新型アウディ A5 & S5 クーペに試乗|Audi
CAR / IMPRESSION
2016年7月27日

新型アウディ A5 & S5 クーペに試乗|Audi

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

新型アウディ A5 & S5 クーペに試乗

よく出来た珠玉のようなクーペ

10年ぶりにフルモデルチェンジを受けた新型アウディ「A5 クーペ」。ポルトガルで開催された国際試乗会に参加した小川フミオ氏が、いち早く同モデルの真価をリポートする。

Text by OGAWA FumioPhotographs by AUDI AG

山でも“おいしい”クルマ

スタイリングと機能性をバランスさせて人気が高いアウディ「A5クーペ」がフルモデルチェンジを受けた。流麗でいながらマッシブな印象を与えるスタイリングテーマは引き継ぎつつ、全長は47mm長く、全幅はやや狭く、全高もわずかだか低くなっている。同時によりスポーティな「S5クーペ」も発表された。

日本に(おそらく2017年に)導入される予定のモデルは下記のとおり。

アウディ A5 クーペ 2.0TFSI クワトロ(2リッター4気筒 185kW/252ps、370Nm)
アウディ S5 クーペ(3リッターV6 TFSI 260kW (354 ps、500Nm)

加えて下記のディーゼルモデルも導入検討中だとか。

アウディ A5 クーペ 2.0TDIクワトロ(2リッター4気筒ディーゼル 140kW/190 ps、400Nm)

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

空力抵抗を表すCd値は0.25と低い

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

A5クーペの全長は4673mm(欧州値)

シャシーはすべて新しく、A5クーペではサスペンションを含めて先に登場した「A4セダン」および「アヴァント」と共用パーツが多い。A5クーペの変速機は従来の無段変速機に代わり7段のツインクラッチ式。いっぽうSクーペには8段のトルコンオートマチックが搭載された。

加えてS5クーペに新世代の3リッターV型6気筒エンジンが用意されたのも大きなニュースだ。

アウディの新型A5クーペおよびS5クーペがお披露目されたのは、欧州でも人気の高いリゾート、ポルトガルのポルト県だ。中心地のポルトは大西洋に面した港町であり、美しい街並みと美食で知られるいっぽう、郊外は山あり谷ありの自然が造型したドライブコースが展開する。リゾートホテルも多く、優雅なイメージのこのニューモデルにもよく合う土地といえる。

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

アウディA5クーペ2.0TFSIクワトロには1984cc4気筒(185kW/252ps、370Nm)が搭載される

Audi S5 Coupe|アウディ S5 クーペ

S5クーペは新開発の2995ccV型6気筒エンジンにクワトロシステムの組み合わせ

よく合うといえば、「運転を楽しんでいただけるように(ポルトを)選びました」(アウディ本社の広報担当者)と言うように、新型A5クーペおよびS5クーペは山でも“おいしい”クルマだ。ドライブを堪能することができた。上りと下りが交互に現れる山岳路ではじつに安定した走りで、かつ操縦するよろこびを十分に味わわせてくれる。

走り出しから「いいクルマ!」と思った印象は、ポルト近郊の郊外を縦横無尽に走り回るうちに確信へと発展し、最後には「もっと乗っていたい」という愛着へと変わっていったのだった。

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

新型アウディ A5 & S5 クーペに試乗

よく出来た珠玉のようなクーペ (2)

よく走ることが感じられるデザイン

アウディの新型A5クーペおよびS5クーペは、車名からわかるように、2ドアボディのみ。2006年に登場した初代のフルモデルチェンジになる。現行車種では09年に、フルオープンのカブリオレと4ドアのスポーツバックが追加された。同様に新型でも同種のバリエーションが予定されているという。

クーペのよさはやはりエレガンスと気持ちよさにあるのではないかと僕は思っている。ひらたく言うと、どれだけカッコいいか。スタイルこそなにより重要といえる。A5クーペおよびS5クーペはその期待に応えてくれる。とりわけ側面から見た場合、リアのホイールハウス真上あたりにリアクォーターピラーを持ってきたことで後輪の存在感が強調され、プロポーションのよさが目を惹く。マッシブで走りがよさそうな印象を与えるためのスタイリング上のセオリーだ。前後輪のところで波打つような側面のキャラクターラインも、やはりタイヤの存在を目立たせるとともに、優雅さを同時に感じさせる。

