メルセデスGクラス、40年ぶりのフルモデルチェンジ|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz G-Class|メルセデス・ベンツ Gクラス
長年の進化を一気に果たす
メルセデスGクラス、40年ぶりのフルモデルチェンジ
メルセデスは今年1月、デトロイトで開催中の2018年北米国際モーターショー(NAIAS)で、実に40年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型Gクラスを発表した。
Text by SAKURAI Kenichi
ゲレンデヴァーゲン、第2世代へ
実に約40年もの長きにわたり、世界中のカスタマーから高い支持を得てきた、孤高のSUVたるメルセデス・ベンツの“ゲレンデヴァーゲン”。発表当時はSUVというカテゴライズさえない時代であり、したがって今改めて見れば、タフでただただ走破性のみを求めた本格的な4駆モデルであったことが分かる。
ゲレンデヴァーゲンは、メルセデス・ベンツと、オーストリアのシュタイア・プフ社との共同開発によって、軍用車両として企画されたモデルだった。それを民生用車両として転用したのがゲレンデヴァーゲンである。1979年市販当時の型式はW460。パートタイム4WDを採用していた。その後1989年にマイナーチェンジを受け型式はW463となり、同時にフルタイム4WDシステムを導入した。
さらに時は進む。メルセデスのネーミング戦略にのっとり、ゲレンデを意味するGの頭文字を得て「Gクラス」と呼ばれるようになるが、それは1994年のこと。ここまでパワートレインの変更や、内外装のアップデイトを繰り返して改良に改良を重ね進化を遂げてきたが、シャシーやボディフォルムなど、基本的なボディ ストラクチャーは現在に至るまでデビュー当時のそれを踏襲してきた。
そうしてデビューから約40年後の今年1月、北米国際自動車ショー(NAIAS=通称デトロイトモーターショー)で新型のGクラスがヴェールを脱いだ。前述のとおり基本構造を変更しないまま40年近くにわたり作り続けられてきたことから、メルセデスではこの新型Gクラスをもって第2世代と表現する。
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伝統的な外観にモダンな内装
ではこの新型モデル、いったいどんな特徴があるのか。
気になるのは、ルックスだ。伝統的で本格4駆のアイコンともいうべきスクエアなフォルムは、初代モデルを踏襲。垂直に切り立ったフロントマスク、フラットなフロントウィンドウ。そう、アンヴェールされたそのエクステリアデザインは、誰がどこからどう見てもGクラスにしか見えないフォルムである。そして新型GクラスをGクラスらしく見せるフレーバーも健在。フロントフェンダー先端に乗ったウィンカーレンズやドアハンドル、露出したドアヒンジ、リアゲートに到着されたスペアタイヤカバーなど、伝統的なディテールをもれなく継承した。
このデザインを喜ぶのか、それとも進歩が無いと切り捨てるのかは人それぞれだろうが、メルセデスにとってこの変わらぬデザインの継承は、決して簡単な決断ではなかったはずだ。しかしGクラスがGクラスであり続けるためにも、このデザインが必要だったという点には同意できる。言い換えればGクラスのエクステリアデザインは、流行や時代の要求とは無縁の、一種の不変性を持つものだと証明したかのようでもある。
一見変わらないデザインではあるが、ボディサイズは全長で53mm、全幅では212mm拡大された(本国値)。その拡大されたボディサイズの恩恵は室内にも現れていて、前席ではレッグルームとショルダールームをともに38mm、エルボールーム68mm拡大。後部座席ではレッグレームを150mmも拡大し、ゆとりある空間を確保した。同時に後席ではショルダールームが27mm、エルボールームが56mmも広く作られている。
広くなったキャビンでは、旧来モデルをそのまま生き写しにしたようなエクステリアとは大きく異なり、40年分の進化を感じ取ることができる。特に新しさを感じるのがダッシュボードまわりである。センターコンソール上部には12.3インチサイズの液晶モニターを装着。これはオプションでメーターパネルも液晶パネルに変更した(標準装備のメーターはアナログデザインだが発表時にそのデザインは未公表)、12.3インチ×2枚の超ワイドスクリーンを選択することも可能である。
