美食大陸オーストラリア、美食とワインをめぐる旅へ|ビクトリア州 ハイ・カントリー|特集
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2015年11月2日

美食大陸オーストラリア、美食とワインをめぐる旅へ|ビクトリア州 ハイ・カントリー|特集

特集|美食大陸オーストラリア、美食とワインをめぐる旅へ

Spin Off ビクトリア州 ハイ・カントリー

美食の街メルボルン。オーストラリアには以前、紹介したシドニーというもうひとつのグルメシティがあるが、はたしてどうちがうのだろうか?

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Text & Photographs by TERADA NaokoSpecial thanks to Tourism Australia, Tourism Victoria, Cathay Pacific.

メルボルンVSシドニー、美食シティはどう、ちがうのか?

かつてシドニーで暮らし、ジャーナリストとして長年、両都市を訪問してきた経験から言えるのは、メルボルンのほうが地産地消を意識し、より地元密着型であるということだ。それには理由がある。いまでこそ、シドニーはシーフードから肉、乳製品、フルーツなどすばらしい食材がそろうが、地理的には決して農産物を育てるのに適した場所ではなかった。

土壌は石灰岩の岩盤におおわれ、背後にはユーカリに囲まれた標高2000メートルの世界遺産、ブルーマウンテンズ山脈がそびえ立つ。その苦難の歴史は18世紀、英国からシドニーに入植がおこなわれたときまでさかのぼる。探検家たちは苦労の末にブルーマウンテンズの山超えルートを開拓。そして、ようやく西側に広がる豊かな牧草地と巡り合うことになるのだ。ちなみにそんな探検家たちへのリスペクトは、ブラックスランド、ローソン、ウェントワースといったブルーマウンテンズの町や滝の名前として残されている。

ひるがえって、メルボルンのあるビクトリア州は、周辺に豊かな自然が広がる土地。さらに19世紀には、近郊のバララットで金が見つかり、一躍、ゴールドラッシュ時代を迎える。結果、さまざまな民族が入植し、メルボルンだけでなく周辺にも町や村が生まれ、食糧供給ニーズによって、農業も飛躍的に発展した。また、中国、ドイツ、イタリアなど、世界各地からやってきた入植者のおりなす多様性が、食にも影響するのは必至。そうした歴史的背景が、メルボルンやビクトリア州の食事情に色濃く反映されている。

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訪れたのは南半球の冬にあたる6月。うしろにはブドウ畑が広がる

実際、メルボルンの有名レストランのシェフたちは、ビクトリア州産の食材を使うことに積極的だ。生産者との距離が近いというのも大きいだろう。まさに“ファーム・トゥ・テーブル(農園からテーブルへ)”を実践するのが、メルボルンのダイニングシーンだといえる。

最新&最強のグルメエリア、ハイ・カントリー

そのビクトリア州の美食トレンドは、ズバリ、カントリーサイドにあると断言したい。もともとビクトリア州は、ヤラバレーに代表されるプレミアムワインの産地として知られ、オーストラリアのなかでもワインツーリズムが盛んな場所のひとつ。テイスティングルームや、地元の食材を使った料理を提供するレストランを備えたワイナリーも多く、ワインホッピングを目的にした愛好家や、週末に滞在するレジャー客のための秀逸な宿もすくなくない。

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ビクトリア州のワインツーリズムを体感するべく、今回はハイ・カントリーでもっとも知られているワイン産地のひとつ、キングバレーを訪れた

それにくわえて、メルボルンに集中していたガストロノミー系レストランが徐々に進出しつつあり、チョコレートファクトリーやクラフトチーズショップといった専門店も急増。エッジの効いた若手による、あたらしいワイナリーなども登場している。

なかでも高品質なグルメスポットと化しているのが、ハイ・カントリーと呼ばれるエリア。うつくしい山岳地帯が広がる州北東部を指し、「オーストラリアン・アルプス」と称されるオーストラリアきってのスキーリゾート地でもある。ふもとにあるブライト、ビーチワースをはじめ、点在するカントリーサイドの町には、魅力的なグルメスポットがある。

Page02. ハイ・カントリーのおすすめグルメスポット

特集|美食大陸オーストラリア、美食とワインをめぐる旅へ

Spin Off ビクトリア州 ハイ・カントリー

ハイ・カントリーのおすすめグルメスポット

Provenance(プロバンス)

