青森らしい一品「フォアグラのポワレと林檎のロースト シードルソース」
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2019年11月18日
「知る」は、おいしい! 星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル|TRAVEL
TRAVEL|星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル
このひと皿と出合うために、星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルへ(1)
「先月、オープンしたあのレストラン、やっぱり良かったよ」「あの店は期待ほどではなかった」などなど、食いしん坊のもとには連日(ちょっと盛りました)、食にまつわるさまざまな情報が寄せられてきます。そんななか訪れた誰もが、「マジ最高っ!!」と絶賛していたのが、2019年7月、青森県十和田市の「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」にグランドオープンした、宿泊客限定のフレンチレストラン「Sonore(ソノール)」でした。そんなわけで伺う前から期待は天にも届く勢いでした。
Photographs by OHTAKI Kaku|Text by HASEGAWA Aya|Edit by TSUCHIDA Takashi
新幹線に乗ってでも、飛行機を使ってでも、わざわざ食べに行くべきフレンチ
約1万5千年前に、十和田湖の決壊により形づくられた奥入瀬渓流。約14kmにわたって、十和田八幡平国立公園内をたゆむことなく流れ続けています。
「奥入瀬渓流沿いに建つ唯一のリゾートホテルである当ホテルのコンセプトは、渓流スローライフです。そのコンセプトのもと、渓流を望む露天風呂や客室、奥入瀬の自然を生かしたアクティビティなどをご提案してきましたが、ここ最近、リゾートを点ではなくエリア全体で見て、ここで過ごす時間の価値をより明確にしたいと考えるようになりました」
そう語るのは、総支配人の山下麗奈さん。「Sonore」をオープンさせたのもその一環といいます。「時間を軸に料理を考えたとき、一皿一皿を楽しんでいただくフレンチがしっくりくるのではないかと思ったんです」。
「Sonore」はそんな風にして誕生しました。こちらでいただけるのは、季節のコース料理一種のみ。
わかりやすいです。
潔いです。
潔いです。
というか、これ料理に対する自信の表れですよね。早速、その料理について語り倒したいところですが、まずは圧巻の演出についてご紹介しましょう。
「Sonore」のコースは、奥入瀬渓流を望むテラス席でのアペロ(食前酒とおつまみを楽しむこと)からスタートします(冬季は室内での提供)。その名も「渓流アペロ」。いきなり「渓流スローライフ」炸裂です。自然のなかでいただくお酒、サイコーですよね。春先は雪解け水で渓流の音がうるさいくらいだそうですが、それもまた良し。自然が織りなす素晴らしき演出です。飲み進めていくうちに日が傾き、やがて夜の帳りに包まれていくのが最高にドラマチックです。書いておいてなんですが(でも細かな点には触れずにおきますね。面倒くさいからじゃないですよ、あえて、です)、このイケてる演出、知らずに訪れたらさらに感動が増すはず。恋人や家族など大切な人を誘って、自分の手柄のように「えへん」としちゃってくださいませ。
アペロのあとのコース料理はメインダイニングで。スタッフが絶妙のタイミングで声をかけてくれます。料理をいただくダイニングエリアの内装は、奥入瀬渓流の自然をイメージし、岩や木をモチーフにしたのだとか。また奥の壁面は八甲田山の噴火から形成された岩壁をイメージしてデザインされているそうです。奥入瀬の自然と対話しているような不思議な感覚が味わえます。
アペリティフだけでだいぶ文字数を使い果たしてしまいました。そろそろお料理に話を移しましょう。「Sonore」で料理長を務めるのは斉藤春樹さん。東京で修業後、フランスとスペインの星付きレストランで勤務。帰国後は東京でもシェフを務めます。2012年に星野リゾートに入社し、星のや竹富島などでレストラン運営に携わってきました。「Sonore」のコンセプトは、“伝統に敬意を払いながら現代的で洗練されたフランス料理”。オーセンティックなフランス料理で知られる都内の三ツ星レストラン出身の斉藤さんの実力が存分に発揮される舞台が整いました。
「しっかりとソースを作るクラシックを守りつつ、青森の食材をうまく使いたいと考えています」と斉藤さん。ポワレやムニエルなど伝統的なフランス料理の調理法を用いながら、りんごや鮑、にんにく、きのこなど、青森県ならではの豊かな食材をいかした「Sonore」でしか味わえないひと皿を提案します。
