[短期連載4] 建築と芸術とエンターテインメントと美食の都、シカゴへ──エンターテインメント編|TRAVEL

© Lyric Opera of Chicago

LOUNGE / TRAVEL
2019年11月6日

[短期連載4] 建築と芸術とエンターテインメントと美食の都、シカゴへ──エンターテインメント編|TRAVEL

建築と芸術とエンターテインメントと美食の都、シカゴへ──エンターテインメント編

オペラからジャズまで、シカゴのエンターテインメントシーンを紹介

ニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ北米第3の都市、シカゴ。摩天楼発祥の地であるここは、どことなく街の雰囲気がニューヨークに似ている。人口や面積がニューヨークの数分の一に過ぎないコンパクトなこの街は、アートや建築、エンターテインメントや美食など、ニューヨークに引けをとらない魅力的なコンテンツがギュッと凝縮されているのだ。そんなシカゴの魅力を、テーマ別に紹介していく短期連載。第4回は、シカゴのオペラからジャズライブまでエンターテインメントシーンを巡る。

Text by YAMAGUCHI Koichi

アメリカにおけるオペラ文化の拠点の一つ──リリック・オペラ・オブ・シカゴ

シカゴのエンターテインメントシーンを語るうえで欠かせないのがオペラだが、シカゴでオペラといえば、「リリック・オペラ・オブ・シカゴ」である。何となれば、メトロポリタン・オペラ、サンフランシスコ・オペラとともに、アメリカ3大オペラハウスの一つに数えられ、世界的にも高い評価を得てきたからだ。
創設された1954年には、20世紀最高のソプラノ歌手と称えられたマリア・カラスが同オペラでアメリカでの初舞台を踏むなど、常に国際的な歌手や指揮者、監督を招待し、最高のステージで人々を魅了してきた。
リリック・オペラ・オブ・シカゴの拠点となるリリック・オペラ・ハウス © Choose Chicago
「トゥーラン・ドット」や「リゴレット」など定番的なオペラのレパートリーに加え、アメリカの現代音楽作曲家、ジョン・ハービンソンの「グレード・ギャッツビー」をはじめ現代の作品も紹介するなど、幅広いレパートリーを提供してきたのもリリック・オペラの特徴である。
アールデコ調の内装が圧巻である © Lyric Opera of Chicago
その拠点となるのは、アールデコ調の絢爛たる内装がすばらしく、北米で最も美しいオペラハウスの一つとされる「リリック・オペラ・ハウス」だ。アメリカ人実業家、サミュエル・インサルにより1929年に建てられた歴史的建造物をリノベーションした同シアター。座席数は3563席を誇り、ニューヨークのメトロポリタンオペラハウスに次いで北米で2番目に大きいオペラ劇場となっている。
リリック・オペラ・オブ・シカゴ
20 N. ワッカードライブ シカゴ イリノイ州60606
https://www.lyricopera.org/

年間22万5000人が訪れるシカゴ屈指の人気シアター──シカゴ・シェイクスピア・シアター

ミシガン湖岸の埋め立て地に、観覧車や映画館、そしてミュージアムやフードコートなどの施設が立ち並ぶレクリエーションエリア、ネイビーピア。元来はミシガン湖の輸送船のためのドッグや倉庫が建てられていた場所であり、その名の通り第二次世界大戦時には海軍の埠頭として利用されたが、いまでは年間900万人が訪れる、シカゴの人気スポットだという。いわば、東京のお台場や横浜のみなとみらいといったところだ。
1916年にシカゴ都市計画に則って開発され、1990年代に現在の姿に再開発されたネイビーピア ©Navy Pier
そのネイビーピアの一角にある「シカゴ・シェイクスピア・シアター」は、演劇やミュージカルなど、ワールドプレミアを含む年間20ほどのプログラムについて650回もの公演が行われ、22万5000人の観客が訪れるという。シカゴ屈指の人気シアターだ。
中世イギリス・ロンドンに存在した、シェークスピイアと縁のあるグローブ座にインスパイアされたという500席のコンパクトなシアタースペースは、いずれの席からもステージがとても近く、アクトの熱演を肌で感じることができる。非常にぜいたくな劇場なのだ。
「シカゴ・シェイクスピア・シアター」
今回訪れた際には、ニューヨーク・ブロードウェイやロンドンでも人気を博した「SIX」というミュージカルを観劇できた。英国国王ヘンリー8世の6人の妻たちが、バンドを組み誰が一番か、ロックのサウンドに合わせてその思いを歌い合うという奇想天外なストーリーだが、ゴールドの装飾が施されたブラックの奇抜なモスチュームに身を包んだ6人のアクトの歌唱力や表現力が圧倒的で、70分ほどのパフォーマンスがあっという間に終わった印象だった。同シアターでは、常に魅力あるプログラムが用意されているから、シカゴを訪れた際にはぜひチェックしてほしい。
シカゴ・シェイクスピア・シアター
800 E.グランド アベニュー オン ネイビーピア シカゴ イリノイ州60611
https://www.chicagoshakes.com/

