新型メルセデス・ベンツGクラスに試乗|Mercedes-Benz
CAR / IMPRESSION
2018年5月21日

新型メルセデス・ベンツGクラスに試乗|Mercedes-Benz

Mercedes-Benz G class|メルセデス・ベンツGクラス

最強のクロスカントリー型4WD

現行モデルのなかで世界最長寿の1台、メルセデス・ベンツ「Gクラス」が39年ぶりにフルモデルチェンジ。先ごろ南仏で試乗会が行われた。その様子を小川フミオ氏がリポートする。

Text by OGAWA Fumio

守るべきところは守ったモデルチェンジ

Gクラス」はこれまで何度も“変わる変わる”と噂されていただけに、どう変わるのか!と大きな注目を集めてきた。

はたして2018年初頭にデトロイトで開催された北米国際自動車ショーでお披露目された新型は、意外なほど従来と同じ見かけだった。

3月の「ジュネーブ国際モーターショー」では、メルセデスAMGの「G63」がお目見え。では実際に乗るとどうなのか。興味が募ったところでの、今回の試乗会は、ぼくにとって、たいへん意義あるものだった。

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新型Gクラスの特徴を一言でいうと、守るべきところは守ったモデルチェンジ、となるだろうか。

ラダーフレームシャシーは継承。CリングとDリングと呼ばれる後輪まわりとその後ろの部分を中心に補強を入れ、ねじれ剛性は先代より50パーセントも向上させた。

サスペンションにも変更があり、リアは5リンクの固定式だがフロントは今回、独立式になった。メルセデス・ベンツでは操縦性を上げるため、としている。

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前と後ろと真ん中、3つ設けたディファレンシャルギアのロック機構と、ローレンジギアの設定も先代からの継承。

「この組み合わせさえあれば、いたずらに電子制御機構を採り入れる必要はないと思っています」とは、責任者であるメルセデス・ベンツのドクター・グンナー・グーテンケ氏の弁。

さらに続けて、デザインも先代のイメージを大切にすることにこだわったと語った。

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列記しても、四角いボディ、丸型ヘッドランプ、フェンダー上のウィンカー、プッシュボタン式ドアハンドル、外部に出ているドアヒンジ、背負ったスペアタイヤと、枚挙にいとまがない。

「それでも現代的な規準に合致させています。たとえばウィンカーは、衝突時に歩行者を守るために、衝撃を受けるとボディ内部に引っ込む構造です」と説明。

従来はリアウィンドウの上に設置されていたリアビューカメラだが、「すぐ汚れて使いにくい」というユーザーからの声を受けて、スペアタイヤの下に移された。

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最強のクロスカントリー型4WD (2)

まるで快適なセダンを操縦しているような感じ

なにより新しい点は、走り出すとすぐに分かる。乗り心地とハンドリングである。しなやかで、従来のようにシャシーとボディが別々に動く独特の感じはなくなった。

びしっとしていて一体感がある。ステアリングへの反応もよい上、操舵したときのボディの動きも乗用車的に制御がきいている。

僕は最初、メルセデスAMGのG63で南仏の田舎道と国道を走り、その後メルセデス・ベンツG500に乗ったが、大掴みな印象は同じだ。

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まるで快適なセダンを操縦しているような感じすらある。2車とも4リッターV型8気筒エンジン搭載。それに9段オートマチック変速機の組み合わせだ。

G500が310kW(422ps)の最高出力と610Nmの最大トルクであるのに対して、G63は430kW(585ps)と850Nm。変速機もAMG独自の制御が設けられている。G63はスポーティなセダンのようだ。

アクセルペダルの踏力は軽く、大トルクを発生するエンジンの反応も、オンロードではかなり素早い。ブレーキの効きもとてもよい。これがGクラスかと驚くほどだ。

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室内騒音も低い。ウィンドシールドもサイドウィンドウもかぎりなくフラット(それでも完全に平板ではない)だが、Aピラーからルーフまわりの空力デバイスやルーフ先端の遮音材などが効果を発揮している。

風切り音は予想以上に低く、G63では勇ましい排気音が聞こえるが、全体としてはかなり静かだ。オプションのブルメスターオーディオが搭載されていたので、試乗車では音楽を存分に楽しめた。