今回は、夏のコースの青森らしい一品と、秋冬のコースをいただきました。夏のコースの前菜は「フォアグラのポワレと林檎のロースト シードルソース」。こちら「Sonore」の哲学がわかりやすいアイテムでもあります。
「青森といえばりんごでしょう」(斉藤さん)と、フランス料理のスター食材であるフォアグラのポワレが、なんとりんごにのっちゃってます。青森産のりんごはクルミ、松の実、レーズンなどと一緒にローストしたもの。さながら大人の焼きリンゴといったところでしょうか。フォアグラはふたつあり、片方のフォアグラの上には斉藤さんいわく「王道の組み合わせ」のシナモンのチュイールが。そしてもう片方には、南部せんべいをパウダー状にして焼き上げたものがオン。大切なことなので繰り返しますが南部せんべいです。私も最初、耳を疑いましたが間違いありません! かりっ、さくっとしたテクスチャーが軽快です。ソースは、シードルとカルヴァドス、鴨からとった出汁をあわせたもの。これで、美味しくないわけがありません。
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このひと皿と出合うために、星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルへ(2)
魚料理として登場したのは、「平目のヴァプール 帆立貝のムースと雲丹をしのばせて」でした。「帆立のムースを蒸した平目で巻き、芯の部分に雲丹を入れました」(斉藤さん)と、主役級の食材の揃い踏みですが、絶妙なケミストリーを発揮しています。付け合わせの青森産のきのこもなかなかの存在感でした。秋のメニューはどっしりとしたものが多いので、「ソースにはコンソメを使っています。ここでさっぱりと、そして滋味深い味わいの魚料理でメインに備えていただければ」と斉藤さん。複雑で、でもクリアな味のスープが染み入ります。秋ですなあ。
お酒がイケる口ならぜひワインのペアリングを。約150種類2000本の品揃えの中からシェフソムリエの鈴木良隆さんがセレクトした、ワインペアリングが楽しめるのも、「Sonore」の強みです。軽井沢の「ブレストンコート ユカワタン」から「Sonore」に移った鈴木さんのワインセレクション、攻めていますよ! ちなみにこちらの魚料理はダブルペアリングを採用。「ソースはコンソメ、付け合せにはハーブを使っています。どちらに寄るかでワインの選び方も変わってきます。なので、2つのワインを合わせることにしました」。ね、楽しそうでしょ。また、秋のコースのペアリングは赤ワインからスタートするんですよ。「最初にお出しするのは、マグロと豚の血を使ったブータンノワール。鉄分が多い食材でどう考えても赤なんです」とまずは軽めの赤からスタート。その後、熟成感のある白に移行していきます。
そうそう、「Sonore」ってどんな意味があると思います? 「Sonore」とはフランス語で「朗々と響かせて」という意味の音楽用語。渓流の音や、品格と斬新さを併せ持つ料理、銘醸ワインのハーモニーが朗々と響き渡る、という意味が込められているのだそうです。鈴木さんいわく、「『Sonore』のコースはオペラ仕立てなんです」。なるほど、食後は極上のオペラを堪能した後のような満足感が残りました。
デザートの「洋梨のタタンとコンポート ヘーゼルナッツのグラスとともに」はまさに第四楽章。通常はりんごを用いるタルトタタンを洋ナシで作り上げています。パイの上に洋梨のタタン、その上には、キャラメルのチュイール、出ました、南部せんべいを添えています。フランス料理に「青森」のアクセントを加えるという「Sonore」のフィロソフィーはデザートにも貫かれているのです。夏メニューにはなんと黒にんにくを用いていたそうですよ。焦がしバターやカシスのソース、カスタードクリームなど多層な味わいがまたいいハーモニーを奏でているんですよね。これ、食べたほうがいいですよ、絶対。
総支配人の山下さんに、「すごいレストラン作っちゃいましたね」と興奮気味に話したところ、こんな答えが返ってきました。
「おかげさまで開店以来、とても好評をいただいています。でも私たちは、このレストランを訪れるために奥入瀬に行くというくらいの存在となることを目指しています。まだそこまでには至っていません」
いえいえ、時間の問題かと。一度訪れたら多くの人が「Sonore」の演出、空間、そして、なによりその料理のファンになることでしょう。いえ、そういったものすべてを合わせたものが、「Sonore」という一大演目なのでしょう。
さて、渓流沿いのテラスでは、季節限定(2019年は終了。2020年は 5月1日(金)より提供開始)で、「渓流テラス朝食」も提供しているんですよ。スモークサーモンのオーブンサンドをはじめ、チキンタルティーヌ、ほうれん草とベーコンのキッシュなど、彩り鮮やかなりんごの箱をイメージした桜の木のオリジナルボックスに詰め込まれています。ブッフェスタイルで自由にいただけるドリンクにはシードルも用意されていました(にんまり)。奥入瀬が朝のきらきらとした光や澄み切った空気に包まれ、せせらぎや鳥の鳴き声など自然が奏でるBGMのなか、朝ごはんをいただく──、なんだか素敵な1日が始まりそうです。
