OPENERS CAR Selection 2012|渡辺敏史篇
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2014年12月8日

OPENERS CAR Selection 2012|渡辺敏史篇

OPENERS CAR読者におくる2012年の5台

OPENERS CAR Selection 2012 渡辺敏史篇

OPENERS CAR編集部は、2012年、OPENERS CARを支えた執筆者6人に、2012年を振り返ってもらうと同時に、OPENERS読者に注目してもらいたい5台を選んでもらった。渡辺敏史氏の一等賞5選!

Text by WATANABE Toshifumi

ディーゼル元年

こと日本市場においては三尺玉級の派手な大花火はなかったものの、割と身近な商品の実直な進化が多かったと感じる2012年。総体的にみれば、個人的にもエネルギーミックスの観点から推していたディーゼルが完全に市民権を得たことが感慨深い。

そこにもっとも貢献したのは言わずもがなのマツダ「CX-5」。経営規模的には微妙な立場でありながら、いいクルマをつくるという情熱はどこにも負けない彼らが、ディーゼル勝負で想定を遙かに上まわる反響をもたらした。5-6年前にメルセデスがディーゼルの鎖国を切り拓いた状況を踏まえると、2012年は文句なしのディーゼル元年と言ってもいいだろう。もちろん、そこにはBMWの強力な援護射撃があったことも忘れてはならない。

ハイブリッドにくわえてディーゼルという、あらたな選択肢を得た日本の市場は、来年も多様性を帯びて進化することになる。くわえて、後述する「up!」の衝撃は日本のプロダクトにも少なからず影響を与えるはずだ。これらのシナジーから生まれてくる日本車には、個人的には期待が持てるとおもっている。はっきりとハイブリッド依存度の高かった日本のメーカーが、欧州のライバルに比するテクノロジーを投入した内燃機が出揃うまでにはあと2年くらいの時が必要だろう。とかく弱電に次いでのガラパゴス化が心配される日本の自動車産業だが、そうやすやすとは沈まない。そんな手応えは日々の取材でも感じている。

来年以降には、その息吹が芽生えてくることになるだろう。本気の本気で彼らと勝負するタイミングは2014-15年。昨年よりは確実に、自分の日本車にたいするおもいは明るい。

渡辺敏史氏がOPENERS読者にオススメする2012年の5選

何かにつけてコストとせめぎあうAセグメントをどう巧くまとめるかというのは、軽自動車~リッタークラスを常に置く日本車としては十八番ともいえる仕事だったわけです。いっぽうで「ルポ」も「フォックス」も商業的にはうまくいかなかったVWにとっては半ばトラウマであったと。up!は見事にそれをひっくり返しました。こと動的質感において、これに敵う同級の日本車は皆無です。しかも積んでる小排気量3気筒エンジンといえば日本車のお家芸。日本のメーカーに与えたいい意味でのインパクトという点においても、個人的には今年の一等賞です。

SUBARU IMPREZA
スバル インプレッサ

日本のメーカーにはこんなにいっぱいクルマがあって、ダイナミクス&コンフォートはそれぞれ平均点レベルにはあるんだけど、まともなヤツは本当に少ない……なんざつい口走ってしまうわけですよ、我々みたいな仕事の輩は。でもこういうクルマが出てくると、やっぱり奮起しますよね。やりゃあできるんだと。日本のあらゆるFFデイリーカーにおいて、そのドライバビリティはトップにいるとおもいます。iSightの用意もあるし、個人的には親に買ってあげたいクルマ一等賞です。

その方策は何であれ、BMWがいかに環境性能を高めることに本気であるかは、あたらしい3シリーズが端的に表現してくれたとおもいます。台数的にはさほど美味しくない日本市場で、フルモデルチェンジと共に一気にフルハイブリッドもディーゼルも投入するという出し惜しみなしの商品展開には、モノの仕上がり以上にビックリさせられました。この2つに話題が偏り勝ちですが、普通の320iの燃費効率やMT仕様の出来の良さなど、話題にはとにかく事欠かなかった一等賞です。

ポルシェにとって2012年は、十数年に一度という惑星直列級の一大事だったかとおもいます。なんといっても911とボクスターという運命共同体にして大黒柱という2車がフルモデルチェンジだったわけですから。ここでボクスターを推したのは、スポーツカーとしてのピュアネスもラグジュアリー性もと、両立した欲張りな刷新が見事に巧くいっているから。スポーツカーセグメントにおいて、誰もがベンチマークとすることになるだろうその総合完成度に一等賞を。

プレミアムブランドのプライドがぶつかりあうラグジュアリーサルーンのセグメントも一服感のあった今年、トヨタとしては異例に手が込んだマイナーチェンジを施したLS。言わずもがなレクサスのフラッグシップですが、地元贔屓もなしに、ようやく欧州勢と肩を並べるあたりにきたかという感があります。たとえばSクラスは13年にフルモデルチェンジとか、ライバルも歩みを緩める気配は全くありませんが、今年フルモデルチェンジしたGSを含め再びレクサスが本気勝負の場に立ったということで、今年の日本車一等賞を。

           
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