みあわせたプラグインハイブリッド方式がもちいられている。システムとしてのパフォーマンスは最高出力700ps、最大トルク800Nmで、最高出力306psだったオリジナル スポーツ クワトロをはるかに凌ぐ。駆動方式は、もちろんパーマネント式4WDのクワトロである。
ノスタルジックでありながらモダン「ナヌーク クワトロ コンセプト」
「ナヌーク クワトロ コンセプト」と名付けられたもう1台のコンセプトカーは、やや直線的なデザインのスポーツ クワトロ コンセプトは好対照をなす、ふくよかで情感豊かな曲面で構成されたスタイリングが特徴的。
実はこのデザイン、ジョルジエット・ジウジアーロ率いるイタルデザインとのコラボレーションから生まれたものだという。イタルデザインは現在フォルクスワーゲン グループ傘下にあり、同グループのデザインと密接にかかわっていることは事実だが、彼らの名前が明確に打ち出されたのは今回のナヌークが初めて。それだけにイタルデザインの意向が強く働いたスタイリングと捉えていいだろう。
それにしても、どこかノスタルジックな香りを漂わせながら、徹底的にモダンなナヌークのデザインは極めて魅力的だ。しかも、これまでのアウディ デザインとは似ても似つかないのに、ひと目でアウディとわかる造形に仕上げられている点は見事としかいいようがない。もしも次世代のアウディ デザインがスポーツ クワトロ コンセプトの方向性か、ナヌーク クワトロ コンセプトの方向性かでわかれるのであれば、個人的には後者を強く推したいところである。
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ことなる方向性をみせる2台のコンセプトカー (2)
商品化の可能性ものこるナヌーク
エンジンは新開発の5.0リッター V10ターボディーゼルで、544psと1,000Nmを発揮。このパワープラントはキャビン後方にミドシップされる。先ごろアウディの技術責任者に就任したウルフガング・ハッケンベルクによると、アルミとカーボン コンポジットで構成されるナヌークのモノコックは、次世代のミドシップモデルのために開発されたものとのこと。
ということは、つまり次期型「R8」もアルミとカーボンを組みあわせたモノコックと採用されることを意味する。さらにいえば、ナヌークがただのショーカーではなく、商品化の可能性を残したスタディモデルであることを示唆するものだろう。この辺は大変興味深いことだ。
もうひとつナヌークで興味深いのは、これが単なるスーパースポーツカーではなく、オフロード走行も想定したクロスオーバーであるということ。スポーツカーにしてはロードクリアランスが微妙に大きめに設定されているのは、そのためである。しかも、こちらもクワトロを採用しているため、オンロードやオフロードに限らず、サーキットから雪道まで安心して走破できるとアウディは主張する。
スタイリッシュなオープンモデル「A3カブリオレ」
量産モデル系では「A3カブリオレ」がひときわ目をひいた。そのベースが、日本でも発表されたばかりの新型「A3」であることは言うまでもないが、2ボックスのスタイリングだった先代とはことなり、独立したトランクを持つ3ボックスとされている点が目新しい。
いっぽうで、折りたたんだソフトトップがキャビン後方に“襟巻き”のようにうずたかく積まれるのではなく、ボディ内に収納されてウェストラインをすっきり見せるデザインに仕上げられている点は、いかにもアウディらしい。また、ソフトトップは特別に遮音性を高めた仕様もオプションで用意されるようだ。
エンジンは1.4TFSI(140ps)、1.8TFSI(180ps)、2.0TDI(163ps)の3タイプがまずはラインナップされ、つづいて1.6TDI(110ps)を追加。さらに300psを絞り出す2.0TFSIを搭載した「S3カブリオレ」もデビューすると予定いう。
先代は日本市場に投入されなかったが、スタイリッシュなコンバーチブルモデルが手頃な価格で発売されれば好評を博すのはまちがいない。新型はぜひ、日本でも発売されることを期待したい。