スタイリッシュな空間でクラシックなジャズライブを堪能──ウィンターズ・ジャズ・クラブ

音楽の街としても名高いシカゴ。特にブルースとジャズは、それぞれシカゴ・ブルース、シカゴ・ジャズとして独自の発展をとげてきた。例えば前者は、19世紀にミシシッピ川周辺でアフリカ系アメリカ人の労働歌として誕生したものが、シカゴへ北上しバンド形式に発展したもの。
また後者いついては、ジャズが生まれたニューオリンズで、第一次世界大戦後に歓楽街が封鎖されたのを機に、ミュージシャンたちが職を求めてシカゴに移住し、ブルースに近い独自のジャズを生み出したものだという。シカゴでは、そうした音楽を楽しめるライフハウスやクラブが軒を連ねている。
そんな中から、今回はシカゴのダウンタウンの中心部にある「ウィンターズ・ジャズ・クラブ」に訪れた。クラシックなストレート・アヘッド・ジャズを中心に、スイングやニューオリンズなどさまざまなスタイルのジャズのライブが週6日開催されている。ジャズクラブというとどこか敷居が高い気がするが、ツーリストでも気兼ねなく足を運べるスタイリッシュな空間やサービスも魅力である。
シカゴ・ジャズ・フェスティバルのメイン会場となる「ジェイ・プリツカー・パビリオン」。4000席のスタンドの後ろには7000人を収容する芝生広場が広がる
世界最大のジャズフェスティバル「シカゴ・ジャズ・フェスティバル」が毎年開催されるのも、音楽の街シカゴならではだ(労働者の日の前の週末)。メインステージとなるのは、ミレミアムパークにある「ジェイ・プリツカー・パビリオン」。ロサンゼルスのウォルト・デズニー・コンサートホールや、スペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館を手掛けたことで知られるフランク・オーウェン・ゲーリーの手になる、独創的なデザインの野外音楽堂だ。音楽や建築やアートが一体となった、まさにシカゴならではの音楽フェスティバルである。
ウィンターズ・ジャズ・クラブ
465 N マックラルクコート(プロムナード)イリノイ州 シカゴ60611
https://www.wintersjazzclub.com/
ジェイ・プリツカー・パビリオン
201 E ランドルフストリート シカゴ イリノイ州60602
https://millenniumparkfoundation.org/art-architecture/pritzker-pavilion/

次々に繰り出される華麗なテクニックに、ただただ驚き笑う──シカゴ・マジック・ラウンジ

あまり知られてないかもしれないが、シカゴでは、20世紀の初頭よりバーやナイトクラブでマジック(手品)を楽しむ文化が息づいてきたのだそうだ。多くののマジックバーがオープンし、同地のナイトライフにとって欠かせない存在だったのだ。しかし、年月を経るごとに徐々に減少し、1999年に最後の1軒が店を閉じたことで、シカゴのマジック文化の灯が消えてしまったのだという。その灯火を再びともすべく2015年にオープンしたのが、「シカゴ・マジック・ラウンジ」だ。
マジシャンのジョン・スタルク氏が観客の一人をステージに上げてエンターテイメント性に富むマジックを披露 ©Chicago Magic Lounge
バーエリアではカウンター越しにクロースアップ・マジックを楽しめる ©Chicago Magic Lounge
シカゴの中心地から車で20分ほどのアンダーソンビル地区にある同店に足を運ぶと、最初の仕掛けが待ち受けていた。その住所には、どう見てもコインランドリーにしか見えない店舗があり、隠し扉でラウンジ内部に入れる仕組みになっていたのだ。
ステージでは、マジシャンたちが入れ替わり立ち替わりで一流のマジックを披露しており、観客席は驚きと笑いで満ちている。一方、隣接するバースペースでは、バーテンダーがより近い距離でマジックを見せるクロースアップ・マジックを行い、観客たちはカクテルやウィスキーを片手に一流の技に見入っている。難しいことは抜きに、次々に繰り出される華麗なテクニックに、ただただ驚き、笑う。そんなリラックスした時間を楽しんだのだった。
シカゴ・マジック・ラウンジ
5050 ノースクラークストリート シカゴ イリノイ州60640
https://www.chicagomagiclounge.com/
問い合わせ先

シカゴ市観光局
https://www.choosechicago.com/

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