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室内は先代より空間が拡大。ここはかなり現代的だ。助手席には先代の特徴だったグラブバーが残されたが、あとはタービン型のエアベントや大型2連のTFT液晶など現代的だ。

「モデルチェンジの背景には軽量化などによる効率アップとともに、インフォテイメントシステムや運転支援システムを搭載することがありました」

試乗会場で開発者がそう教えてくれた。ドライビングポジションも“ふつう”になっているし、シートは座り心地もホールド性も優れている。内部には最新の快適性があるのだ。

新型Gクラスはたいした高速クルーザーだ。どんな長い距離を走っても疲労は少ないだろう。そして運転そのものが楽しめる。まさにここに新型の特筆点がある。

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最強のクロスカントリー型4WD (3)

オンオフの両面性の強さに感心させられた

一方、オフロード性能の高さも、開発にあたっての眼目だったという。「Gは常にG。ただよくなっている」。メルセデス・ベンツの開発を統括するオラ・ケレニウス氏の言葉を思い出した。

試乗コースはシャトー・ド・ラストゥールというワイナリーだ。モータースポーツ好きのオーナーが一部に手を入れて90kmにおよぶコースを作りあげた。

そこは現在もダカールラリーの練習に使われたり、メルセデス・ベンツのような会社が自社製品のテストのために訪れたりしている。

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Gクラスはオーストリアのグラーツで開発、生産され、近くの山を使ってテストされるのだが(時々一般道を横切ることになるすごいコース)、シャトー・ド・ラストゥールの路面はまた違っていた。

岩場もあれば砂利も砂地もあり、深い水たまりまである。新型Gクラスは、G500でもG63でも、そこを縦横無尽という感じで走り回れるのだ。

G63では「トレイル」「サンド」「ロック」という3つのオフロード ドライビングプログラムが用意されている。センターディフをロックしたあと「ダイナミックセレクト」を操作して選択する。

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「トレイル」ではパワーの出方が「抑えめ」、サスペンションは「トレイル」モード、ステアリングは「オフロード」などとなる。「サンド」ではサスペンションが「サンド」になり、ステアリングは「スポーティ」に。

3つのモードの差はけっこう大きくて、とりわけステアリングホイールの感覚が大きく異なる。オフロードの踏破力は高く、頭から転げ落ちそうな急勾配の岩場を下りながら、“さっきまで高速道路をぶっとばしていたのに”と両面性の強さに感心させられた。

G500にはプリセットされた3つのオフロードモードはないが、ディフロックスイッチ、あるいはトランスファーのローレンジと連動する「Gモード」が設定されている。

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「Gモード」が作動するのはローレンジが選ばれているため、サスペンションのダンピング、ステアリング特性、それにアクセルペダルへの反応などが悪路に適したものとなるのだ。

車両はゆっくりと、しかし確実に、たとえわずかなスペースしか残されていなくてもしっかりタイヤで地面をグリップし、着実に前へと進んでいく。

上りの勾配がきつくてドライバーには空しか見えないときはフロントビューカメラが使える。路面の状況が確認できるのだ。

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最強のクロスカントリー型4WD (4)

ライバルはレンジローバー

実生活でこんな走りをするG500のユーザーがいるかよく分からないが、これを経験するとクルマへの信頼感がぐんと増し、好きになることは間違いない。

オンロードでもオフロードでもこなしてしまい、大排気量のエンジンを搭載し、スーツでも似合うクルマというと、レンジローバーが思いつく。メルセデス・ベンツの開発者も「当然意識しました」と言う。

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Gクラスならではの個性としては、ヒルデセント コントロールのようにボタン一つでなんでもできる機構を持たないことだ。

「開発過程で検討はしましたが、ボタン一つで走行中も作動させられるローレンジと、3つのディフロックがあれば問題ないという結論に達しました」

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先のGクラス開発者の言葉である。急勾配を下るときはアクセルペダルから足を離したままでも、ローレンジのトルクだけで確実に、力強く、そして安心感を持って進めるのだ。

どこまでも走っていけるオールマイティぶりが身上の新型Gクラス。最強のクロスカントリー型4WDである。

           
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