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脂ののったカモ胸肉はレアな火入れ。うえには甘酢のズッキーニ

“予約の取れないレストラン”としてにわかに注目を浴びるのは、ビーチワースにあるProvenance。「The Age Good Food Guide」で2シェフズハットを獲得。2013年には、オーナーシェフのマイケル・ライアン氏が同ガイドブックの「シェフ・オブ・ザ・イヤー」も受賞し、一気に評価を高めたガストロノミックな一軒である。

1856年に建てられた旧銀行のクラシックな洋館は、奥にエレガントな宿泊施設を併設、オーベルジュとして運営している。ライアン氏は訪日回数も多く、日本の食文化や食材に精通。シェフおまかせのデギュスタシオンメニューには、ワサビやショウガ、ゆば、ぬか漬けといった日本の味が随所に。そこへワラビーの肉など、オーストラリアらしい食材や地元の厳選したアイテムをくわえ、独自のツイストでメニューを仕上げている。合わせるドリンクにも日本酒をセレクトするなど、モダンジャパニーズ・オーストラリアンともいうべき個性が感じられる。

Provenance
http://www.theprovenance.com.au

Simones(サイモンズ)

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地元では知られる有名店。多くのリピーターでにぎわう

いっぽう、ブライトにあるSimonesは、1986年にオープンした老舗のレストラン。オーナーのサイモン夫妻は、故郷イタリアのカントリーサイドを彷彿とさせるブライトに惚れ込んで店を開業。夫人のパトリツィアが幼少期をすごした、ペルージャの伝統的な料理をつくり、愛されてきた。現在は息子でシェフのアンソニーが中心となって店を運営。より斬新でコンテンポラリーなモダンイタリアンに変化しつつあり、俄然おもしろみが増している。

Simones
http://www.simonesbright.com.au

Milawa Cheese Company(ミラワ・チーズ・カンパニー)

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小型のパック詰めチーズも多いので、土産にすることも

ハイ・カントリーには、新旧とりまぜて数多くのグルメスポットが点在する。良質な食材を育む豊かな環境ということもあるが、なによりも四季折々のうつくしい自然風景に囲まれたこの地に魅せられて、ものづくりをはじめたひとが多いというのも理由のひとつだろう。

小さな町、ミラワにあるMilawa Cheese Companyもそのひとつだ。

1988年、メルボルンでふたりの子どもたちと暮らしていた元教師のブラウン夫妻は、オークションで小さなバター工場跡を購入。そこにチーズ工場をつくった。自分たちが幼児期をすごした環境に近いものを、子どもたちにもあたえてあげたかったからだ。

もちろん、チーズづくりへの情熱もあった。ハイ・カントリーの良質な牛、ヤギ、ヒツジのミルクを使ったオールハンドメイドのチーズは、風味豊かで、いまでは地元客や観光客が訪れる人気の店となっている。チェダー、カマンベール、ブリー、ブルーチーズなど種類も豊富。お勧めはキング・リバー・ゴールド。ウォッシュド・リンドスタイルでもっとも人気のある商品だ。リッチなフレーバーと微かなスモーキーさは、ワインはもちろん、ウィスキーにもよく合う。店内には直売店のほか、自慢のチーズを使った焼きたてのピザが味わえる軽食コーナーも。

Milawa Cheese Company
http://www.milawacheese.com.au

Beechworth Honey(ビーチワース・ハニー)

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100%オーストラリア産のハチミツ。ユーカリなど原生種は、とくに強烈な個性がある

19世紀の開拓時代の面影を残す町、ビーチワース。そのメインストリートにあるのがBeechworth Honey。1880年代、ゴールドラッシュに沸くビーチワースで、鉱夫として働いていたベンジャミン・ロビンソンが、金鉱掘りの過酷な生活に区切りをつけ、養蜂業へとシフトしたのがはじまり。4代目が引き継いだいまでも、ファミリービジネスで経営をつづけている。