Audi S5 Coupe|アウディ S5 クーペ

ボディ側面の波状のキャラクターラインが特徴的

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

LEDを使ったリアコンビネーションランプは全車標準装備

「スタイリングで意識したのは、(1980年代発表の)クワトロの伝統です」。意外なことを教えてくれたのは、A4とA5のエクステリアデザインを統括するフランク・ランバーティ氏だ。

「クワトロはブリスターフェンダーと呼ばれる手法で前後フェンダーをふくらませて前後輪の存在感を強調していました。今回はその歴史を頭の隅に置きつつ、側面で見たときは波状のキャラクターラインで、真上から見たときもタイヤの上がふくらんで見えるようなデザイン処理をしています」

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

S5クーペは18インチリム径タイヤがスタンダード

Audi S5 Coupe|アウディ S5 クーペ

赤色を使ったS5専用ロゴが目を惹く

フロントグリルをワイドにしつつ、取り付け位置をやや下に下げたのがフロントグリルの造型における新しさ。ボンネットの前端部を折り曲げたようなスタイルが新型の特徴だ。さらにボンネットにはパワードームとアウディが呼ぶふくらみが設けられ、パワフルなエンジンをフロントに収め、よく走ることが感じられるようにしている。

運転しての印象はたんなる美しいクーペにとどまらなかった。

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

新型アウディ A5 & S5 クーペに試乗

よく出来た珠玉のようなクーペ (3)

大人のミドルサイズクーペとして高得点をあげたい

新型A5クーペとS5クーペ、走りの印象もかなりよかった。エレガントというより、積極的にドライブが楽しめるのだ。最初に乗ったのは、アウディA5クーペ2.0TFSIクワトロ。185kW(252ps)の最高出力と、370Nm の最大トルクを持つ2リッター4気筒エンジンを搭載したモデルだ。これに7段のデュアルクラッチ変速機が組み合わされている。

エンジンはどの回転域でもトルクが十分にあって力強く、かつ回転を上げていくときの加速感が気持ちよい。回転が上がってもいやなかんじの振動は感じない。ステアリングホイールの操舵感といい、そのときの車両の挙動といい、端的に表現すると、じつにしっかりしていると僕は思った。A5クーペではアクセルペダルのオンオフに対する反応もするどく、速度コントロールも容易で、どんどん改善が施されているのがよくわかった。

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

車重は先代に対して最大で60kg削減されてい

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

12.3インチのTFTモニターが備わる

高速までの伸びはよく、加速感も適度にあるが、どちらかというと、気がついたらこんな高速!というスムーズさ。ワインディングロードでは変速機でSモードを選択すれば下りでシフトアップすることもなく、適切なギアをホールドしながら、コーナー手前ではアクセルオフで減速、エイペックスをすぎてからはすかさず加速というスポーティなドライビングが堪能できる。ハンドリングは素直で、通常のコーナリングではニュートラル性が高い。中央付近の微少な舵角にもきちんと応えてくれる。いかなる速度域でも気分よくドライブできるクルマなのだ。

室内の騒音レベルはとても低く、大人のミドルサイズクーペとしてかなりの高得点をあげたいと僕は思った。走りでいうとその上を行くのがS5クーペだ。

Audi A5 Coupe|アウディ A5 クーペ

新型アウディ A5 & S5 クーペに試乗

よく出来た珠玉のようなクーペ (4)

運転を積極的に楽しみたい人にはS5

新型S5クーペには新開発の3リッターV型6気筒ユニットが搭載された。従来より15kW(21ps)出力が上がり、トルクも60Nm増大している。特徴はミラーサイクルを採用していることで、吸気バルブを通常のオットーサイクルより長めに開けることでシリンダー内に吸い込んだ混合気に効果的なスワールが起き、効率よい燃焼が得られるとされる。A4でもすでに採用されている技術だ。

ターボチャージャーは90度のバンク角を持つエンジンのあいだに設置され、エンジンを冷ますウォータージャケットを利用して吸い込む排気もターボに最適な温度にまで下げられる。V型6気筒に最適なバンク角は60度といわれているが、「コンパクトにまとめ効率を考えてあえて90度Vにしました」とエンジン開発を担当したゲルハルト・フロエリヒ氏は教えてくれた。