滞在中、何人かのスタッフの方に奥入瀬でいちばん好きな季節や時間帯を聞きました。季節は人によりさまざまでしたが、時間帯はみな口を揃えて「朝」と話していたのが印象的でした。そんな奥入瀬の朝を満喫できるアクティビティをご紹介しましょう。宿泊者ならどなたでも参加できる「渓流モーニングカフェ(無料・要予約)」。なんと無料です。賑わい始める前の早朝の奥入瀬渓流を散策し、渓流を眺めながらコーヒーをいただくというもので、「「暁の集合時間にも関わらず、ほぼ毎日、50名の定員が満席になります」と山下さん。ホテルから約10分間、シャトルバスに乗って散策スタート地点へ。そこから渓流沿いを歩きます。朝の凛とした空気と渓流からほとばしるマイナスイオンに包まれ、息をするたびに心身が浄化されていく、そんな中でいただくコーヒーは格別です。
四季を通してさまざまなアクティビティを提案している「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」には、ほかにも気になるアクティビティがたくさん。たとえば、今夏に新登場した「目隠しさんぽ」。スタッフのエスコートのもと、アイマスクを付けて森を散策し、耳・手・匂いで奥入瀬を感じるというアクティビティです。「虫との和解ツアー」にも度肝を抜かれました。山下さんによれば「ユニークな体験ができるアクテビティはぞくぞく登場します」とのこと。今後も驚くべき企画が楽しみです。
こちら、「苔」推しのホテルでもあるんです。突然ですが、苔って何種類あるか知っていますか? じつは奥入瀬渓流は国内約1800種の内約300種が生息するそうです。そんなわけで、「苔さんぽ」なんてアクティビティも大人気です。実はこちらのホテル、すべての客室にはルーペが用意されているんです。そう、思う存分、苔を観察できるようにという配慮です。また、夜には、奥入瀬渓流の魅力をより多くの方に知ってもらうための「森の学校」(無料)を開校。日替わりで、リゾートのスタッフや奥入瀬に長けた専門家が、さまざまな視点から奥入瀬の魅力を語ります。
冬の目玉は、渓流沿いの露天風呂の壁に氷瀑(氷結した滝)を再現した「氷瀑(ひょうばく)の湯」。この氷瀑を作るために、約1か月の休館期間中、スタッフの気合いが高まります。そうです、温泉もお忘れなく。八甲田の猿倉温泉を源泉とする渓流露天風呂では、その名のとおり渓流を間近に湯浴みが楽しめるのが魅力。シャトルバスで行く混浴露天風呂・八重九重の湯(2019年は11月26日で営業終了。2020年は4月17日(金)より営業開始)は滝を間近に望める、野趣あふれる温泉です。混浴といっても湯浴み着が用意されているので、ご心配(してない?)なく。
「Sonore」料理長の斉藤さんは、奥入瀬に来て、青森の四季がはっきりしていることに驚いたそうです。「私たちは渓流スローライフの演出家です」、そんなふうに山下さんは話していました。皆さんが奏でる唯一無二の「オペラ」の次回公演、きっとまた“体験”しに来ます!
「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」には、岡本太郎氏作の2つの暖炉があります。そのうちのひとつ、東館のロビーにある『森の神話』は、1991 年に完成した高さ 8.5m、重さ 5tのブロンズ製の暖炉。奥入瀬渓流に生息する鳥やきのこ、森が共生している様子を表した作品です。
客室は全187室。ホテルのコンセプト「奥入瀬スローライフ」を体感できる、奥入瀬渓流を見下ろせる客室「渓流和室」。窓辺に置かれた大きなソファに身をゆだね、飽きるまで奥入瀬渓流を眺めていてはいかがでしょう? 流線形の壁紙など、随所に奥入瀬渓流を感じられる遊び心が見え隠れします。
星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル
住所| 青森県十和田市大字奥瀬字栃久保231
アクセス|JR八戸駅・新青森駅から車で約90分(無料送迎バスあり・要予約)
客室数|187 室(チェックイン15:00、チェックアウト12:00)
料金|1泊20,000円~(2名1室利用時1名あたり、税別、夕朝食付)
住所| 青森県十和田市大字奥瀬字栃久保231
アクセス|JR八戸駅・新青森駅から車で約90分(無料送迎バスあり・要予約)
客室数|187 室(チェックイン15:00、チェックアウト12:00)
料金|1泊20,000円~(2名1室利用時1名あたり、税別、夕朝食付)
※フレンチレストラン「Snonore」のメニュー、渓流テラス朝食、苔ランチプレートについては、時期により提供内容、食材の産地が異なる場合があります。
問い合わせ先
星野リゾート予約センター
電話|0570-073-022
URL|https://www.oirase-keiryuu.jp/