メルセデス・ベンツ Eクラスに日本で試乗|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz E-Class|メルセデス・ベンツ Eクラス
メルセデス・ベンツ Eクラスに試乗
Eクラスがマイナーチェンジを受けた……といっても、その内容が、外観からエンジン、安全装備と、およそ2,000箇所にもわたる、モデルチェンジに近いものであることは、すでにOPENERS読者諸氏もご存知のことだろう。今回は、そのEクラスを日本でテスト。最先端の安全装備と、注目の高効率エンジンを搭載した、「E 250」、「E 350 BlueTec」、「E 400 Hybrid」の3台を大谷達也氏とともにドライブした。
Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki
自動運転だ!
マイナーチェンジを受けたメルセデス・ベンツのあたしいEクラスで自動運転が可能になったと聞けば、誰もが驚くだろう。
本当のことをいえば、それは完全な自動運転ではなく、「自動運転まであと少し」のテクノロジーだけれど、実際に手に触れると「ああ、時代はここまできたのか」との感慨を抱くはずだ。
この装備は「ディストロニック・プラス(ステアリングアシスト付き)」と呼ばれる。
周波数のことなるふたつのレーダーセンサーと、新型Eクラスであらたに採用されたステレオカメラを組み合わせることで、前を走るクルマを検知しながら、それにあわせてスロットルやブレーキ、そしてステアリング操作まで自動的におこなってくれるものである。
おなじくレーダーを用い、前走車にあわせてスピードを自動的に制御する、アダプティブクルーズコントロールという装備ならば、メルセデス・ベンツだけでなく様々なメーカーから発売されている。Eクラスで目新しいのは、これにハンドル操作の機能を盛り込んだ点にある。
実際に試乗してみると、その滑らかな動きに感銘を受けるはずだ。
ハンドル操作も、スロットルやブレーキの踏み方も、人間が丁寧に操っているときとほとんど変わらない。
ただし、しばらくハンドルから手を離したままにすると、ディストロニック・プラスはウォーニングランプを点滅させて「ステアリングを握ってください」と優しく促し、これが受け入れられないと最終的には作動を停止する。
それはまるで、クルマが「アナタに運転する気があるならお手伝いするけれど、その気がないなら私は手伝いません」と語りかけているようにもおもえる。
「ここまでできるなら、そんな面倒な安全機構なんかつけずに、完全な自動運転にしてしまえばいいのに……」
とアナタはおもうかもしれない。
そうしなかった理由のひとつは自動運転が法律上認められていないことにあるのだけれど、それ以上に、メルセデスは乗り手の気持ちに配慮してこのようなシステムにしたのではないかとおもう。
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慎重な姿勢
もしも自動運転が法律的にも認められ、多くの人がそれに慣れ親しんでいる世の中になれば、メルセデスは躊躇することなく自動運転システムを導入するだろう。
ただし、現実に自動運転の恩恵を味わった人はまだごくわずかだし、決してその使い方に習熟しているともいえない。だとすれば、メルセデスが想定していない使い方をされるケースも充分に考えられるし、それがきっかけで事故を招いたとしても不思議ではない。
「技術的には可能だけれど、ドライバーという要素まで織り込んだとき、それが本当に安全であるとは言い切れない」 そんな判断があったことも「自動運転のキャンセル機能」を盛り込んだ理由のひとつだったと推察される。