店内に足を踏み入れると、ハチミツの甘い香りに包まれる。テイスティングコーナーにずらっと並んだハチミツを、楽しそうに味わう人たちの姿が微笑ましい。バンクシア、レッドガム、アイアンバークといったオーストラリア固有種の花から採ったハチミツは、香りも味も個性が強く、ここでしか味わえない特別なもの。また、日本では健康食品として人気のあるポーレン(花粉)も、安く手に入るのでお勧めだ。

Beechworth Honey
http://www.beechworthhoney.com.au/index.html

Bright Chocolate(ブライト・チョコレート)

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毎週金曜の14時から、工場見学とテイスティングのツアーが開催されている

アルチザン的なチョコレートファクトリーも、ここ最近のトレンドのひとつ。ブライトに登場したのはBright Chocolate。厳選したカカオを使い、オールハンドメイドでつくりあげるクラフトチョコレートだ。メインストリート脇の路地にあるエントランスを開けると、手前に直売店、その奥にファクトリーがあるだけ。

マダガスカル、エクアドル、トリニダード産など、世界各地のカカオを使用したチョコレートは、カカオそのものの風味を活かすため、絶妙なバランス配合で仕上げられた個性あるフレーバーが特徴。どれもテイスティングができるので、じっくりと好みの味わいのチョコレートを選んでみたい。

Bright Chocolate
http://www.brightchocolate.com.au

Page03. 次世代のワイナリーが、あたらしいワイン&フードのトレンドをつくる

特集|美食大陸オーストラリア、美食とワインをめぐる旅へ

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次世代のワイナリーが、あたらしいワイン&フードのトレンドをつくる

Dal Zotto Wines(ダル・ゾットー・ワインズ)

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ファンキーなラベルのプロセッコ。ほかにもスティルワインもあるが、まずはこれを

ビクトリア州を代表する美食といえばやはりワイン。そのワインにもあたらしい潮流が生まれつつある。たとえば、ハイ・カントリーでもっとも知られているワイン産地のひとつ、キングバレー。このあたりは昔からイタリア系開拓者たちが多く、現在もピノグリ、サンジョヴェーゼといったイタリアンタッチのワインをつくるワイナリーが点在するが、最近は次世代後継者へと受け継がれることで、従来の伝統的なワイン製法からイノベーティブなアプローチへと変えているところが増えている。

それはワインだけでなく、ワイン&フードを意識した設備・サービス。ライフスタイルとしての美食が浸透してきていることのあらわれであろう。

Dal Zotto Winesは1987年に初代オーナーであるオットー・ダル・ゾットー氏が立ち上げたワイナリー。現在は息子であるマイケル氏とクリスチャン氏が、ワインメーカー&ブランドマネージャーとして引き継ぎ、トラットリアを兼ねたワイナリーとして営業している。ここの特徴はオーストラリアではじめて、プロセッコ種によるスパークリングワインを生み出したこと。オットー氏の故郷ヴェネト州へのオマージュとして長年温めてきた夢を実現。2代目によるファンキーなボトリングと軽やかな泡の味わいはシーフードにもよく合い、国内にも確実に定着しつつあるようだ。ワイナリー&トラットリアの窓の外には、広大なブドウ畑と古いユーカリの巨木があり、夏にはテラスでボトルを開けながらこの雄大な風景を堪能するのが楽しい。

Dal Zotto Wines
http://www.dalzotto.com.au

Pizzini(ピッツィーニ)

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クッキングレッスンは本格的なキッチンスタジオで。定員は4~10名

キングバレーのもうひとつのワイナリーがPizzini。オーナーのアルフレッドとカトリーナ・ピッツィーニ夫妻もイタリア系。1978年にこの地でブドウの栽培をはじめ、1994年に最初のワインをリリース。ピノグリージョ、アルネイス、フリウラーノ、ヴェルディッキオ、ヴェルドゥッツォといったイタリア種を主体に、バラエティあるワインを生産している。

そして、ここではカトリーナ夫人による本格的なイタリア料理のクッキングレッスンが受けられる。ワインセラーの横に設けられたキッチンスタジオはまさにプロ仕様。クラスはパスタ、ドルチェ、リゾット、ペイストリーなどさまざまだが、すべてここのワインにあうように考案されている。筆者が体験したのはニョッキとアップルスチュードル。調理後はテーブルを囲み、自分たちがつくったニョッキとともにワインを堪能。じつに楽しい体験となった。