Audi S5 Coupe|アウディ S5 クーペ

S5クーペは静止から100km/hを4.7秒で加速する

Audi S5 Coupe|アウディ S5 クーペ

S5クーペにはスポーツディファレンシャルが後輪に装備されコーナリング時のアンダーステアを打ち消す働きをする

S5クーペははつらつと走る。A5クーペでも感心したが、運転を積極的に楽しみたい人には、掛け値なしにS5クーペを勧める。1370rpmから500Nmの大トルクを得るエンジンは、5400rpmで260kW(354ps)の最高出力を発生する。ゆるゆると走っても力をたっぷりと感じられるし、回せばぐいぐいと速度を増していく爽快な加速感をたっぷりと味わえるエンジンだ。

変速機は8段オートマチックで、変速はスムーズかつ、トルクバンドをしっかり使えるので加速はすばやい。とりわけダイナミックモードを選んでいる場合、加減速の気持ちよさは特筆ものだ。ドライブしていると気分が晴れ晴れとしてくる。軽量化を意識したというV6エンジンはハンドリングに影響を与えていない。ダンパーコントロールを備えた専用のサスペンションシステムはしなやかでありつつ、コーナリングは速い。僕が運転したクルマはよりスポーティな設定のSラインというオプションが搭載されていたため、ホールド性のよいバケットシートや立体的なグリップ形状で操作性のよいステアリングホイールなど、演出も十分。気分が盛り上がった。

Audi S5 Coupe|アウディ S5 クーペ

バーチャルコクピットとMMI(マルチメディアインターフェイス)はオプションで用意されている

Audi S5 Coupe|アウディ S5 クーペ

室内は前後長が17mm拡大

「昨今の自動車市場で人気あるクルマといえば、セダンとSUVです。そこで2ドアクーペを売るには努力をしなくてはなりません。アウディにとってクーペは重要なので、私たちは大いに努力しています」。そう語るのは、製品の広報を担当するクリストフ・ルングビツ氏だ。「そこでデザイナーはこのクーペを女性を扱うような気持ちで扱っています」。

最後は冗談まじりだったが、大事に磨かれて開発されたような新型A5クーペおよびS5クーペ。実際によく出来た珠玉のようなモデルである。ポルトの陽光の下できらきらと輝いている姿は魅力的だった。

080507_eac_spec
Audi A5 2.0 TFSI quattro|アウディ A5 2.0TFSI クワトロ
ボディサイズ|全長 4,673 × 全幅 1,846 × 全高1,371 mm
ホイールベース|2,764 mm
トレッド前/後|1,587 / 1,568 mm
車両重量|1,500 kg
エンジン|1,984 cc 直列4気筒TFSI
ボア×ストローク|82.5 × 92.8 mm
圧縮比|9.6
最高出力|185 kW(252 ps)/5,000-6,000 rpm
最大トルク|370 Nm/1,600-4,500 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(Sトロニック)
駆動方式|4WD
ブレーキ 前|ベンチレーテッド ディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッド ディスク
サスペンション 前|5リンク式
サスペンション 後|5リンク式
タイヤ 前/後|225/50R17
最高速度|250 km/h
0-100km/h加速|5.8 秒
燃費(NEDC)|5.9-6.3 ℓ/100km(およそ16.9-15.9 km/ℓ)
CO2排出量|144 g/km
トランク容量|465 リットル

Audi S5|アウディ S5
ボディサイズ|全長 4,692 × 全幅 1,846 × 全高1,368 mm
ホイールベース|2,765 mm
トレッド前/後|1,587 / 1,568 mm
車両重量|1,615 kg
エンジン|2,995 cc V型6気筒TFSI
ボア×ストローク|84.5 × 89.0 mm
圧縮比|11.2
最高出力|260 kW(354 ps)/5,400-6,400 rpm
最大トルク|500 Nm/1,370-4,500 rpm
トランスミッション|8段AT(ティプトロニック)
駆動方式|4WD
ブレーキ 前|ベンチレーテッド ディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッド ディスク
サスペンション 前|5リンク式
サスペンション 後|5リンク式
タイヤ 前/後|245/40R18
最高速度|250 km/h
0-100km/h加速|4.7 秒
燃費(NEDC)|7.3-7.4 ℓ/100km(およそ13.7-13.5 km/ℓ)
CO2排出量|170 g/km
トランク容量|465 リットル

           
Photo Gallery