ところで、いまや“電子の目”による自動ブレーキは軽自動車にまで採用されるようになったけれど、その機能やパフォーマンスは自動車メーカーによってマチマチ。もちろん新型Eクラスにも自動ブレーキは用意されているが、彼らは自動ブレーキひとつをとってもセンサーの目を二重、三重に張り巡らし、誤作動、誤検出の危険性を限りなくゼロに近づけている。
もちろん、レーダーだけ、ステレオカメラだけでも自動ブレーキは実現できる。けれども、いくつかの情報をもとに判断し、「これは絶対に間違いない」との確信を持って自動ブレーキを作動させるメルセデスのほうが、より信頼できるシステムのように映る。
それは、メルセデス・ベンツらしい実に慎重な姿勢といえる。
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E 250からテストドライブ
こうしたセイフティデバイスとならんで注目されるのが、新型Eクラスに導入されたあたらしいエンジン ラインナップである。
「E 550」や「E 63 AMG」といったハイパフォーマンスバージョンには引きつづきV8エンジンが用意されるけれども、新型Eクラスで主力になると見られるのは3.5リッター V6 ガソリンNA、3.0リッター V6 ディーゼルターボ、そして2.0リッター 直4 ガソリンターボの3機種だろう。
ここで特に注目されるのが2.0リッター直4 ガソリンターボ。このエンジンは、成層希薄燃焼という極めて難易度の高いテクノロジーを用い、省燃費化と優れたパフォーマンスを両立させている。
成層燃焼とは、ガソリンを燃やす燃焼室のなかで、ガソリンが比較的濃い部分と薄い部分の両方を作り出す技術。
できれば、ガソリンはなるべく薄くしたほうが燃費はよくなるけれど、そうすると混合気に火をつけるのが難しくなる。そこで、まずガソリンの濃い部分に火をつけ、この勢いを借りてガソリンの薄い部分まで一気に燃やしてしまおうというのが、この成層燃焼である。
ただし、燃焼室のなかで、素早く、そして狙いどおりに“濃い部分”と“薄い部分”を作り出すのは極めて困難で、これまでも日本車メーカーなどが何度か試したものの、どれひとつとして成功作はなかった。
メルセデス・ベンツは独自の燃焼理論を用いることで、完成度の高い成層燃焼エンジンをつくりあげたと胸を張る。
このエンジンを搭載したE 250に試乗すると、「もうV6もV8も要らないんじゃないの?」という気になってくる。そのくらい、活発によく走るのだ。
たしかに高回転までまわすと4気筒らしい軽いバイブレーションを感じ、この点ではV6やV8が恋しくなるけれど、それ以外の領域であればトルク感、レスポンス、静粛性のいずれをとってもメルセデス・ベンツの合格ラインに達している。
おまけにJC08モード燃費は15.5km/ℓとひと昔前までのコンパクトカー並み。
しかも価格は595万円からとお手頃なので、「これまではCクラスしか手が届かなかった」という層に強くアピールするモデルだといえる。
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もうディーゼルといわれないと気づかないかもしれない
また、3.0リッターV6 ディーゼルターボを搭載する「E 350 BlueTEC」の仕上がりの良さにも舌を巻いた。
とにかく、マイナーチェンジ前にくらべてノイズとバイブレーションが圧倒的に小さくなっており、「これ、ディーゼルですからね」とあらかじめ言われなければ多くの人が気づかないだろうとおもえるほど洗練された感触だった。
しかも、低回転域でのレスポンスの良さと高回転域での伸びやかさも併せ持っている。さらに、ディーゼルだから燃料費は安く済み、一回の満タンで走れる航続距離は恐ろしく長い。CO2排出量が少ないことを含め、高速道路を多用する環境意識の高いドライバーにお勧めの1台である。
Eクラス初のハイブリッドは?