液晶モニターを2枚繋げたGクラスのインパネは、まるで「Sクラス」のようなモダンなメータークラスターに変貌を遂げる。さらに最新のデジタルデバイスの例に漏れず、メーター内デザインをクラッシック、スポーツ、そしてプログレッシブの3タイプから任意に設定することもできる。
もちろん他のメルセデスのように、タッチパッドやダイヤル式スイッチを搭載する最新式のインフォテインメントシステムをGクラスでも採用。ステアリングホイールもSクラス譲りのモダンな操作系を持ったニューデザインで、このインパネだけを切り出して見たら、おそらくこれがGクラスのコクピットだとはにわかには信じられないかもしれない。唯一Gクラスだと印象付けるのが、従来モデル同様に助手席のグローブボックス上部に用意されたグラブハンドル(アシストグリップ)の存在である。
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機構も一気にアップデート
ビジュアル面からGクラスの紹介を始めたが、ボディ内部も大きく変わった。従来型同様にラダーフレームを置き、その上にボディを載せるという構成は新型でも同じだが、フレームは完全新設計。ねじり剛性を55パーセントも向上させた。いっぽうボディ上屋には、超高張力鋼板やアルミニウムを使用。これによって先代モデルよりも170kgの軽量化に成功してる。
サスペンションの開発にはAMGの関与も認められた。これまでの4輪リジッドアクスルから、フロントはダブルウイッシュボーンに、リアはそのままリジッドアクスルを継承するが、トレーリングアームの本数を増やし、オンロードでのスタビリティや乗り心地を向上させているという。
ステアリング形式はボールジョイントからラック&ピンオンに変更され、同時に電動パワステも装着。これはレーンキープアシストなど、他のメルセデス同様の運転支援システムを採用するためだと考えられる。
こうした足まわりと新型のラダーフレーム、ボディのデザインなどによって、最低地上高は先代からプラス6mmとなる241mmに向上。アプローチアングル/リアのデパーチャーアングルはそれぞれ1度プラスされ、31/30度に、凹凸のを乗り越える際にボディ底部のクリアランスを計るランプブレークオーバーアングルもプラス1度の26度を確保。最大渡河深度は、従来に100mmプラスの700mmを保証する。
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パワートレーンも一新
気になるエンジンは、発表時の段階では最高出力422ps、最大トルク610Nmを誇る4リッターV型8気筒ツインターボのみをリリース。トランスミッションは9Gトロニックと呼ばれる9段ATのみの設定だ。駆動システムはもちろんフルタイム4WDだが、フロント/センター/リアに配置されたデファレンシャルロックを、インパネ中央のスイッチで個別にロックできるのは従来モデルと同じである。
ちなみにこのパワートレインは燃費の点でも従来モデルを凌ぐ。欧州複合モードで11.1ℓ/100km(約リッター9.0km)の燃費がカタログ数値として掲げられ、CO2排出量も263g/kmに抑えられている。現状ではディーゼルのラインナップや、AMG製のパワーユニットを搭載したバリエーション、さらにいえばこのところメルセデスが積極的にすすめている電化を行ったエンジン(EQに代表されるPHEVやマイルドハイブリッド)などは発表されていない。
Gクラスだけ取り残されていたレーダーセーフティに代表される運転支援システムは、新型に移行することによって最新式にアップデイトされた。ADASによって他のメルセデスと同等の安全性が確保されたのは、都会に暮らす(大半がそうかもしれない)Gクラスのユーザーにとって嬉しいニュースのひとつだろう。試乗するまでは言明できないが、これまでのモデルがそうであったように、生産拠点に近いオーストリアのマウント・シューケルでのタフな走行テストを行ったと聞けば、オフロード性能も相当に磨き込まれているに違いないと、期待が高まる。
NAIASの発表で、第2世代Gクラスのすべてが分かったわけではないが、この大きなトピックに興奮するなというほうが無理だろう。まずはこの歴史的モデルの正常進化(とデザインが過去発表されたコンセプトカーのようにならなかったことを合わせて)を喜ばしく思いつつ、日本上陸のタイミングを含め、続報に期待したい。
メルセデスコール
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