Pizzini
http://www.pizzini.com.au/pizzini/

Feathertop(フェザートップ)

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石づくりの建物はオーストラリアのワイナリーとしては異色。廃材やアジアから移築したオーナメントなどが随所に

このほか、個性的な魅力を持つのが日本未入荷のFeathertop。25年の歴史を持つ中堅ワイナリーだが、ハイ・カントリーの冷涼な気候を活かした繊細なワインは秀逸。「James Halliday Australian Wine Companion」の2014と2015で、5スターワイナリーに選出された実力派だ。

また、ここはレストランとラグジュアリーなファームステイホームを併設し、滞在することも可能。4人まで宿泊できる「Mt Buffalo View Apartment」は、広々としたキッチン&ダイニングを備えた2ベッドルーム・アパートメント。「The Peggy Adelaide Suite」は2名用のスイートルーム。いずれもアジアンアンティークが絶妙にあしらわれ、アーティスティックな空間になっている。

Feathertop
http://www.boynton.com.au

Brown Brothers(ブラウン・ブラザーズ)

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ワインセラーにはコレクションもののビンテージが。126年の歴史を感じさせる

また、オーストラリアワイン好きならば、ぜひ訪れてみたいのがBrown Brothersだ。オーストラリアを代表するワイナリーで、ハイ・カウントリーへのゲートウェイ的存在、ミラワに位置する。1889年、ジョン・フランシス・ブラウンにより誕生した歴史あるワイナリーで、リースリングの貴腐ワインをはじめてオーストラリアでつくったことでも有名。伝統にこだわらず、常に革新的なワインづくりを目指し、現代のニーズにあった製品をいまも生み出しつづけている。

それを支えるのが「Kindergarten」と名づけられたミニワイナリーだ。ここでは実験的な小ロットでの醸造がおこなわれ、高品質なワインができてはじめて、生産ベースで醸造を開始するという。ワインセラーに隣接したレストランでは、ヘッドシェフ、ダグラス・エルダー氏によるローカルな食材を活かしたコンフォートフードを提供。スパークリングから白、赤ワイン、さらにデザートワインと、フルコースの料理にあうワインがそろうのも老舗ワイナリーの実力だといえる。

Brown Brothers
http://www.brownbrothers.com.au

ハイ・カントリー滞在は高級B&Bからセルフアパートメントまで

Ovens Valley Motor Inn(オーブンズ・バリー・モーターイン)

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クイーンベッドルーム。奥にキチネットがある

ハイ・カントリーまでは、メルボルンからクルマでおよそ4時間。日帰りで行くことも可能だが、フード&ワインを満喫するにはやはり1泊はしたい。ブライトは小さなモーテルやB&Bが主流で、そのなかで人気があるのはOvens Valley Motor Inn。クルマを目の前に停めることができるモーターインで、改装が施された24の客室は、シンプルながら快適。小さなプールやテニスコートなども備えている。

Ovens Valley Motor Inn
http://www.ovensvalleymotorinn.com.au

Freeman on Ford(フリーマン・オン・フォード)

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エレガントな朝食ルーム。朝食メニューもボリュームのあるカントリーブレックファスト

ビーチワースで評判なのはFreeman on Ford。トリップアドバイザーのトラベラーズチョイス2015で「トップ・オーストラリアB&B」に選ばれたラグジュアリーな宿だ。ビクトリア様式のエレガントなスイートルームを含め、ゲストルームや館内にはアンティークな調度品が配されて、19世紀当時をおもわせる。アフタヌーンティーなどゲストのためのサービスが整っているのも特筆すべき利点。メインストリートに位置するので散策やショッピング、ダイニングにも最適だ。

Freeman on Ford
http://www.beechworthluxurybedandbreakfast.com.au

なお、ハイ・カントリーは冬場、スキーリゾートエリアとなりシーズン中はスキーヤーでにぎわう。宿泊も込み合うので早めに予約をしたほうがいい。今回のようにフード&ワインを楽しむための訪問なら、冬以外の季節がお勧めだ。さわやかな夏や紅葉も楽しめる秋、おだやかな春など四季を感じさせ、旅心をかきたてる。

<取材協力>
オーストラリア政府観光局http://www.australia.com
ビクトリア州政府観光局 http://jp.visitmelbourne.com

           
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