Eクラスに初導入されたハイブリッドモデル「E 400 HYBRID」も注目の一台だ。同クラスではBMWやアウディが採用しているパラレル式ハイブリッド方式をメルセデスとして初採用。コンパクトなシステムながら電気モーターのみでも走行できる力強さを備え、3.5リッター V6 ガソリンエンジンと組み合わせながら15.2km/ℓとE 250なみの低燃費を実現している。
こちらはV6エンジンらしい滑らかさと、ハイブリッドシステムが作動したときの力強さを併せ持つ魅力的なパワーユニットだったが、試乗車の個体差によるものなのか、モーターやエンジンが断続する際にややぎくしゃくする傾向が見られた。ひょっとすると初期モデル特有のクセみたいなものかもしれないが、この辺は自分で完成度を確認されたうえで判断を下していただきたいとおもう。
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別物になったところ
ここまでセイフティシステムとパワートレインについて記してきたが、実は、新型メルセデスでもっとも魅力的なポイントとして紹介したいのが、足まわりの仕上がりである。これが実に上質で快適。従来型のEクラスとはまったくの別物に感じられたのである。
路面のゴツゴツを吸収するハーシュネスの遮断は良好だし、全体的にやや柔らかめな乗り心地もメルセデス・ベンツらしくて心地よい。BMWやアウディがスポーティ路線を突き進むなか、一時はメルセデスもそれに引きずられるような傾向も見られたが、やっぱりメルセデスはメルセデス。それも、Eクラスのようなラグジュアリーセダンともなれば、このようなゆったりした乗り心地こそがふさわしいとおもう。
とはいえ、ソフトだからといって、かつてのアメ車のようにまるでコントロールが効かない、というわけではまったくない。
柔らかいなりにも、まるでスポーツ選手のしなやかな筋肉のようにしっかりとクルマの動きを支えてくれるから、箱根を飛ばしてももどかしさは感じない。
また、サスペンションがほんの少しだけストロークした状態から、サスペンションストロークを使い切ってしまうほど大きなうねりに遭遇したときでも、乗り心地の印象が大きく変わらない点も素晴らしいと感じた。
向上した静粛性を含め、新型でEクラスは完成形になったという印象を強く持った。
2011年に「Cクラス」がマイナーチェンジを受けたときのキャッチフレーズは「メルセデス史上、最高傑作の“C”」というものだった。それに匹敵する大規模なマイナーチェンジを果たしたEクラスも「メルセデス史上、最高傑作の“E”」と呼ぶことができる。
「Eクラスを買うなら“いま”」と、自信をもってお勧めしたい。
Mercedes-Benz E 250 Avantgarde|メルセデス・ベンツ E 250 アバンギャルド
ボディサイズ|全長4,890×全幅1,855×全高1,455 mm
ホイールベース|2,875 mm
トレッド 前/後|1,580 / 1,585 mm
重量|1,750 kg(パノラミックスライディングルーフ装着時 1,790kg)
エンジン|1,991 cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力| 155kW(211ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|350Nm(35.7kgm)/ 1,200-4,000 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7G-TRONIC PLUS)
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|245/40R18 / 265/35R18
燃費(JC08モード)|15.5 km/ℓ
価格|655万円
Mercedes-Benz E 350 BlueTEC Avantgarde|メルセデス・ベンツ E 350 ブルーテック アバンギャルド
ボディサイズ|全長4,879×全幅1,854×全高1,475 mm
ホイールベース|- mm
トレッド 前/後|- mm
重量|- kg
エンジン| 2,987cc V型6気筒 直噴DOHC ターボ ディーゼル
最高出力| 185kW(252ps)/ 3,600 rpm
最大トルク|620 Nm(63.2kgm)/ 1,600-2,400 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7G-TRONIC PLUS)
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|245/45R7 / 245/45R17
燃費(JC08モード)|- km/ℓ
価格|798万円
(スペックは欧州参考値)
Mercedes-Benz E 400 Hybrid Avantgarde|メルセデス・ベンツ E 400 ハイブリッド アバンギャルド
ボディサイズ|全長4,880×全幅1,855×全高1,455 mm
ホイールベース|2,875 mm
トレッド 前/後|1,580 / 1,585 mm
重量|1,860 kg(パノラミックスライディングルーフ装着時 1,900kg)
エンジン|3,487 cc V型6気筒 直噴DOHC
エンジン最高出力| 225kW(306ps)/ 6,500 rpm
エンジン最大トルク|370Nm(37.7kgm)/ 3,500-5,250 rpm
モーター最高出力|20kW(27ps)
モーター最大トルク|250Nm(25.5kgm)
トランスミッション|7段オートマチック(7G-TRONIC PLUS)
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|245/40R18 / 265/35R18
燃費(JC08モード)|15.2 km/ℓ
価格|890万円